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82 私とゲームと白魔力

またまたちょっと出遅れました(汗)

《白き乙女》



それはこのロクシエーヌ王国建国以来、何の前触れもなく生まれ落ちるといわれる伝説の白魔力の持ち主。その力は主に《治癒と再生》


「ステラはこの国の《魔法》についてどれほどの知識がある?」


唐突にヴィクター様に尋ねられた。


「…ええっと、入学当初アレンに聞いて…それだけです。王家と三大公爵家だけに継承されていて、王家は風、ヴィクター様のマクミラン家は炎、あとの公爵家は知りませんが水と土だと聞いてます。そしてその力と瞳の色が関係していると…」


ヴィクター様が静かに頷いた。


「残りは水魔力のミルトレッド家と土魔力のアドラム家。アドラムはこの国の宰相を務め、ミルトレッドの令嬢は王太子の婚約者だ。その二家と王家であるラングフォード家、俺のマクミランを含む四つの家門が建国以来、魔法力を継承している。そして瞳の色が濃いほどその力が強いとされ代々爵位を継いできた」


なるほど。だから嫡男であるヴィクター様の瞳はこんなに鮮やかな緋色をしているのか。


「《白き乙女》とはその世襲とは一切関係なく突如現れる存在だ。いつどこに生まれ落ちるかは全く予測できない。ただ必ず女性であるという。だから《乙女》。ある時は平民街の娘に、ある時は貴族の令嬢に…王女として生まれ落ちた事もあると聞く。それから孤児だったことも…。その力を持つものは成長と共に魔力を高め、多くの人間に価値を見出され時に崇められ《聖女》と呼ばれることもあったらしい」

「《聖女》…」


ヴィクター様がゆっくりと頷く。


「最も《聖女》と呼ばれる程の力を持つものは滅多に現れない。それぞれに個体差があって当然だからな。当然、魔力の強い者がいれば弱い者もいる。《白き乙女》の魔力は《治癒》と《再生》。《治癒》とは文字通り治療を施す事。けがや病気を回復させる力で強く願う事で発動する。それはお前も経験済みか?」


私は幼い頃の「イタイノイタイトンデケー」を思い出した。あれ、単なるおまじないだと思ってたけど実は魔法だったんだ。アンナが素直なだけだと思ってたのに…。

私はコクンと頷いた。


「残る《再生》。こちらは相当の魔力の持ち主でないと力は覚醒しない。例えて言うなら汚染された大地や空気の浄化だったり、人体の欠損部分の再生…更に力の強い者は死者を蘇らせることもできたとか…」

「死者の復活…」

「…あくまで伝承だがな」


流石に死者の復活までは眉唾ものだが、それに近いモノは先日経験済みだ。アンダーソン家のバザーでリズを助けたあの力…あれはおそらく《再生》の力だと思う。それにスチュアートに刺された私の傷だってキレイさっぱり治ってしまった。


「お前が《白き乙女》であることはおそらく間違いないだろう。そしてその魔力が相当のものである事も確信している。本来《乙女》は力を確認した時点で王国の保護の対象となるんだが…」

「ほ、保護…?」


なんで…?そんな大事になっちゃうの?


「今回の事でお前も分かっただろう。昔から《白き乙女》の周りでは常に争いの火種が生まれる。誰もがその力を自分のものにしたがるからな。ある者は自分の父親に高値で売られ、ある者は連れ去られ幽閉され死ぬまでその力を搾取され続けた。聖女として奉られた結果権力争いに巻き込まれ無残な死に方をした少女もいたそうだ。歴代の王たちはそんな混乱から彼女たちを守るため、力が完全に覚醒する前に見つけ出し匿い情報を秘匿した。やがて《乙女》の存在は時代と共に人々の心から忘れ去られ、王家と三大公爵のみが知りえる伝承となった…というのが俺の知るこの国の最重要機密だ」

「……」


話が壮大すぎて頭が追いつかない。

私が白魔法の使える《伝説の白き乙女》とか、まんま小説やゲームの世界の主人公(ヒロイン)ポジションで笑うに笑えない。っていうか…、


(これ、ホントにゲームの世界だったりして…?)


私は夢で見た過去の記憶を思い出す。

夢の中で確かに私は「白き乙女ステラ」という乙女ゲームの話をしていた。


白き乙女 = ステラ = 私 …。


「ははっ…」


乾いた笑いがこみ上げてきた。


(寝たい…)


私はベッドに倒れこむと掛布団を頭まで被った。


「ステラ…?」


気づかわし気にアレンが声をかけてくる。


「寝る…。しばらくほっといて…」


アレンは布団越しに私をギュッと抱きしめると、おやすみ、と一声かけて体を離した。ドアの閉まる音がして部屋が静かになった。おそらくみんな退室したのだろう。




(目が覚めたら…夢の話、アレンに話してみようかな…)


アレンは何て言うんだろう?私が転生者だっていうつかみどころのない話を信じてくれた彼だけど、流石に「この世界は実はゲームの世界のお話です」なんて荒唐無稽な話、今度こそ頭がおかしいと思われるかもしれない…。


(起きたら全部が夢でした、なんてことになってたらいいのに)



目を瞑ると一気に眠気が襲ってきた。

私がもう一度意識を手放すまでそう時間はかからなかった。




次回83話は明日19時頃更新予定です。

スチュアート編もあと2話~3話で終了予定です。そろそろ伏線の回収に入っていこうかなと思っています。

新編の攻略対象はあの人になります(^-^;


本日も最後まで読んで頂きましてありがとうございました☆

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