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143 私とクッキーとコフィアゼリー

今回はお菓子の回です

私はリリアが用意してくれた材料を作業台の上に広げた。


「型抜きクッキーの材料はそんなに特別なものは必要ありません。小麦粉にバター、卵に砂糖。これだけあれば基本のクッキーは作れます。まずはバターをボールに入れて泡だて器で擦りまぜます」


「あ、それ僕やりたい」


殿下が子供みたいにニコニコと手を出すのでお任せすることにした。


「クリーム状になるまで混ぜてください。始めのうちはちょっと混ぜにくいかもしれませんが段々滑らかになりますから、とにかくグルグル混ぜてください」


言われた通りひたすらにグルグルと混ぜる殿下。さすがは男の子。こういう作業は結構腕に来るのでものすごく頼りになる。


「そこに砂糖を加えてさらに混ぜます。全体が馴染んで白っぽくなったら溶いた卵を何回かに分けて加えて行きましょう」


「どうして全部入れちゃいけないの?」


はい、アンネローゼ様。とってもいい質問です。


「分離させないためです。油と水はなじみが悪いので油分であるバターに水分の多い溶き卵を一気に入れると分離してうまく混ざらないんです。全体を均一に、より滑らかな生地にするためには少しずつなじませていく必要があるんです」


三人がへぇぇと感嘆の声を上げる。へへっ、なんだかこそばゆい。


「きれいに混ざりましたね。そうしたら粉を混ぜていきましょう。リリア、小麦粉をふるいにかけてくれる?」


「わかりました」


リリアが慣れた手つきで小麦粉をふるう。先日のカップケーキ以降、リリアはよく孤児院の子どもたちに手作りのお菓子を振舞っているらしい。


「どうして小麦粉をふるうの?」


今度は殿下が質問を投げかける。このカップル、ホントにいい生徒だわ。


「一つは()()を取り除くためです。きちんと混ぜたつもりでも粉の中にダマが残っていると焼き上がりの食感が悪くなります。口の中に粉っぽさが残るとおいしくないですよね。もう一つは空気を含ませるためです。ふるいにかけると粉全体がサラサラになり粉雪のような状態になります。そうすることで他の材料と合わせた時、膨らみやすくサクサクに仕上がるんです。たったこれだけの事ですが、お菓子作りにはとっても重要な事なんですよ」


へぇぇ、と再び三人の感嘆の声が上がる。


「それじゃ、生地に粉を合わせて行きましょう。アンネローゼ様、そこにある木べらを取ってください」


「これでいいの?」


「はい、粉を入れたら切るように混ぜてください」


「切るように…?」


私はアンネローゼ様の背後に回ると、彼女の手に自分の手を添えた。


「こうやって木べらを縦に持ってナイフで食材を切るように…そうです。そんな感じで何回か木べらを入れたらボールの縁から大きく生地を返します。そうしたらまた何回か切って生地を返す。それを何回か繰り返すうちに生地がしっとりまとまってきますから、そうなったら声をかけてください」


私がアンネローゼ様から離れるとリリアがボールの中を覗き込んだ。


「こうやって混ぜるんですね。確かにお姉さま方のやり方とは全然違います。勉強になります」


おそらく、この国のクッキーは「お姉さま方」の作り方で焼かれているのだろう。この段階でグルグル混ぜてしまうと生地の中のグルテンの力が強くなりガッチガチのクッキーが出来上がる。


「ふふ、食べたらびっくりするわよ。サクサククッキー。絶対においしいんだから」


「はい、楽しみです!」


さあ、生地の方はアンネローゼ様にお任せするとして、次はステンドグラスだ。

リリアの用意してくれたワックスペーパーの包みを解くと、中からカラフルなキャンディたちが顔をのぞかせた。


「わあ、かわいい。でもちょっと大きいかな…?」


私はキャンディを色別に分けるとそれぞれをペーパーで包み、麺棒で叩く。


「砕いちゃうの?」


殿下が私から麺棒を取り上げると仕事を代わってくれた。


「はい。少し大きいみたいなので。砕いた方が色を組み合わせる事もできるからよりかわいく仕上がりますよ」


「全然想像つかないけど…。でも、君が言うなら間違いないね」


「ステラ、生地はこんな感じでいいのかしら?」


アンネローゼ様に呼ばれボールの中を覗き込む。


「あ、いい感じですね。これをひとまとめにして、涼しい所でしばらく休ませます」


「休ませる?」


「はい、1時間くらいでしょうか?休ませると生地が馴染むんです。本当は一晩寝かせた方がよりサクサクしますが、今日は試作なので。皆さんも早く食べたいですよね」


「「「食べたい」」」


三人が声を揃えて頷く。


「とりあえず第一段階の作業はここまでです。次の作業まで休憩にしましょう」


私はみんなに椅子を勧めると調理場の奥にある、食材を貯蔵する冷暗室に向かった。

昨晩、寝つきの悪かった私は、厨房を借りてある『デザート』を作ってみたのだ。


(コフィアの存在を知ってから、ずっと食べたかったんだよね)

 

冷暗室に置かせてもらっていた木箱からは若干の冷気が漏れ出ている。

みんなの元に戻った私は早速木箱の蓋を開けると、中から人数分のパフェグラスを取り出した。


「…?これは何?」


興味津々に殿下がグラスを上から覗き込む。


「これはですねぇ…」


泡立てておいた生クリームをグラスの中に落としスプーンを添えて各人の前にサーブする。


「コフィアで作ったゼリー。『コフィアゼリー』です」



本日も最後まで読んで頂きありがとうございました。


本日はサクサククッキーのコツをお送りいたしました。

次回はこれにステンドグラスが加わります。


次回もどうぞよろしくお願いします('◇')

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