レオと一緒に見張りをしました
反論しようとするクレアさんを、セバスチャンさんは止める。
確かにクレアさんの気持ちもわかるし、俺も同じような考えで見張りを申し出た。
けど、クレアさんが疲れているのは誰が見ても明らかだし、そもそもこの森の探索はクレアさんが言い始めた事だ。
クレアさんが動けなくなるようなら、屋敷に戻って休息を取らないといけないだろう。
クレアさんの体力や安全を第一に考えてるからこそ、このセバスチャンさんの言葉なんだと思う。
「……わかったわ。今日はしっかり休んで明日に備える事にするわ」
「お願いします」
落ち込んだ様子で、クレアさんは見張りをするのを諦めた。
まぁ、後でフォローしておこうかな。
このままじゃセバスチャンさんとクレアさんの間で、険悪なムードになる可能性も有る。
セバスチャンさんは、クレアさんの事を大事にしてるのは俺が見てもわかる。
クレアさんもセバスチャンさんの事は信頼してるんだろうけど、この森に来ようとした時も含め、ここまで意見を反対されたら辛いだろう。
「……まぁ、俺にフォローが出来るかどうかはわからないけど……どうしたもんか」
どうフォローするのが正しいかと考えていた時、ライラさんから声がかかった。
「夕食が出来上がりましたよ。皆さん、どうぞ」
救いの声に聞こえたそれは、夕食が完成した事を伝える言葉だった。
皆、森の中を動き回ったり、野営の準備をしたりでお腹が空いてたのか、すぐに昼も使った木の皿を取り出してライラさんの所へ向かう。
……さっきあんなに厳しい事を言っていたセバスチャンさんも、落ち込んでいたクレアさんも一緒に並んで笑い合ってる……。
「あれ? 俺が心配してたのは?」
どうやら、俺が心配するまでも無く、クレアさんとセバスチャンさんはしっかり信頼し合っているようだ。
……考えるだけ損した気分だ……。
「ワフ?」
「ああ、レオ。今行くよ」
俺は考えるのを止めて、声を掛けてくれたレオと一緒に夕食を受け取りに行く。
結局、俺が心配する必要は無かったと思うくらい、夕食は和やかな雰囲気だった。
クレアさん、セバスチャンさんとオークの肉の品評とかしてるし……。
まぁ、雰囲気が悪くならないならそれで良いんだけどな。
オーク肉と野菜で、豚肉入りポトフのような物だ。
川辺にいるから少し空気が冷えてるが、ポトフで体がしっかり温まってくれた。
家庭的なホッとする料理で満足出来た。
「ライラさんの作った夕食、美味しかったですよ」
「美味しかったわ」
ライラさんは俺やクレアさんだけでなく、皆から美味しいと言われ、朗らかに微笑んでいた。
数時間後、皆がテントに入り俺とレオだけが焚き火の前で座っている。
見張り当番の開始だ。
ちなみにテントは二つ設営してあり、男性と女性が分かれて寝るようになってる。
「クレアお嬢様と同じテントでなんて……」
「良いから来るのよ」
「そうよ。私もいるから、お嬢様と二人じゃないんだからね」
ライラさんは使用人として、クレアさんと同じテントで寝るという事に躊躇してたけど、こんな機会は滅多に無いからとクレアさんとヨハンナさんの二人にテントの中へ引きずり込まれた。
楽しそうなクレアさんを見て、女子会でも開くのかなと思ったが、考えても仕方ない事なのでそのままにしておいた。
「俺が女子会に混じるわけじゃないからな……」
そう呟いてドナドナされて行くライラさんを見送った。
俺とレオ以外の皆がテントに入ってしばらく後、最初は何か動く音や話す声が聞こえていたが、やがて周りから焚き火の燃える音と川の流れる音、あとは遠くから虫が鳴く音くらいしか聞こえなくなった。
ふと気が付いたが、この世界に来てレオと俺以外の人がいないってのは珍しいな。
『雑草栽培』というギフトの事を考えてる事も多かったし、部屋では遊ぶかすぐに寝るかのどちらかだったしな。
……良い機会だ、レオに色々聞いてみよう。
「レオ、俺と一緒にこの世界に来たけど……良かったのか? 前の世界だと小さいままだが、それでも戦う事もない平和な所だ」
「ワウワウ、ワフーワウ」
俺の質問に、一度首を傾げてから答えるレオ。
えーと、レオの仕草と表情からすると……いつも一緒にいられるからこっちの方が好き……だと思う。
成る程……レオにとっては俺と一緒にいる事が重要なんだろう、以前は留守番ばかりさせてたからな。
……嬉しいね。
次は何を聞こうか……。
「いきなり体が大きくなったけど、何か不便は無いのか?」
「ワウーワフワフ。ワーウワウワフ」
えーと……何も無い。小さい時より動きやすくてこっちの方が良い。守れる事が嬉しい……かな。
体は特に不調は無いようだ。
人間だと、成長期に一気に身長が伸びたりして成長痛なんてのがあるが、それとは無縁のようだ。
まぁ、成長して大きくなったってわけじゃないんだろうけどな。
しかし、守れると言われるとちょっと情けない気もするが、ありがたい事でもあるな。
「そう言えばレオ、魔法が使えるんだよな」
「ワフ。ワウ?」
使ってみようか? と言ってるような表情で首を傾げてる。
「いやいや、今は使わなくて良いからな。何かがあった時に使ってくれ」
「ワフ……」
レオは頷いたが、少し気落ちしてる様子。
……使いたかったのか?
でもまぁ、今見せてもらうと皆を起こしてしまうかもしれないからな。
セバスチャンさんの説明では、魔力が無くなると命に関わるって言ってたし、無駄に使うのは止めておいた方が良いと思う。
レオの魔力がどれくらいあるかはわからないが……。
森から帰って余裕がある時にでも見せてもらおう。
……そういえば、セバスチャンさんの魔法の説明が途中だったな……俺も魔法を使ってみたいし、今度聞いてみないと。
「レオはどんな魔法が使えるんだ?」
「ワウ……ワウワフ?」
「だから今は使っちゃ駄目だぞ。使える魔法にどんな物があるのかだけ教えてくれ」
「ワフ……ウー……ワウワウワーウガウガウガフワフ」
やっぱりレオは魔法を使いたかったようだ。
俺と同じで、今まで使えなかったものが使えるようになったから、使ってみたいのかもしれないな。
レオは少し気落ちした様子を見せた後、俺に使える魔法を仕草と表情で教えてくれた。
えっと、何々……火が得意、水、風、土も操れる……あとは……その他色々……って、色々じゃわかんないな。
というか俺、大分レオの言いたい事が詳しくわかるようになって来たな。
相棒との意思疎通がスムーズになるのは良い事だなと納得しておいた。
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