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63 私と婚約者と対決・・・?

翌日の昼休み、シンディの予言は早くも的中することになる。





「あ、あの…、ステラ様…。す、少しお時間、よろしいでしょうか…」



相変わらずおどおどした様子で目の前に立つリリア。

私はスープスプーンを口元に運んだまま彼女を見上げた。


(…きた……っ)


っていうか、なんでみんなランチ時を狙って私に会いに来るのよ。一日で一番楽しい時間なのに…。

私は泣く泣くスプーンを置くとリリアに向き直る。


「大丈夫ですよ。なんでしょう?」


とりあえず笑顔を振り撒いておく。話はローレンスの事に決まってるのに何でしょうも何もないんだけど…。なんでもないふりをしては見たけど手の平にじんわり汗がにじむ。こういう女のいざこざはは、出来れば避けて通りたいのにそうはいかないのはなぜなのか。前世でだって特にそんな素振りを見せたわけでもないのに知らない間に渦中にいたし。こういう面倒ごとに関わり合いたくないから恋愛はしたくないって思ってるのに…。

私は気づかれないようにそっと息を吐いた。


「あの…実は…ステラ様に…お、お願いがありまして……」


(ほらきた!)


私は黙ってリリアを見つめる。今日の彼女は縁の細い眼鏡をかけている。長めの前髪が顔の半分ほどを覆い表情が読み取れない。頬が赤くなっていることから彼女の方が緊張しているのかもしれない。リリアは金魚のように口をパクパクしながら最初の言葉を選んでいるようだった。

そして意を決したように顔を上げると、


「わ、私に…はちみつを分けて頂けないでしょうか!!」


そう言って深々と頭を下げた。


「……」


「……?」


「へっ?」


想定外の言葉に思わず間抜けな声が出た。


「はい!!今度の当家主催のバザーで子供たちにはちみつを食べさせてあげたいと思いまして…。孤児院の子供たちが食べた事ないというので…」

「ちょっ、ちょっと待って。はちみつ?ローレンス様の事じゃなくて?」

「ローレンス様…ですか?…いえ…それは別に」 


え…?そうなの?


「私が昨日ローレンス様と一緒にいたから婚約者として文句を言いに来たんだと思ったんだけど…」


するとリリアはああ、と軽く頷いた。


「それは…別にいいんです。ローレンス様の気持ちがもともと私にない事はわかってますので。そんな事より…」


(そんな事より?)


「私の話を聞いていただけませんか?」





リリアの話はこうだった。

半月後の祝日、アンダーソン家主催のチャリティーバザーが王都の教会で開かれるそうだ。今回は各所から出店者を募って大規模なイベントを企画しているらしく、いつも母親の手伝いをしているリリアは孤児院の子供たちと一緒に出店をするよう命じられた。そこで何を出すかを散々迷い考え抜いた挙句、学園で流行っているパンケーキに思い当たった。はちみつたっぷりのパンケーキ。それを子供たちに話したらみんなが口をそろえて食べたいと言い出した。


「それで、バザーでパンケーキを販売したいのね?」

「そうなんです…。ステラ様が…はちみつを手掛けているとお聞きしたので、ぜひお力をお貸しいただければと思ったのですが…。あの…図々しいお願いで本当に申し訳ありません…」


リリアがまた深々と頭を下げる。はちみつ…私が売ってるわけではないんだけどね…。


「うーん…」


私は腕を組んで考え込んだ。バザーでパンケーキかぁ……。

そんな私の様子に何を勘違いしたのか、リリアが突然慌て始めた。


「も、申し訳ありません!!!図々しいですよね!!いいんです!!!ごめんなさい!!忘れてください!!すみません!すみません!!」

「ちょ、落ち着いて…っ」


頭を下げながら徐々に後ろに下がっていくリリアを慌てて捕まえる。


「違うのよ!嫌なんじゃなくて!会場でパンケーキを焼くのはちょっと難しいかなって。道具の搬入とか人手とか当日だと色々大変だし。だったら他の物の方がいいんじゃないかなって思ったの」

「ほ、他のもの、ですか…?」


涙目のリリアがきょとんと私を見る。


「事前に準備ができて当日は売るだけにした方が慌てなくていいと思うの。そうだなぁ…、あっ!カップケーキとか、どう?」

「カップケーキっっ!!!」


大声で反応したのはなぜかセシリアだった。


「はちみつをたくさん使うつもりならレモネードとかもいいかも。子どもたちでも簡単に作れるし、大人用にアイスティーとかにしても受けがよさそうだし」


なんだろう、急に楽しくなってきた。


「いいわ!はちみつの件は私に任せて。他にも揃えたい材料もあるし…、いろいろ打合せしないとね。時間もあんまりないからすぐに手配しないとね!忙しくなるわよ、覚悟して!」

「えっ?手伝ってくださるのですか…?」

「当然でしょ。関わるんだったら最後まで付き合うわよ。あれ…?だめだった?」

「い、いえ!!とても助かります。私要領があまりよくないので…。よ、よろしくお願いします、ステラ様…」

「ステラでいいわよ。私もリリアって呼んでいい?」

「…っ!はい…もちろんです!よろしくお願いします、ステラ…さん」







(はーぅ、久しぶりに楽しみができた。エイデンさんに言って色々材料揃えてもらわなきゃ。)


ルンルンした気分でスキップしながら午後の授業に向かう。


「全くもう…。なに仲良くなっちゃってるのよ…」


そんな様子の私を見ていたシンディがあきれたようにため息をついた。え?なんで?


「リリアはローレンス様の婚約者なんでしょ?なのに仲良くなっちゃってどうすんのよ。いろいろめんどくさいでしょう…。分かってんの?」


私ははたと立ちどまった。そ…そうだった…忘れてた…。


「…忘れてたって顔に出てる。まあいいけどね、ステラらしくて。面白そうだから私も付き合うわ。ね?セシリア」


話を振るとセシリアが私の両手を握ってきた。


「カップケーキ、食べさせてくれるのでしたらいくらでも」


今まで見てきた中で一番輝かしい笑顔でセシリアが微笑んだ。


次回64話は明日19時更新予定です。

久しぶりに食べ物ネタです。お菓子です。


本日もブックマークありがとうございました(^^)



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