110 私と取り巻きたちの攻防
メリークリスマスイブ☆ですね(*^_^*)
「なんのおつもり?アンネローゼ様はあなたに近づかないように忠告したはずでしょ?」
私の前に腕組みをして立ちはだかる黄色リボンことミッシェルに阻まれ、私はアンネローゼ様に近づけずにいる。
アレンに教えてもらった通りカフェに急行すると、ちょうど彼女たち一行が二階から降りてくるところだった。
(ナイスタイミング!!)
そう思ってダメ元で話しかけた私の前に立ちはだかるミッシェルとその仲間A~Fとの間ににらみ合いが続くこと数分、現在に至る…。
「えっと…、この間はちゃんとお話ができなかったので…もしよろしければ少しお話しできないかなと思いまして…」
アンネローゼ様の姿が見えるよう、私はミッシェルを避け一歩右手に移動する。彼女は先日と同様に顔の前に扇を当て、無言で立っている。隙間から垣間見える顔はやはり白塗り厚化粧。ここまで漂うオリエンタルな香りに今日も鼻がむずむずする。
「アンネローゼ様はあなたとはお話にならないわ。さっさと教室に戻りなさい」
するとミッシェルと仲間たちも同じように移動し再び私の前に立ちはだかる。またアンネローゼ様の姿が見えなくなった。
「先日は一方的に近づくなと言われてしまいましたが、弁解も許されないまま嫌われてしまうのは納得いきません。一度お話しする機会を作って頂けたらと思ったのですがだめでしょうか?」
「ダメに決まってるでしょ!!何なの、あなた…図々しくてよ!」
ヒステリックに声を上げるミッシェルに辟易しつつ、なるべく視界に入れないように努める。
「あの、私はアンネローゼ様に話してるんですが…ちょっと黙っててもらえますか?あと、ちょっとでいいのでどいてください。邪魔です」
その場から再び二歩左に。彼女が見える位置まで移動する。そこでようやく目が合った。
「あ…あなた!!私は伯爵家の令嬢なのよっ!!そんな私に対して邪魔だなんて…っ!!なんて無礼なのっ?!」
声を荒げながら再び移動して私の前に立ちはだかるミッシェル、とその仲間たち。
「ええ。あなたが伯爵令嬢なのは知ってます。先日伺いましたので…。何度も教えていただかなくても覚えているから安心してください。ですが、今私が話したいのはあなたではなくアンネローゼ様なので。あと…うるさいです」
右に左に……。
移動する度、前に立たれ若干イライラする。
(何このカバディみたいな攻防……!)
「うるさいですって!!たかが男爵家の令嬢ごときが伯爵令嬢の子女である私に向かってうるさいって…っ!許せませんわ!謝りなさい!!」
「あの!!よくわからないんですが…なぜミッシェルさんがアンネローゼ様の言葉を代弁するのでしょう?アンネローゼ様は口がきけないわけではないでしょう?こんなに近いんですから聞こえてますよね?アンネローゼ様」
私はミッシェルの肩にガシッと両手をかけると、肩越しにアンネローゼ様に向かって声をかけた。
「なっ?!何なのよ、あなた!!」
とっさに払いのけようとしたミッシェルの長い爪が私の頬をかすめた。
「あっ」
意外な事に、声を上げたのはアンネローゼ様だった。
彼女はパチンと扇を閉じると速足で私の前まで歩み寄り、その頬にそっと触れた。
(多分)心配そうに私の顔を見つめている。
「ア、アンネローゼ様…?」
傷は大したことはなく、おそらくミミズばれ程度だろう。若干ヒリヒリするくらいで触った感じ切れてる様子もない。
「手当を…」
「あ、いえ…そんな大層な傷ではありませんから…」
「あなたに決める権利はないわ。私が手当をすると言ってるのだから素直に言う事を聞きなさい」
「……は、い」
厚化粧の顔で睨まれた。ような気がした。
(化粧のせいで表情が読みにくい…)
アンネローゼ様は私の手をグイッと引っ張ると、二階に続く階段に足をかけた。
「ア、アンネローゼ様!!彼女をどこに連れいくおつもりですか?!」
慌てたようにミッシェルが声をかける。
「サロンへ…」
「おやめください!!そこへは私たちだけが出入りを許されているはずでしょう!!私たちよりもそんな女の方が大事だとおっしゃるのですか!!」
その言葉に一瞬アンネローゼ様が足を止めた。でも再び私の手をギュッと握ると彼女は何も言わず、再び階段を上り始めた。背中越しにミッシェルの喚き散らす声が聞こえる。それはサロンと呼ばれる部屋のドアを閉めるまで響き続けた。
本日も最後まで読んでいただきありがとうございました。
今日は少し短めでした。
明日はちょっと時間を繰り上げて18時頃更新させて頂きたいと思っています。
1時間ほど早いので移動時間のお供に是非お楽しみくださいませ。
明日もどうぞよろしくお願いします('◇')ゞ




