表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
119/188

117 私とヴィクターと王家の過去

「はい」


「なんだ?」



ヴィクター様が話し始めようとした矢先、シンディがおずおずと手を上げた。



「話の腰を折るようで申し訳ないんですけど、それって私たちが聞いても問題ない話ですか?」


「……」


「……」


「………問題ない。……こともない、かもしれない」



ガチャガチャッッ!!



シンディとセシリアが慌てた様子で食器を片付け始める。



「ステラ!悪いけど興味を持ったのはあなただから。責任もってちゃんと話を聞いておいてね!」


「だからと言って興味のないお話でもありませんから詳細は後程、深夜のお茶会でちゃんと聞いてあげますから!」


「えっ…ちょ…待って!なんで…っ?!」



そう言い捨てて慌てた様子で去って行った二人を、取り残された私は呆然と見送ることしかできなかった。



「これは…どういう事でしょうか?」


「まあ、深入りしてもいい事がある訳ではないからな。賢明な判断だろう」



ちょっとした雑談のつもりだったんだけど…なに?そんなにヤバイ話なの?



「それで?お前は現国王家についてどれだけ知っている?」



おおう…唐突に始まってしまった。でもいい機会だからきちんと教えてもらおう。



「ええ!全く存じ上げません!」



元気いっぱいにそう答えてみた。



「……。現在、この国は国王ローライ様とベアトリーチェ王妃が頂点に立つ王立国家であることはわかっているな?」


「それくらいなら…大丈夫です」


「ベアトリーチェ様が王妃の地位についたのは今から11年前。それまではエリオット殿下の実の母君であるルイーズ様がこの国の王妃だった」


「ルイーズ様…ですか?」


「俺も直接会ったことはないが、ブロンドの髪を持つそれは美しい女性だったと聞く。肖像画を見た限りクローディア様の面立ちが一番ルイーズ様に似ているように思える」


「それは…本当にきれいな人だったんですね」


「ルイーズ様は隣国の第三皇女だったお方だ。視察で訪れた、当時まだ王太子だったローライ様が見初められこの国に嫁ぐことが決まった。その後アレクシス様、クローディア様、エリオット様を出産され12年前、急な病で亡くなられた」


「急な病…」



一瞬、アレクシス王子の事が頭をよぎった。



「その一年後、それまでルイーズ様の侍女として仕えていたベアトリーチェ…当時は侯爵令嬢だったが、宰相であるパイロン公爵の強い後押しもあり王妃となった」


「ベアトリーチェ様ってルイーズ様の侍女だったんですか?!」


「ああ。本来なら王妃の侍女になどなれる家門ではなかったのだが、当時アドラム家の()()()()()()()()()のパイロン公が強く推薦したそうだ」


「当主になったばかり?」


「前当主、つまりパイロン公のお父君だったベルゲン様はその1年前、何者かに暗殺されている」


「…っ!」


「今も犯人は捕まっていない。当時はまだ国家間の小競り合いも多い時代だったから他国の刺客の筋も疑ったが…結局真相はわからなかったそうだ」


「もしかしたら皆さんは、パイロン様を疑っているんですか…?」


「……。警備隊が駆けつけた時には、すべてが片付いた後だったそうだ。その後の調査も屋敷への立ち入りの許可を得られず思うように進まなかったらしい。これで疑うなという方がどうかしている」


「もし仮にその仮説が正しかったとして、なぜパイロン様はご自分のお父君にそのような事をなさったのでしょうか?」


「さあな。ただベルゲン様は誰よりも強く王家に忠誠を誓った方だったと聞く。その辺に何か確執のようなものがあったのか…。今となっては誰にも分らんな」


ヴィクター様は深くため息をついた。


「…最近のパイロン公は宰相の立場にありながら王妃への肩入れが過ぎる。心無い一部の貴族の間では、第三王子のカイル様を次期国王に据える準備をしているなどと噂するものさえいるからな。王家だけではない。我がマクミラン家もミルトレッド家もアドラム家に対してはいい感情は持っていない。それに現王妃に対しても…」


「それで…派閥ですか…?」



ヴィクター様がゆっくりと頷いた。



「ベアトリーチェ様が王妃となってからラングフォードの家はバラバラになってしまった。第一王子のアレクシス様は亡くなり、クローディア様はハリエットへ…。そしてエリオット様はお一人になってしまった…」


「……」



私は思い切ってヴィクター様に尋ねる事にした。



「ヴィクター様…アレクシス様は本当にご病気でお亡くなりになっているんでしょうか?」


「…どういう意味だ…?」



ヴィクター様が眉を顰める。



「もしかしてどこかで生きていらっしゃる…そんな可能性はないんでしょうか?」


「……っ!」



私の質問にヴィクター様の顔色がサッと変わった。


「急な病で亡くなったと聞きましたが、誰もご遺体の確認ができなかったと聞きました。なら、どこかで生きてる可能性だってあるんじゃ…むぐっ」


「バカ者っ!!そんな話、迂闊に口にするな…っ!!」



慌てて立ち上がったヴィクター様に羽交い絞めにされ、いきなり口を塞がれた。こんな冷静さを欠いたヴィクター様は今まで見た事がない。



その時、



「随分と楽しそうな話をされていますね。ヴィクター様」



静かな声が私たちの耳に飛びこんできた。


本日も最後まで読んでいただきありがとうございました。


次回118話は明日19時頃更新予定です。

どうぞよろしくお願いします(^^♪

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ