表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
87/188

85 私とマシュマロとぺったんこ

―――明け方、なんとなく肌寒さを感じた私は手近なぬくもりに身を寄せた。


(あったかい…それになんだかいい匂いがする…)


そのぬくもりは静かに私を引き寄せると体ごと包み込むように優しく抱きしめてくれた。

その安心感に私はまた、深い眠りに落ちていく…。






再び意識が覚醒したのは周囲が大分明るくなってからだった。

カーテンの隙間から差し込む朝日がちょっとだけ眩しい。起きることを拒否する瞼に同意するべく、私は手探りで掛布団を探った。


その指先に、何かフワフワとした柔らかいものが触れた。なんだろうと思いつつ一旦ひっこめた手をもう一度伸ばす。柔らかいだけでなくしっかりと弾力があって触ってるだけでなんだかとっても気持ちいい。


(なんだろうこれ…マシュマロみたい…。フワフワして柔らかくて気持ちいい…)


あまりの触り心地の良さに私は思わず両手でそれに触れてみた。触るだけでは物足りず、弾力を確かめるようにちょっとだけ力を入れて揉んでみる。知らないうちについ夢中になってもみもみしていると、おもむろに頭の上から声が聞こえた。


「ずいぶん積極的なのですね。ステラ嬢は」

「…っ!」


ふよふよと揺蕩っていた意識が一気に覚醒する。さっきまでやる気を一切見せなかった瞼が勢いよく持ち上がり、目の前にいるはずのない人物を無理やり認識させられた。


「…ク…っ、クローディア様…っ?!」


私の隣に横たわっていたのは寝間着姿のクローディア様だった。しかも片方の手は私の首の下にまわり、いわゆる腕枕の体勢で抱き合っている。そして彼女の両胸を揉みしだいている私の両手…。

私は慌てて起き上がると名残惜しそうにワキワキしている両手をホールドアップしてみせた。


「そんなに気持ちよかったかしら?」

「はい、とっても…じゃなくてっ!な、なんでクローディア様がここにいらっしゃるんですか?!」

「あら…、だってここは私の部屋ですもの。私がいておかしい理由はありませんわ」

「そ、そうですが…。なんで一緒のベッドに寝てるんですか…?」

「だってこのベッド、私のものですから」


クローディア様がとてもいい笑顔でそう答えた。


(間違ってはいないけど…っ。私はそういう答えが聞きたいんじゃない…っ!!)


「まあ、いいじゃない。私こういうのに憧れてたの。こういう女子会?みたいな事やったことなかったから…。一度やってみたかったのよね。なんだかとっても楽しいわ~」

「……」


心の底から嬉しそうに言われると私は二の句が継げなかった。どこに楽しめる要素があったのかいまいち共感できないけど、まあクローディア様が楽しんで頂けたなら何よりです…。

思わず黙るとクローディア様がニコッと微笑んだ。


う…っ、なんてかわいらしい笑顔なの…っ。


絹糸のようなブロンドの髪にターコイズ色の瞳…。肌は陶器のように滑らかで間近で見てもアンティークドールのようにしか見えない。思わず見とれているとクローディア様はうつ伏せになり両肘で体を支えながら私を上目遣いに見上げた。


「ステラ嬢って本当にかわいらしいわ。まるでアンティークドールみたい」


私が思っていた事とまんま同じ言葉が彼女の口から発せられる。それから彼女の左手が優しくくすぐるように私の頬に触れた。その手は首元を伝い肩に触れ、やがて私の胸の辺りでゆっくりと止まった…。


「ここも…お人形みたい…。もっと揉んでもらった方がいいわよ。アレンにでもお願いしたら?」


ペタペタと胸を触られ、その言葉に促されるまま私は自分の体に目をやる…。



「……っ!!ギャァァァ…ッ!!」



自分の姿を見て思わずベッドから転がり落ちた。


「どうしたっ!!ステラ!!!」


私の悲鳴とベッドから落ちた衝撃音におそらく部屋の外で待機していた(と思われる)アレンが飛び込んできた。

私は慌てて近くにあったクッションを彼に向かって投げつけた。


「バカ!!入ってこないで!!っていうかこっち見ないでっ!!」


アレンがそんな私の様子に驚いてこちらを見る。途端に彼は動きを止め石像のように固まった。凝視する顔は次第に赤く染まり、耳まで真っ赤になったところでようやく顔を背け、手で目元を覆った。


「ス、ステラ…ッ。お前なんでそんな恰好してるんだっ…」

「し…知らないっ!起きたらこれだったんだもんっ!!」


私が着ているのは真っ白なオーガンジーのネグリジェ、シースルー仕様だ。しかも下着はなぜか下しかつけていない。


(な、なんでこんなかっこ…っ!いつの間に…)


近くにあったストールを引き寄せ慌てて体に巻き付ける。そんな私を見てクローディア様が楽しそうに笑っている。


「ふふふっ、よく似合ってるでしょ?あーもう、ほんとかわいいっ!あんな血まみれのドレスのままじゃゆっくり眠れないと思って私が着替えさせてあげたの。もしよかったら差し上げるわ。いざという時に使ってちょうだい」


いざって…なに?!


私は体中真っ赤にしながら慌ててバスルームに駆け込んだ。





クローディア様付きの侍女が持ってきてくれたドレスに着替えバスルームを出ると、彼女とアレンが無言でお茶を嗜んでいた。


「あら、着替えて来ちゃったの?よく似合ってたのに…。残念だったわね、アレン」

「…そういう話を僕に振らないでください」


アレンの耳が赤い。私も恥ずかしさを懸命に隠しながら、促されるままソファに腰掛けた。差し出されたカップに口をつけると、甘いリンゴの香りが鼻腔をくすぐった。


「ふふ、気を悪くしないでね。あなたの反応があんまりにもかわいいから、ついいじわるしたくなっちゃった。ごめんなさいね」


クローディア様が肩をすくめて舌を出し、エヘッと微笑んだ。

何この笑顔っ…!くはっ…天使かっ!


「い、いえ私の方こそ…その、いろいろと失礼な事をしでかしまして…なんとお詫びして良いやら…」


寝ぼけてたとはいえ嫁入り前の天使のおっぱいを、なんの遠慮もなく思い切り揉みしだいてしまった…。穴って言うのは、いざという時のために前もって掘っておいて損はないなと、本気で心に誓った。




「…最後に…ステラとこんな風に話せてよかった」


唐突に、クローディア様がつぶやいた。いつの間にか敬称がとれている。


「…え?」


思わず聞き返すと、彼女はふふっと嬉しそうに笑った。


「私ね、今までこんな風にお話しできるお()()っていなかったの。だから今日はすごく楽しかった。こんなに笑ったのって子どもの頃以来よ。アレンには感謝しなくちゃ」


どういう事かわからず彼女とアレンを交互に見る。アレンは澄ました顔で紅茶をすすった。


「私ね、年が明けたら結婚してこの国を出るの。もう二度とここに戻るつもりはないわ」


そう言って彼女は、凛とした表情で真っすぐに私を見据えた。



次回86話は明日19時頃更新予定です。



少し今後の話を精査していきたいと思いますので次々回以降の更新はお時間を頂きたいと思います。1週間以内には更新できると(いいなと)思いますので今しばらくお待ちください。

今後の予定と進行状況は活動報告に上げていきますのでよろしければご確認くださいませ。


昨日今日でたくさんブックマークを頂きました。嬉しいです。ありがとうございます(^^♪

評価、コメント等頂けますといっそう励めますので、指の力に自信のある方は是非チャレンジをお願いします☆


本日も最後まで読んで頂きありがとうございました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ