エッケンハルトさんとセバスチャンさんにからかわれました
「タクミ殿、おかしなことを考えてはいないか?」
「え、いえ……おかしな事は特に……」
「くれぐれもだぞ、くれぐれも、ラクトスを壊滅させるような事はやめてくれ?」
「いえ、さすがにそんな事は考えませんよ。ラクトスの街は好きですからね」
俺が考え込むのを見て、何を心配したのか、エッケンハルトさんが焦る。
けど、俺が初めてこの世界に来て、初めて行った街だ。
ラクトスの人達は基本的に、レオの事を必要以上に恐れたり、忌避したりはしなかった。
多少、好奇の視線はあっただろうが、あれだけ大きなレオなのだから仕方ない。
薬草や病に関する事件はあったが、そもそもにあの街に住む人達は優しい感じがする。
ランジ村もそうだが、これは公爵家の人達が圧政を敷いたりしていないためなのかもしれない。
それはともかく、さすがに好きな街を壊滅させようなんて考えたりはしない。
そもそも、レオにそんな事ができるかわからないし、させたくもないしな。
「……レオ様にラクトスが壊滅させられる事を考えると、ディームを捕まえて、一斉蜂起させた方が対処は楽だな」
「そうですな。数も多くないので、前もって準備をしていれば、鎮圧は難しくありません。まぁ、民に被害は出るでしょうが……」
「それでも、ラクトス一つと比べたら少ないだろう?」
「はい」
「いやいや、だからそんな事しませんし、させませんって。物騒な事を考え過ぎですよ?」
真剣にセバスチャンさんと相談し始めた、エッケンハルトさんを止める。
さすがに、そんな事をする気はないからな。
というか、そこまでやってしまうと、公爵家そのものも危うくなるだろうし、俺やレオも危うい。
むしろディームより酷い存在になってしまうじゃないか。
国から危険人物扱いされたり、敵に回したりするような度胸もないぞ。
「いやいや、わからんぞ? 身内を標的にされた者は、思わぬ反発をするからな。タクミ殿が怒り狂えば、レオ様も同様の事になるだろう。そうなった時、止められる者はいない」
「例えばですが、クレアお嬢様やティルラお嬢様が、何者かに狙われ、危険に晒された。それも、相手側の勝手な理由で……と考えると、旦那様は軍を動かすでしょう。もしかすると、国も動かしてしまうかもしれません。もちろん、私共も黙ってはいられないでしょう」
「まぁ、確かにそうなった場合は、俺も一緒に狙った相手の敵になるでしょうけど……さすがに今回はそんな事態ではないでしょう? 大丈夫ですよ」
「……本当だろうか……」
リーザのみならず、クレアさんやティルラちゃんといった、俺がお世話になっている人が危険に晒されるような事があれば、エッケンハルトさんだけでなく、俺やレオも怒るだろうけどな。
セバスチャンさんの言うように、そうなったら俺だけでなく大勢の人が動くだろうから、例として正しいのかどうか……。
クレアさんだけでなく、公爵家そのもの……エッケンハルトさんが標的にされたとしたら……まぁ、この人は大丈夫か、自分でなんとかしそうだ。
なんて、どうでもいい事を考えつつ、今回の件をこの先どうするか考えながら、屋敷へと戻った。
丁度、ゲルダさんが夕食の支度が整ったと、呼びに来てくれたからな。
ちなみに、ラクトスを壊滅云々の話だが、エッケンハルトさんもセバスチャンさんも、口元が笑いながら話していたので、ほとんど冗談のつもりで言っていたんだろう。
スラムの人間をまとめるために、普通の人間とは違うリーザを標的にしたという事に、からかうようにして俺の気持ちを軽くさせようと考えたのかもしれない。
レオは確かに強いし、最強と言われるシルバーフェンリルだが、さすがに街一つ壊滅させたりなんてできないだろうから、冗談なのは当たり前か。
……壊滅、できないよな……レオ?
「それでは」
「はい、お願いします。リーザ、ちゃんと綺麗になって来るんだぞ?」
「うん、わかったー!」
「ワフワフ」
夕食時に、軽くクレアさん達にさっきまでの事を説明し、食後の休憩の後にいつもの鍛錬を終えて部屋へ戻る。
リーザのいる所で詳しい話はあまりしたくなかったので、それとなく伝えるだけだったが、後でセバスチャンさんに詳しく聞いてる事だろう。
部屋に戻った後、ライラさんがリーザを風呂に連れて行くのを見送る。
俺やエッケンハルトさんがマルク君と話している間に、リーザはレオやティルラちゃん、シェリーと一緒に、土の上をゴロゴロする遊びをしていたから、全身が汚れていた。
なんでも、シェリーのために受け身の練習をしていたらしいが、ほとんど転げまわっているだけだったそうだ。
レオはそれを監督する役だったらしい。
フェンリルであるシェリーに、受け身とかが必要なのかはわからないが、皆が楽しそうだったとの事だ。
遠慮のなくなってきたリーザが、ティルラちゃんと一緒に泥だらけになって遊んでいるというのは、何とも嬉しいものだと、エッケンハルトさんと頷きながら実感した。
汚れは、後で洗い流せばいいしな……メイドさん達には悪いが。
一応、食事前に軽く汚れは落としたようだが、全てではないし、裏庭を走って汗だくになってたから、今日は念入りに体を洗うよう、風呂に向かうリーザに言い聞かせておいた。
さて、リーザもいなくなったし、レオにはマルク君との事を話しておかないとな。
詳しい話を聞きたいのか、食事中もチラチラとこちらを見ていたし……いつも食べ物に夢中なレオが珍しい。
「ワフ」
「はいはい、ちゃんと話すよ。えっとな……」
リーザがいなくなった事を確認したすぐに後、レオが俺に顔を向けて急かすように鳴く。
それに答えて、マルク君の話とディームの話をする。
全てをレオに伝える必要があるか……なんて考えも浮かんだが、この世界に一緒に来た相棒だ。
情報はできる限り共有しておくべきだ思う。
それに、食事中も考えていた事を実行するのに、レオの協力は不可欠だからな。
「という事で、黒幕というか……裏で指示していたのは、そのディームって奴らしい。石を投げろと、直接には言ってないみたいだけどな。マルク君に何も罪はないとは言わないが……まぁ、そっちはエッケンハルトさんに任せる事にするよ」
「ワフ。……ワフ?」
「ははは、さすがレオだ。俺の考えてる事がわかるか?」
「ワフ!」
説明を聞いた後、レオが頷いて、それだけじゃないんでしょ? と聞くように首を傾げて鳴いた。
付き合いが長いだけあって、俺が考えてる事がわかるみたいだ。
さすがに、全部お見通しとか、頭の中が丸見えというわけじゃないだろう……ないよね?
読んで下さった方、皆様に感謝を。
別作品も連載投稿しております。
作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。
面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はページ下部から評価の方をお願いします。
また、ブックマークも是非お願い致します。







