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107 私と彼女と殿下の証言 1

「えっ!食べるんですか?!」


殿下の予想外の行動に思わず大きな声が出た。


「え?だって勧めたのは君でしょ?」

「そ、そうですが……。お毒味役もいらっしゃらないのに、ダメでしょう…」

「うんダメだね。でもステラの作ったものなら大丈夫でしょ?あ、何なら君がまず一口食べてみればいいよ」


(…食べますよ。だってこれ私のお昼ご飯だもん。っていうかいつの間にかステラ呼びになってる)


私はニョッキを一つ、ソースごとすくいあげるとそのまま、あむっと口に運んだ。

普通のパスタと違い柔らかい食感がたまらない。気持ち大きめに作ったのでもちもちと食べ応えもある。


(ソースもチーズを入れたからニョッキによく絡んですごくおいしい。ああ、幸せ…)


もぐもぐと幸せをかみしめていると、ニコニコと微笑みながら私を見ている殿下と目が合った。


「本当においしそうに食べるね。幸せ?」


殿下が問う。

私はブンブンと縦に首を振って答えた。


「……じゃあ、僕にも幸せを分けてもらおうかな」


そして再びあーんと大きく口を開ける。


「早く食べさせて」


この流れって…、


「私が食べさせるんですか…?」

「だって…スプーンを持ってるのはステラだし…」

「お、お貸ししますからっ!ご自分で好きなだけ召し上がってください!!」


そういうイチャイチャシチュエーションに流されると痛い目に遭う…。私だってこの数カ月でちゃんと学習した。誰もいないからといって油断してはいけない。壁に耳あり障子に目あり。どこで誰が見ているかわからないんだから。油断してると尾ひれがついた噂が伝言ゲームのようにあらぬ方向に転がっていく。


私は持ったスプーンとポットを殿下の前に押しやる。殿下は小さく息を吐くと仕方なさそうにスプーンに手を伸ばした。そして…、


「えっ?ちょっと何を…っ」


殿下はガシッと私の手とスプーンを一緒つかむ。慌てて手を引こうとしたけど予想外の力強さに負けてスプーンがポットの中に沈む。掬い上げたニョッキを殿下はあーんと口を開けてそのまま口に運んだ。ようやく放してくれた手を慌てて引っ込める。


(な、なんてことを…)


慌てて辺りを見渡す。誰も見てないことを祈る。


(確かローレンス様にも同じ事をされたような気がする)


学習能力の他に予測力も身につける必要があったことを改めて痛感した。


「わっ、すごくもちもちしてる。これがじゃがいもで出来てるなんて信じられないね。イモなんてボソボソしてるイメージしかないよ」


そりゃ冷たいおイモなんておいしくないに決まってる。ジャガイモは茹でたて焼きたて蒸したてに限る。ポテトサラダは別だけどね。


「よろしかったら全部食べて頂いて構いませんよ?」


ホントはよろしくないけど。でも私はいつでも食べられるからね。こういう時にしか温かい物が食べられないんだったらお腹いっぱい食べさせてあげたい。もうこれっておかんの発想じゃない?


殿下は私の顔をじっと見ると、ポットの中のニョッキを2つほど掬い上げひょいひょいっと口に放り込むと残りを私に返してくれた。


「ありがとう。おいしかった」

「もういいんですか?」

「うん、これ以上取っちゃうとステラのお腹の虫に恨まれそうだし」

「そ、そんなことは…っ」


ぎゅるるる…。


「ははっ、返事した」


(主人に断りもなく勝手に会話に参加するなんて……っ。なんてしつけがなってないの)


私はお腹を押さえて「申し訳ありません…」と小さく謝罪した。


「これもアンネローゼに食べさせてあげたかったなぁ」



アンネローゼ様…。


不意に殿下の口から出た名前に先日の出来事を思い出す。


「彼女、君の話をしたらすごく会いたがってたんだよ。スープの話もすごく羨ましがっててね。よかったら今度連れてきてもいいかな?」

「……」


(なんと答えたら正解なんだろうか…)


実は先日お会いして殿下には近づくなと釘を刺されました、と正直に伝えられる程天真爛漫な性格ではない。かといっていいですよ、と二つ返事でOKしたところで再び絡まれることは必至だ。

そんなことを考えながらうんうん唸っていると、


「あれ?ごめん、嫌だった?」


と殿下に謝られてしまった。


「い、いえ…。そういう訳ではありませんが…」


アンネローゼ様については情報が少なすぎる。ここはちょっとだけ探りを入れさせてもらおう。


「あの…アンネローゼ様ってどんな方なのでしょうか?」

「アンネローゼ?僕の婚約者だよ」


ニコニコとそう答えられた。うん、それはもう存じております。


「私はアンネローゼ様の事をよく存じませんので…。ご容姿とか性格とか…殿下からご覧になったアンネローゼ様を教えて頂けたらと思いまして…」

「僕から見たアンネローゼか…。うーん…」


殿下は腕を組んでうなり始めた。


本日も最後まで読んでいただきありがとうございました。

ブックマーク登録もありがとうございます。

100話を超えましたので無理のないようにお読みいただければと思います。


次回更新は水曜日です。

お待たせして申し訳ありませんがどうぞよろしくお願いします。


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