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119 私と魔力と魔法力 1

「わあ、久しぶりにやられたなぁ」



楽しそうに笑う殿下の隣で、なかなか状況が把握できないでいる私。



(なにが起きたの…?全身びしょぬれなんだけど…)



大量の水を吸って重くなった制服に、髪の毛からボタボタと滴り落ちる水滴。隣を見ると同じく全身水浸しのエリオット殿下が水の滴る前髪をかき上げて笑っている。



「な、なにが起こったのでしょう…か?」



茫然とする私にアンネローゼ様が泣きそうな顔で駆け寄ってきた。



「ご、ごめんなさい、ステラ…。私、まだ魔法力のコントロールがうまくできなくて…」



きれいな刺繍の入ったハンカチで必死に私の顔の水分を拭き取ってくれる。



(うん、これはタオルが欲しい所ですね。ハンカチじゃ追いつかない)



「これは、アンネローゼ様の魔法力なんですか?すごいですね。びっくりしました」



コント番組の罰ゲームかと思うくらいの水量が私の脳天を直撃した。



(下向いてなくて良かった。危うく首ごと持っていかれるところだった…)



私はジャケットを脱ぐとぎゅうぅぅと力いっぱい絞ってみた。ついでにスカートも。



「ローゼは感情が高ぶると魔法力が暴走しちゃうんだよ。昔はからかってよく水浸しにされたっけ。ははっ、懐かしい」



どうでもいいですが寒いんですけど…。今真冬ですよね…。



「へくちっ!!」



大きなくしゃみが一つ。あ、やばい…鼻水たれる…。



「ああ、ごめんごめん。寒いよね。いつもだったらこんなミスしないんだけど、ちょっと油断しちゃった」



殿下はそう言うとパチンと指を鳴らした。

すると、私の周りの空気がふわっと揺らいだ。



(風…?)



ほんのりと温かい風が私の周りをドーム状に包み込む。と、そのまま回転を始め一気に霧散した。



「え、嘘…っ乾いてる…?!」



しかもなんかふっかふか……。



「風の力を借りて水分を一気に吹き飛ばしたんだ。大丈夫?ステラ。寒くない?」


「大丈夫です…。すごいですね、お二人とも」


「小さい時から訓練させられてきたからね。僕みたいに潜在能力の高くない者はコントロール力を身につけるしかないから。おかげで操る力だけは誰にも負けないよ」


「私に至っては幼児レベルですから…。落ちこぼれですの…」



アンネローゼ様がシュンと下を向く。



「いいんだよ、ローゼには僕がいるんだから。それにかわいいから何の問題もない」



すかさず殿下がアンネローゼ様の肩を抱き寄せ、額にキスを落とした。

またまた始まってしまったイチャラブタイム。いいけどね、見てて微笑ましいし。



「魔法力って訓練でコントロールできるようになるんですか?」


「ある程度はね。その人の潜在能力の違いで大きく違いは出るけど…。なに?興味あるの?」



(そうか…。私の白魔法もコントロールできるようになればもっと誰かの役に立てるのかもしれない。今まであんまり考えた事とかなかったけど、結構使える能力よね、これ。もっと真剣に考えなきゃいけなかったのかも)



「まあ知識はないよりあった方がいいですから…」



「はい!!実は私、白魔法が使えるんです!」なんて正直に言えたらいいんだけど、そういう訳にもいかないのでとりあえずそう取り繕った。



「魔法力のない人には口で言っても難しいかもしれないけど…、要は集中力とイメージ、あとは呼吸かな」


「集中力とイメージ…呼吸?」


「うん、例えば……」



殿下は近くにあった花瓶から大きめの花びらを一枚千切ると、テーブルの上に置いた。



「まずは集中力。僕の風魔法の場合、周りの大気を風に変えるよう意識を集中させる」



殿下がじっと花びらを見つめながら手をかざすと、テーブルの上のそれはまるで生きているかのようにふよふよと動き出し、さっと空中に舞い上がった。



「あとはその応用で空中に対象物を留める」



殿下の言葉通り花びらが空中でピタリと止まった。



「今、目には見えないけどこの花びらの下ではものすごいスピードで空気が回転しているんだ。花びらはその上に乗っているだけ。これを自在に動かす事もできるよ」



殿下は花びらを上下左右、自在に動かして見せた。



「すごいですね!!」



殿下はニコッと笑うと、私の目の前まで花びらを近づけた。



「次はイメージ。例えばこの花びらを固く針のようだとイメージする」



その言葉に反応するかのように、ふんわりと柔らかだった花びらがクルクルと細く巻かれ、一本の鋭い針のような形に変わった。



「そして呼吸」



殿下がパチンと指を鳴らすと私の目の前から花びらは消え、壁際でストンという音が響いた。

そちらに目を向けると壁に掛けられたダーツがゆらゆらと揺れている。駆け寄って顔を近づけると先ほどの花びら針が中心部に突き刺さっていた。



「僕たちが使えるのはあくまで魔法力。自分自身で魔力を作り出せるわけじゃないから自在に扱えるようになるには使い方を覚える必要があるんだ」


「魔力と魔法力って違うんですか?」



そんな話、聞いた事ない。もちろん前世でも…。



「魔力とは自分自身の体内で生み出す力。魔法力は自然界の力を魔力に変換させて利用する力…なんだそうだよ。僕たち王族と三大貴族にはなぜかこの魔法力を使いこなす能力が代々受け継がれている。それがなぜなのか、どうして僕たちだけなのかははわからないけど、この力は絶対に絶やしてはいけないって代々教育されてきたんだ」


「魔力を自身で生み出す人ってどういう人なんでしょう…。それってもう人ではないんじゃないですか?」



魔物…だよね?魔王とか?



「うーん、僕も会ったことはないけど、いないわけでもないみたいだよ。伝承の中にはそういう人もいたみたい。これはちょっとステラにも話せないんだけど…」



それってもしかして……。



「白き乙女……」



思わずつぶやいてしまった言葉を殿下は聞き逃さなかった。



本日も最後まで読んでいただきありがとうございました。


魔力と魔法力の違いについてはあくまでこの作品中の考え方になります。

えっ?と思われる方もいらっしゃると思いますが、そこはサラッと流して頂けるとありがたいです。


次回120話は明日19時頃更新予定です。

明日もどうぞよろしくお願いします('◇')ゞ

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