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153 私と初めての降誕祭(一日目) 4

初日ラストです☆

この後は午後の剣術の試合を見に行くことになっている。


「ローレンス様の試合は何時頃なのかしら?間に合う?」


行きがけに出店で買ったソーセージと焼き栗をみんなで頬張る。


「今日は予選だけなのでローレンス様の試合はないんです。明日の本選もシード権をお持ちなので午後からの参加になるみたいです」


「へぇ、やっぱりローレンス様ってお強いんだ」


「彼は去年の優勝者ですからね。今年のシードはローレンスとエリオット様のお二人ですよ」


チェスがそう教えてくれた。


(ん?ローレンスって?今呼び捨てにした?気のせいかな…)


「エリオット殿下もそんなにお強いんですか?」


剣を振るう姿は全く想像つかないんだけど…。


「まあ…ご覧になればわかると思います」


意味深にチェスがいい、ふらりとその場を離れる。

どこに行ったのかと思っていると、その手にマグカップを3つ持って戻ってきた。

中から甘くスパイシーな香りが漂う。


「ホットアップルサイダーです。体が温まりますよ。さあリリア様もどうぞ」


ホットアップルサイダーはリンゴの果汁にお砂糖や果物、スパイスを加えて温めた飲み物だ。まあ、簡単に言えばホットワインのワインをリンゴジュースに置き換えたノンアルコールの飲み物。


「チェス君は?」


「私は…これです」


え…これってまさか…。


中から漂う香りに嗅ぎ覚えがある。この香りもしかして…


「ホットワイン……?」


「はい。この時期はこれに限りますから」


そう言ってカップに口をつける。え…なんで…?


(未成年…よね…?なんで当たり前に飲むの?ずるくない?)


「ちょっと、チェス君…。それお酒でしょ?まだ未成年なんだからそんなの飲んじゃだめじゃない?」


私だって涙を飲んで我慢してるのに…


と、そこへ、



「リリア!ステラ嬢!!」


咎める私の言葉を飲み込むように、聞き覚えのある声が響く。遠くからでも頭一つ分飛び出して見える長身。ライトブロンドの短髪にブルーの瞳…ローレンス様だ。


「ローレンス様」


リリアが頬を赤らめ、ローレンス様に駆け寄る。

そんなリリアを彼は愛おしそうに見つめると、長身をかがめて頬にそっとキスをした。真っ赤になるリリアがとてもかわいい。


「遅いから迎えに来たよ」


「申し訳ありません…。どこも人が多くて…」


あらあら?いつの間にかこの二人、すっごくいい雰囲気になってない?

ニヤニヤする私にローレンス様はコホンと一つ咳ばらいをする。

あらあら、こっちもちょっと顔が赤いかしら?ふふっ、良きかな良きかな。


「お久しぶりです。ステラ嬢」


「ええ、バザー以来ですね」


相変わらずの爽やかな笑顔には好感しかもてない。


「少しお会いしない間にまたお美しくなりましたね」


そんな歯の浮くようなセリフまで付け加えてくれる。


「ふふ、ありがとうございます。ローレンス様も相変わらず素敵ですね。その服とっても似合っています」


いつもの制服姿もかっこいいけど、今日のローレンス様は一味違う。襟から裾にかけて美しい銀の刺繍を施した濃紺のジュストコールに同色のベスト、白のパンツに膝丈のアーマーブーツ、そして肩には黒のケープマントを羽織っている。すれ違う令嬢たちがみんなこちらを振り返り頬を赤らめながら通り過ぎていく。


(こりゃ、リリアも大変だ)


すると、ローレンス様の視線が私を通り過ぎ後ろの人物に移る。


「あの…もしかして、そちらにいらっしゃるのはチェス様ではありませんか?」


私の後ろでホットワインに舌鼓をうつチェスにローレンスが声をかけた。


「やあ、ローレンス。久しぶりだね。君また背が伸びたんじゃない?」


チェスが砕けた口調で話す。


「お久しぶりです、チェス様。どうされたのですか?こんなところで。今日は殿下はご一緒ではないのですか?」


「ん?今日はね、殿下の命でステラ様の護衛をしてるんだ」


「ステラ嬢の護衛、ですか…」


ポカンと口を開けて、ローレンス様が私とチェス君を見比べる。


(あれ?この二人知り合いなの?)


「それよりイーライは元気?最近はお互い忙しくてなかなか会えないけど…」


「はい、元気です。兄もチェス様に会いたいと言っていました」


「そうか。じゃあ今度飲みに行こうと伝えておいてくれ」


「わかりました。兄も喜ぶと思います」


そんな二人の会話を聞きながら今度は私がポカンと口を開けて二人を見る。


「あの…」


黙っていられなくてつい口を挟んだ。


「お二人はお知り合いなんですか?」


「はい、チェス様は僕の兄の同期で、近衛騎士団の前団長だった方です」


「へ…?」


「今は殿下直属の騎士(ナイト)に専任していらっしゃるので兄のイーライに後任を譲りましたが、剣の腕前で現近衛の中でチェス様に敵う者はいません。僕の兄ですら戦績は次席ですから」


「大げさだなぁ。僕はただの殿下の側仕えだよ」


ハハッと笑うチェス君。

いや、チェスさん?チェス…様…?


「あの、失礼ですが…ローレンス様のお兄様は今おいくつなんでしょうか?」


「僕の兄ですか?今年で22歳になりますが…どうしてですか?」




マジか――――――っ!!



私は振り返りチェス()を見る。

ニコニコと微笑む顔は確信犯にしか見えない。



(や、やられた…)



私はその場に膝をつくと、


 

そのまま土下座した。



本日も最後まで読んで頂きありがとうございました。


次回は二日目、剣術大会となります。かっこいいローレンスとエリオットを堪能して頂ければと思います。


次回もどうぞよろしくお願いします。

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