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115 私がアレンにできる事

「何が言いたいの…?」

「これはあくまで僕の推測ですが…」

「……」

「アレクシス殿下は実は生きていらっしゃるのではないでしょうか。それも僕たちの身近なところで…」

「ルーカス…」

「病で亡くなったというのは表向き、実は何者かによって連れ去られ亡き者にされるはずがすんでの所で勇敢な少女に救われていたのだとしたら…?」

「ルーカスッ!!」


ルーカスは私の顔を見つめたまま、静かに口を閉じた。 


「あなた…とんでもない事を口にしてるの、わかってる…?」

「わかっています……ですが、それが一番辻褄が合います。それにベアトリーチェ王妃がかん口令を敷いたというのも気になります。パイロン=アドラム宰相は三大公爵家にありながら、唯一の現王妃殿下派で有名な方ですし…。もし第一王子の死亡とアレンの事件にベアトリーチェ王妃が関わっているのだとしたら……」

「やめて…やめて…っ!」


こんなこと、もし誰かに聞かれでもしたら不敬罪で捉えられてもおかしくない。


「…少し…考えさせて」

「姉上……」

「ルーカス。あなたもそんな事、軽々しく口にしてはいけないわ。この件はもういいから…、一旦忘れて」

「まさかお一人で何かしようと考えているのではないですよね?」

「まさか…」


私は静かに首を振った。


「あなたの推測は話が大きすぎて…流石にすぐには飲み込めない…。月末には学園も休暇に入るからそれまでゆっくり考えてみる。帰ったらまた相談に乗ってちょうだい」

「それはもちろんかまいませんが…、くれぐれも無謀な事だけはしないでくださいね。とにかく表立って動かないように。約束ですよ」


ルーカスが私の頭を引き寄せた。


「僕にとって姉上よりも大切な存在はこの世にありませんので。それだけは心にとめておいて下さい」


そして、額にそっとキスを落とすとゆっくりと離れた。


「僕はこれで帰ります。姉上の元気そうな顔も見られましたし、補充もできました」

「補充…?」


ルーカスはもう一度私の額に、今度は長めにキスを落とすと、


「はい、補充です」


そう言って昔より少しだけ大人びた微笑みを私に向けた。








ルーカスが領地に戻り、私は寝床で一人、彼の話を反芻していた。


(アレンが……アレクシス殿下…)


そんな事、今まで考えた事もなかった。


(ううん…そんなはずない。だって直系の王族はブロンドヘアに緑色の瞳が特徴なんだもん。アレンの髪は緋色。それに瞳も蒼色だし…)


王族ではありえない特徴だ。


(でも…)


私はベレスフォード侯爵邸での事を思い出していた。あの夜、東屋で会ったアレンは確かにブロンドヘアだった。瞳の色は…どうだっただろう…。


(あの時アレンはウィッグだって言ってた。瞳の色は暗くてよくわからなかったけど、もしかしたら……)


ただエリオット殿下に似せるための変装だと思っていたあの姿が、本来のアレンの姿だとしたら…?

もしかしたら魔法の力でそれらを変える事は可能なんだろうか…。でもアレンは魔法なんて使えない。それに記憶がないんだから、たとえ王族だったとしても魔法が使えるなんて思うはずがない。


(……記憶)


浮かんだ疑念を即座に打ち消す。


(まさかね、そんな事あるはずない)


()()()()()()()()()()()なんて…そんな事あるわけない…。そもそもそんな嘘をアレンがつく必要なんてないはず。


(ほんとに…?ほんとにそう思う?もしアレンが王族だったとして、記憶が戻っていたとして…アレンは私に本当の事を話すだろうか…。もしルーカスの推測が真実だったとして、ベアトリーチェ王妃がアレンの事件に関わっていたとしたら…命を狙われているという事実を正直に私に話すだろうか…)


「アレンは絶対に私には言わないだろうな…」


彼はこれまでずっと私のことを命の恩人だと言ってくれている。だから片時も離れず私の傍にいて支えてくれていた。私を危険に巻き込むような事は何があってもしないだろう。


(そもそも、なんで現王妃が第一王子の命を脅かすような真似をしなきゃならないの?義理とはいえ自分の息子でしょ?しかもたった8歳の子どもにそんなことする理由なんて……)


「…ないこともない…か」


現王妃にはたった一人だけ自分のお腹を痛めて産んだ王子がいる。王位継承順は第二位の第三王子。年は確か9歳か10歳。もし、王妃が自分の子どもを王位につけたいと考えれば、優秀だった第一王子は邪魔な存在でしかなかったはず…。


「ああもう複雑すぎ…。ちっとも考えがまとまんない…。今日はもう寝られないな…」


私は手を伸ばし、カーテンを開けた。冬の澄んだ空気の中、白く輝く三日月がぽっかりと浮かんでいる。


「私にできる事ってなんだろう…。アレンのために私がしてあげられる事ってあるのかな…」




本日も最後まで読んでいただきありがとうございました。


2020年最後の日です。

今年の前半はまさか自分で小説を書こうとは夢にも思っていませんでした。

既に4カ月、続けられている事が自分でも信じられません。

これもひとえに読んでいただける皆様のおかげだと思っています。

ありがとうございました(*^_^*)


来年も元日19時より更新予定です。

引き続きどうぞよろしくお願いします(^^♪



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