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124 私とアンネローゼとカラフルニョッキ 2

「それじゃ、改めて手順を説明するから、勝手な事はくれぐれもしないでね。絶対だからね!!」



主にシンディとセシリアに向かって言葉を放つ。

二人は「はーい」といい笑顔で返事をしたけどどうにも胡散臭い。



「まずはさっき茹でたジャガイモの皮を剥きます。これは熱いから私がやるわね。シンディとセシリアはほうれん草をすりつぶしてくれる?殿下とアンネローゼ様はニンジンをつぶしてください。だいぶ柔らかくなっているのですぐにペースト状になると思います」



私は4人にナイフの持ち方から切り方、すり鉢の使い方まで手取り足取り作業の手順を教えた。

これだけ丁寧に教えてあげればさっきみたいな事にはならないだろう。



(さっきは自分の物差しで人を測った私が悪かった。できる事も知ってることも人それぞれだからね。自分ができる事でも他の人ができると思っちゃいけないんだから)



これは私の社会人時代の教訓だ。


私はまだ熱々のジャガイモの皮を素手で剥く。量があるので結構大変だ。



「あつっ、あちち…」



時折水に手をさらしながら一つ一つイモの皮を剥いていく。



「ステラ。そっちを手伝おうか?」



見かねた殿下がそう言ってくれた。



「いえ、大丈夫です。かなり熱いので…。火傷しますから」


「大丈夫だよ。イモの皮ぐらい僕にだって剥け…あつっ!」



殿下が湯気の立つジャガイモに手をのばし、慌てて放り投げる。



「殿下っ!!」



周りにいた医師と騎士たちが色めきたつ。



「お前…っ!殿下に何を!!」


「いえ、私は何もしてません」



いいって言ったのに勝手に掴んだのは殿下でしょ?、と口には出さないが心の中でそう思う。



「そうだ。僕が勝手に持ったんだ。いちいち反応しなくていいから黙って見ていろ」


「「はっ!」」




ナンデ ワカルンデスカ……?




「それにしても…茹でたてのジャガイモってこんなに熱いんだね。知らなかった。ステラは大丈夫なの?」


「私は慣れているので……。別に熱くないわけではないんですけど」



私は自分の両手を見た。真っ赤になっているのは見た目でわかる。それを見た殿下が私の手を取った。



「冷めてからじゃダメなの?その方がやりやすいと思うんだけど…」



はい、もっともなご意見です。そしてとてもいい生徒さんですよ、殿下。

熱いうちに作業するのにはちゃんと理由があるんです。



「冷めてからだと潰すときに力もいるし、粘り気が出てきて食感がよくないんです。だから熱くても我慢して潰すところまでやっておく必要があるんです」



これ料理の基本。前世では冷めちゃってもレンジがあったから温め直すのも簡単だったけど、ここではそういう訳にもいかない。それにみんなを待たせるわけにもいかないからちゃっちゃと作業を進めたい。



「…そうなんだ。料理を作るのも簡単じゃないんだね。みんな、いつもありがとう」



その言葉に料理人の方々が目頭を押さえたり鼻をすすったりしている。

うんうん、これだけでもこの調理実習には価値があった。



「ジャガイモは私が剥きますので、殿下は切っておいたカボチャを水から茹でて頂けますか?」


「水から茹でる…?」



再び殿下が首を傾げた。



「水を張った鍋にカボチャを入れて火にかけるんです。ほうれん草は沸騰してから鍋に入れましたがカボチャは水の状態から茹でるんです。硬いので」


「そうなんだ。あ、だからカボチャもニンジンも水から茹でたんだね。硬いから」


「そうです。さすが殿下。お察しがいいですね」


「へへっ。ステラに褒められるとなんだか嬉しい」



照れ臭そうにはにかむ殿下がなんだかかわいい。お母さんポジションはどうやら相変わらずのようだ。

まあ私自身、もしも息子がいたらこんな素直な子がいいなぁ、なんて思ってる時点でまんざらでもないのかもしれない。



「ステラはなぜエリオットとばかり話しているんですの?!」



突然、アンネローゼ様が私たちの会話に割って入ってきた。まじめな性格なのかニンジンをつぶす手は休むことなく動き続けている。



「す、すみません……。アンネローゼ様」



(そうだよね。自分の婚約者が他の女と仲良く話してたら面白くないよね)



いくら鈍感な私でもそれくらいの感覚はわかる。



「今日は私がステラと仲良くしようと思っていたんですのよ!なのにエリオットばっかり…っ。少しは遠慮したらいかがですの!」



(あれ…?そっち?)



アンネローゼ様がすごい目で殿下を睨みつけている。それでも手は休むことなく動き続け、そろそろニンジンがジュースになりそうだ。



「ああ、そうだった。ごめんねローゼ、そんな顔しないで。いやそんな顔もかわいいからもっと見ていたい気もするけど…」



殿下がニコニコと嬉しそうにアンネローゼ様を見つめる。

はいはい、まあ仲良くやってくださいよ。

私はそんな二人を放っておいてジャガイモの皮をひたすら剥き続けた。


本日も最後まで読んでいただきありがとうございました。


なかなかニョッキが作り終わりません。いつになったら食べられるんでしょうか。

ニョッキのレシピもいろいろあるのでこれが正解ではありません。自分がおいしいと思うレシピが一番です。


次回もどうぞよろしくお願いします('◇')ゞ

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