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94 私とコフィアとおじいちゃん

久しぶりの自称「おじいちゃん」の来訪です。

過去の話で若干名前が間違っていましたので修正しました。

まだあるかもしれませんが、もし見つけましたらご一報いただけるとありがたいです。

夜の「聖女祭り」を存分に楽しんだ日から数日後、私は中庭で「おひとり様ランチ」の時間を過ごしていた。

理由は簡単。シンディとセシリアが流行性感冒…つまりはインフルエンザにかかってしまったから。


(まあ、たまにはボッチ飯も悪くないよね…)


1人でのカフェランチも飽きてしまった。


(カフェは人が多いからね…。なんとなく長居しづらいし)


そこで今朝はちょっとだけ早起きをして「お弁当」を作ってみることにしたのだ。

発酵いらずのプチパンに肉団子入りのミネストローネ、それにリンゴとレーズンをたっぷりと入れたカスタードケーキを携えてベンチに腰を下ろすと、待ってましたとばかりに包みを開いた。


(はぁ、自分で言うのもなんだけど、なんておいしそう…)


ミネストローネが入った小ぶりのスープポットを開けるとホカホカと湯気が立ち上る。


(流石、黒灯熱石製のスープポット…。中身全然冷めてない)


ヘイデン商会から届いたコフィアのおかげでとてつもなく素晴らしい物を手にすることができた。

私はホクホク顔でスプーンを手に持った。






時計屋「クロノール」を訪れた日の夜、私は早速へイデンさんに手紙を書いた。

内容はただ一つ。



《コフィアが欲しい!!!》



すると翌日、荷馬車一台分のコフィアの豆がへイデンさん自らの手によって届けられた。

なんでこんなに早く?と思ったが、水をがぶ飲みする馬車馬と疲れ果てた従業員さんの様子を見ると割とすんなり状況が飲み込めた。


(なんか、悪い事しちゃったかも…)


そんなみんなの様子とは裏腹にヘイデンさんは至って元気そのもので、


「ステラ~~。久しぶりだなぁ。元気だったかぁ。おじいちゃんだよぅ~」


馬車から飛び降りると相変わらず甘々な顔で私の事をむぎゅっと抱きしめた。

うん、おじいちゃんではないけどね…。


「わざわざヘイデンさんが届けてくれなくてもよかったのに…。忙しいでしょ?」


ヘイデン商会の会長であり「希望の町」の町長でもあるヘイデンさんはこう見えても多忙を極める。こんな時間にこんな所まで足を延ばす時間はないはずだ。それなのに…、


「なんだよぅ。そんなつれない言い方するなよぅ…。おじいちゃん寂しい…」


泣きまねをする元気な老人ほど扱いの難しいものはない。

どうしたものかと考えていると、後ろからアレンが声をかけてきた。


「まず荷下ろしをしませんか?あそこに馬車を止めたままですと往来の邪魔になりますから」

「おぅおぅ、アレン!お前…少し見ないうちにずいぶん生意気な口を聞くようになったじゃねーか。俺とステラの再会を邪魔しようってのか?ああん?」


ヘイデンさんが凄む。基本、私とソフィアおばあちゃん以外には誰に対してもこんな塩対応だ。


「そんなつもりはありませんが…。それにしても…ずいぶん運んで来られましたね?コフィアはまだ希少品でしょう?大丈夫なんですか?」


アレンの指示で荷馬車からいくつもの樽が下ろされる。その数なんと大樽で6樽。さすがにこんなに要らないとも思ったが、まさかこれで私に商いでもしろって言うつもりなんだろうか…。


「そりゃ、お前…かわいいステラに頼まれたとあっちゃあ、しみったれた量じゃ面目立たねーだろ!俺はステラに『おじいちゃんすごいっ!!』って言ってもらいたいんだよ。そのためだったら俺はなんだってするね」


胸を張るヘイデンさん。もう勢いが止まらない。幼い頃はまだこんな感じではなかったと思うんだけど…。

その時お供についてきた従業員さんが私にこそッと耳打ちをした。


「実はこのコフィア、エルマーさんに持ち出しを禁止されてたんです。それを無理やり会長が持ち出そうとして大喧嘩になりまして…。エルマーさんの隙をついて無理やり運んできてしまいましたが帰ったらどんな騒動になるか…」


はぁ、と大きなため息をついてうなだれる。

なんか更に申し訳ないんだけど…。


「ごめんなさい。まさかこんな大事になるとは思わなくて…」

「おい!お前、何ステラに謝らせてんだぁ!」


それに気づいたヘイデンさんが従業員さんを怒鳴りつける。ひぃ、と首をすくめる従業員さん。

私はヘイデンさんを睨みつけると「()()()()()()!!」と声を張り上げた。

初めてのおじいちゃん呼びにヘイデンさんの動きが止まる。


「今回の件は無茶を言った私にも問題があったわ。でも、こんな量必要ないって事は考えなくても分かかるでしょ?まだ希少な商材をこんな簡単に持ち出して…。商会のみんなにも迷惑が掛かります。これからはこういうやり方は控えてください。今度こんなことがあったら…」


私はヘイデンさんのほっぺをむぎゅっと挟むと、


「もう二度と、おじいちゃんって呼んであげないから!」


その言葉にヘイデンさんがよろよろとよろめく。


「とにかく一樽は買い取ります。残りは持って帰ってきちんとエルマーさんに謝ってください」

「お前から金なんて取れねーよ!そんな事したら男…いや、『おじいちゃん』が廃るってもんだ!」

「買・い・取・り・ま・すから!!()()()()()()!!」

「…ううっ、わかったよ…そんなに怒るなよ、ステラ…」


渋々私の提案を受け入れて項垂れながら帰っていったヘイデンさんがちょっとかわいそうだったけど、はっきり言わないと調子に乗っちゃいそうだしね。

それに私もこんなに早く目的の物を手に入れる事ができたし…。


(とりあえず明日、時計屋のご主人にコフィアを届けてこよう。あと豆を引くためのミルとかドリッパーとか探してこなきゃ。この世界ではどうやって飲んでるんだろ?それも教えてもらおう」


ウキウキする私を横目に見つつ、アレンがため息をついた事に私は全く気がつかなかった。


次回更新は明日19時頃を予定しています。


明日はこの世界のスープポットについて解説させて頂きたいと思っています。

ちょっと予告と内容が変わってしまいましたが前菜だと思ってお楽しみください。


本日も最後まで読んでいただきありがとうございました。

明日もどうぞよろしくお願いします(^^♪

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