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114 私とルーカスの情報 2

続きでヤンス☆

「このカフスの紋章は、当時ダンフォード男爵が使用していた図案だという事が分かりました」

「ダンフォード男爵…。ん…?当時…?」

「ええ、今は領地を与えられ伯爵を名乗っています。当主はディケンズ=ダンフォード。爵位が上がったので紋章の図案が大幅に変わっていて調べるのに時間がかかりました」

「そうなんだ。ごめんね、あなただって忙しいのに…」

「いえ…姉上のお役に立てるのなら、いくらだって手間は惜しみませんよ」


ルーカスは私をソファまでエスコートすると自分も向かいに腰を下ろした。


「ディケンズは平民出身の文官でしたが、仕事ぶりを認められ男爵位を与えられたようです。当時の上司はドーソン侯爵。現宰相の右腕として手腕を振るうベレスフォード侯爵家の現当主です」

「ベレスフォード侯爵家って…」


カリスタの養父じゃない…。


「当時の上司って事は今は違うの?」

「伯爵位を授かって以降、ディケンズ=ダンフォードは宰相のパイロン=アドラムの直属の配下となっています」

「アドラム家って三大公爵家の一つ、土魔力の家門よね?宰相って事は王様の次に偉い人って事…?」

「まあ、政治の上ではそうなりますね」

「……どういうこと?」


9年前、アレンの事件に関わっていたと思われる、当時男爵だったディケンズ=ダンフォードはベレスフォード侯爵の部下だった。その男爵がその後陞爵(しょうしゃく)し伯爵位を授かり、宰相の直属の部下になっている…?


「ダンフォード男爵はどんな理由で陞爵したの?」

「公には『王妃の命を救った英雄』という事になってるみたいだけど、詳細は誰も知りません。僕もだいぶ聞いて回ってみたけど…」


ルーカスは着ていたジャケットを脱ぐと左腕をまくってみせた。


「…ルーカスッ…」

「いきなり襲われました。顔を隠していたからどこの誰かはわからないけど」


ルーカスの腕には大きく切られた跡があった。


「……ごめんなさい!私があなたを巻き込んでしまったから…」

「いえ、それはいいんです。それより男爵の陞爵の理由はわからなかったけど、時期はわかりましたよ」

「いつ?!」

「……9年前です」




……9年前。


「ディケンズ伯爵の陞爵とアレンの事件…関係ないとは思えないわね」

「……」

「ルーカス?」


真剣な顔で私を見つめるルーカスと目が合った。


「姉上…。この件には、これ以上首を突っ込まないでください」

「ルーカス…」

「これだけの大物が名を連ねているんです。アレンには余程の秘密がある。正直僕たちの手に負える案件ではないように思います」


ルーカスがそっと私の手を握った。


「アレンの事は当然僕も大切に思っています。ですが、これ以上この件に関わればいずれ姉上にも危険が及ぶかもしれません。僕が襲われたのがいい例です。アレンの記憶は未だに戻っていないのでしょう?だったらこのまま、男爵家の従僕アレンとして姉上の傍にいてもらうのではいけないのでしょうか…?彼の幸せを現状から願う事はできませんか?」

「ルーカス…」


ルーカスの気持ちはよくわかる。でも…。


「…やっぱり私は、彼の過去を見つけてあげたい。もしつらい事ばかりだったんだとしたらその時は黙ってる。彼が傷つくことがしたいわけじゃないから。だけど、何か大変な事に巻き込まれてしまったんだとしたら、心を痛めている大切な人がいるかもしれない。私は捨て子で本当の両親は知らないけど、アレンにもし大切な人がいるのなら会わせてあげたい。それだけなの。危ない事をするつもりなんてこれっぽっちもないわ。だからそんなに心配しないで」

「……それが危ないんだって言ってるんだけど…」


ルーカスははあ、と大きくため息をついた。


「黙っていると姉上は余計な事に変な首の突っ込み方をしそうなので敢えてお伝えしますが…、いいですか?絶対に一人で無茶な事はしないでくださいね。絶対ですよ。約束ですからね!」


そんなに念を押さなくても大丈夫なのに…。私無茶なんてしたことないし。


「これはあくまで僕の推測ですので…鵜吞みにはしないでください」

「いいから話して」


ルーカスは一度大きく深呼吸をすると、重い口を開いた。


「9年前、アレンの事件以上に大きな事件があった事を姉上は知っていますか?」

「9年前の事件…」


それって…、


「当時の王太子殿下が急病で亡くなった事?」

「はい、当時の王太子は第一王子のアレクシス様でした。王子の年齢は当時8歳。ちょうど…アレンと同い年です」


確かに…。


「当時、アレクシス様に持病のような病気は一切なかった。それがいきなり病で急死。しかも葬儀は密葬。ご妹弟様たちでさえ最後の対面も叶わず、誰もがその死に疑いを持ったそうです」


それはエリオット殿下からも聞いている。


「ところがその疑問の声はすぐに収まった」

「なんで?」

「王妃殿下ベアトリーチェ様が『この件に言及した者は処罰する』と布令を出されたそうです」

「王妃殿下が…?」

「しかも声高に騒いでいた者たちは人知れず姿を消したとか…」

「……っ!」

「あくまで噂です…、が、その後すぐに実妹のクローディア様も療養のためハリエット領に行かれ、まだ幼かったエリオット殿下ただ一人王宮に残りました」

「……何が言いたいの?」


私は自分の胸がドキドキと早鐘を打つのを感じていた。




本日も最後まで読んでいただきありがとうございました。


次回115話は明日19時頃の更新となります。

今年も明日で終わりですね。気持ち的には年内に完結するつもりで書いていましたが

終わりませんでした(笑)

今しばらくお付き合いくださいませ。

明日もどうぞよろしくお願いします('◇')ゞ

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