雇用できる人の中には屋敷の使用人さん達もいました
「あの、クレアさん。俺に何か?」
「い、いえ……なんでもありません」
「そうですか?」
「ぷっ……くくく……」
あまりにも俺の事を見ているので、意を決してクレアさんに聞いた。
クレアさんは、一瞬だけはっとなった後、俺から視線を外した。
そんな俺とクレアさんの様子を、エッケンハルトさんが声を潜めて、面白そうに笑いを堪えてたのが気になる……。
まぁ、とりあえず今は、リストを見る事に集中しよう。
「……セバスチャンさん、何人か知っている名前があるんですけど?」
数枚の書類を見ているうちに、とある人物の名前を見つけた。
さらに他の書類にも、知っている人物の名前が書いてった。
俺に雇われる云々以前に、既に働いている人だが……どういう事なんだろう?
気になって、待機していたセバスチャンさんに質問した。
知っている人物名は、ミリナちゃん、ライラさん、ゲルダさん、ニコラさんだ。
「タクミ様に渡したリストの中で、半数以上は現在屋敷で働いている者達になります。ラクトスを含めた周辺の地域でも探していますが、そちらのリストが来るのはもう少し先でしょう」
「いや、周辺の人達の情報が遅いのはわかりますが……何故、この屋敷の人達が? いいんですか?」
セバスチャンさんが言うには、リストにはやっぱり屋敷の人達の事も含まれているらしい。
半数以上という事だから、俺が見た他の人達の中にも、名前を知らないだけで屋敷内で働く人がいたのだろう。
ミリナちゃんは、昨日のうちに話したから、いてもおかしくないとは思うが……屋敷の人達をそのまま俺が雇うという事でもいいのだろうか?
「さすがに、リストの人物全て……となると、考え直してもらう必要はあるでしょう。ですが、本人達に確認したところ、タクミ様の所でしたら……と答える者が多くいましてな」
「はぁ……でも、屋敷の方はそれでいいんですか? せっかく雇った使用人さん達なのに……」
「それは構いません。公爵家で雇う人物を精査しているので、足りなくなった場合は、別で雇えば良いのです。孤児院の方もありますからな」
もし俺が引き抜きのような形で、リストにある人達を雇う事になっても、今他に募集して精査している人達をついでに雇えば、屋敷の方でも人員を補充できるという事だろう。
俺だけのために雇う人を見ているわけではないのは、さすがセバスチャンさんといったところか……強かだ。
「それに、現在はタクミ様やアンネ様等のお客様がいますし、旦那様がいるので良いのですが……これでタクミ様がランジ村へ、アンネ様や旦那様が屋敷からいなくなると、使用人の数が多いですからな」
「この機会に、孤児院や職を求める人達を雇う事を考えたんです。タクミさんの話がなければ、新しく雇う事は中々……」
「そうなんですね、わかりました。それじゃ、この中から選んでも?」
「リストに入ってる者達は、自分から名乗り出た者や、私共が聞いて了承した者と様々ですが……皆、タクミ様に雇われる事に納得しております」
セバスチャンの説明では、今は丁度いいくらいの使用人の数でも、このまま話が滞りなく進めば、俺やレオがランジ村に行く事になる。
さらにエッケンハルトさんは、いずれ本邸に帰らないといけないだろうし、その場合は、教育を任されたアンネさんを連れて行く事になるだろう。
そうなると、屋敷が使用人過多になってしまうと。
さらにクレアさんが、新しく孤児院等から人を雇う事も考えていると、補足してくれた。
孤児院は今、人が溢れてる状態だから、働けるのならすぐにでも人を出したい状況だろうし。
元々、この屋敷での使用人が多いというのは、そういう状況を見て雇っていたからなのかもな。
セバスチャンにも改めて確認したが、リストの人物は全員納得してるらしい。
それなら少しは気が楽だ。
俺が人を雇って、ちゃんとできるかはわからないが……全く知らない人達を雇ってという事にはならないからな。
それに、元から公爵家であるこの屋敷で働いていただけあって、信用もできるしな。
特に、見知っているライラさんをはじめ、ゲルダさんやニコラさんもそうだ。
人を雇うと決まって、不安に思う部分が多くあったが、知り合いを雇える事になって安心している自分がいる。
どれだけの人員を雇うかどうか、まだ決めていないしわからないが、孤児院と聞いてそちらからも選択肢があるのかと思い浮かんだ。
絶対、屋敷の方で雇わないといけないわけでもないし、俺も何か助けになれたらと思うしな。
ミリナちゃんの例もあるから、許可さえ取れば問題ないだろう。
「それじゃ、部屋に戻った時にでもじっくり見させてもらいます」
「今、全て見ないのか?」
「人が関わる事ですからね。できるだけしっかり、目を通しておきたいんです。それなら、部屋で集中してみる事にしようかと」
「そうか。……残念だったな、クレア?」
「……お父様、何を言っているのですか? 私は何も……タクミさんが、部屋で良く見てみたいと考えるのであれば、その通りにした方がいいと思います」
「そうかそうか……くくく……今にも自分から言いたいだろうに……」
「お父様!」
「おっと、これ以上は危ういな。それではタクミ殿、雇いたいという人物がいたら、教えてくれ」
「は、はぁ……わかりました」
リストを見るのを止め、テーブルに置いて部屋に戻ってから見る事にする。
ここで見てもいいんだが、妙にクレアさんが気にしているのと、エッケンハルトさんの面白そうな表情が気になる。
集中できないというわけじゃないが、部屋に戻って落ち着いて考えたいというのが本音だ。
聞きたい事なんかが出て来たら、後でセバスチャンさんとかに聞けばいいだろうしな。
部屋で見るという俺の言葉を受けて、何故かクレアさんに声をかけるエッケンハルトさん。
クレアさんはそれに焦った様子だが、さらにエッケンハルトさんが面白そうな表情をする。
笑っているエッケンハルトさんに、クレアさんは怒ったように声を荒げるが、すぐに引いたエッケンハルトさんがこちらに顔を向けた。
俺には、このやり取りがなんなのかはわからないが、聞いても教えてくれなさそうだったので、頭の片隅に追いやる事にした。
……エッケンハルトさんのように、クレアさんから怒られたくないからなぁ。
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