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175 私とアレンとゲームの詳細

時は少し遡る。



一週間ぶりに目が覚めた私は、パイロンが起こした事件の顛末と共に、今度こそアレンが一人でずっと抱え続けてきた真相を知る事となった。



(まさか…本当に私がゲームの世界に転生してたなんて…。しかもヒロイン(主人公)だなんて…。今でも信じられないんだけど…)



アレンが話してくれたのは、この世界…私が転生したこのロクシエーヌ王国を舞台としたゲーム『白き乙女ステラ』にまつわる真実だった。


このゲームの事は私だって知っている。そうもちろん。…タイトルだけは。


前世の私が高校生だった頃、最も流行っていたというスマホのゲームアプリ。

主人公『ステラ』が、攻略対象者と呼ばれるイケメンキャラクターたちとの仲を深め、甘い展開やスチルと呼ばれるイラストにキュンキュンする(らしい)恋愛シュミレーションゲーム…いわゆる乙女ゲームというものだ(そうだ)。


ゲーム音痴の私がこの手のゲームに手を出すことはもちろんなかったので、内容は全てアレンからの聞きかじり。そんなアレンが何でこのゲームにそんなに詳しいのかと言うと…



(全部私のせいだった……)



高校生の頃、一度だけ康介と一緒に帰った事があった。その時、趣味について聞かれて困った私が咄嗟に答えたのがこのゲームのタイトルだったのだ。


(まさか私との接点を持つためだけにこっそりプレイしてたなんて…。今更そんなカミングアウトされてもどんな反応したらいいのかわからない)



その後アレンこと康介は、なかなか出現しない隠しキャラであるアレクシス王子にたどり着くまで、ずっとゲームをやり込み続け、ついに全キャラ攻略を果たしたそうだ。更には押しキャラである『ローレンス』のグッズを買いあさるまでのガチ勢となっていったそう。


(まあね、昔からこうと決めたら絶対途中で投げ出したりしなかったから…わかると言えばわかるけど)



ゲームの攻略対象者は全部で5人。


ストーリーを進めるにつれ攻略できるようになるのは4人の対象者。『義弟ルーカス』『魔法士ヴィクター』『騎士ローレンス』『王太子エリオット』。

彼らのうち、いずれか一人を攻略することで迎えられるのがハッピーエンドと呼ばれるルート。それとは逆に、彼らの誰とも恋愛に発展しなかった場合にたどり着くのがバッドエンドと呼ばれるルートらしい。このルートでは主人公ステラが国を守るため白魔力を使い果たし霧のように消えてしまう、というシナリオだったらしいのだけど…。


(なんていうかこのゲーム、対象者が身内と婚約者持ちばっかじゃない?本気で私に恋愛させる気あんの?それにバッドエンドのシナリオ。こんなルートなかなか行き着くものじゃないのかもしれないけど、当事者としては強く抗議したい。死ぬじゃん、私)


そしてこれらすべてのルートを攻略した後に現れる隠しキャラというのが5人目の『第一王子アレクシス』。

ゲーム序盤からステラの幼馴染ポジションで付き従うアレンが実は第一王子だったという設定なわけだが、これこそがこのゲーム最大の難関だったらしい。

ストーリーの進行上、一つでも選択を間違えて『ステラ』に『アレン』=『アレクシス』だって事を悟られたらアウト。その時点でシナリオはバッドエンドに書き換えられ『アレクシス』の登場の可能性は0になる。出現率のあまりの低さに攻略を諦めるユーザーも少なくなかったそうだ。


(アレンがずっと私を誰かとくっつけようとしてたのはわかってたけど、まさかこんな理由があったなんて…。バッドエンドで私が消えないように…自分がレアキャラとして登場できない可能性も考えて…)






全てを話し終えたアレンは最後にこう締めくくった。


「ホントは君に隠し事なんてしたくなかった。全てを話して全力で君を守りたかったのに…。何が正解なのかわからなかったんだ…。とにかく君を死なせたくなかった。本当にごめん」


アレンはそう言って何度も私に謝った。


「謝らないで、アレン。私なんかよりあなたの方がずっとつらかったでしょ?たくさんの秘密を一人で抱えて、それを誰にも話せなかったんだもん。それなのに…アレンの気持ちも考えずに随分ひどい事ばっか言っちゃった。私の方こそごめんね」


そう言って謝る私の手をアレンが優しく握る。


「君が生きてさえいてくれたらそれだけで十分だよ。でもこれからは…陰でこそこそするようなまねはしない。もう隠し事はしない、約束するよ。僕の生涯をかけて君の楯となり剣となり、全身全霊で守る」


アレンが私の手の甲に優しく口づけた。私は微笑むと両手でアレンの手を握り返す。


「ありがとう、アレン。でもね…私は守ってもらうだけの存在にはなりたくないの。お互い支え合っていける対等な関係でいたい。だからこれからは…二人で乗り越えて行こうよ」


その言葉にアレンが輝くような微笑みを浮かべる。


(うっ…久しぶりに眩しいっ!!このイケメンめ…っ)


「でも…」


アレンの顔に少しだけ憂いが帯びる。その顔もまた、ため息が出るほどかっこいい。


「この世界がこれまで通り『白き乙女ステラ』のストーリー通りに進んでいるのだとしたら、懸念すべき点が一つある」


「懸念すべき点?」


「バッドエンドを通過せずに、レアキャラである『アレクシス』()が登場してしまったという事」


「あ……」



本日も最後まで読んで頂きありがとうございました。


ようやくステラとアレンの記憶と情報網が一つになり、ホッと一息付けました。

自分で書いててなんですがアレンの秘密が多すぎます。前世持ちで王子で記憶喪失 (ふりでしたが)って。しかも記憶喪失のふりも前世サイドと王子サイドで理由が違うし。こいつホントにめんどくさい…キャラにしてしまったのは私ですが…。


あと登場人物も増えてきてもう収集がつかない…(笑)

そんなこんなで次回はいざマールム領へです。


次話もどうぞよろしくお願いします。


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