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異世界転移したら飼っていた犬が最強になりました~最強と言われるシルバーフェンリルと俺がギフトで異世界暮らしを始めたら~【Web版】  作者: 龍央


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2009/2012

クレアとリルルの活躍



「ガァ!」

「ガァゥ!」

「……っ! 止められるか!?」

「グルァ! グルルル……グラァゥ!」


 苦しむような吠え声を上げつつ、村へと走るフェンリルへとグングン距離を詰める中、村の北側にある家に近付いていた。

 願うような気持ちで、乗せてくれているフェンリルに向かって叫ぶと、それに応えて何かの力を溜めるように唸った後、暴れるフェンリルの向こう側にそそり立つような氷の壁が出現。

 魔法を使ったらしい。


「ガッ!」

「ガァッ!」


 突然現れた氷の壁に、止まる事ができないフェンリルの二体が激突。

 その間に、俺を乗せたフェンリルが近くまで移動してくれる。

 良かった……近くまで来てわかったが、氷の壁は家のすぐ近く、一メートルも離れていない。

 もう少し発動が遅かったら、家に激突していて、破壊してしまっていたかもしれない。


「ガァ! ガァゥ!」

「っ!?」


 安心したのも束の間、氷の壁に激突したフェンリルのうち一体が、こちらに向かって突進。

 苦しみから、とにかく近くにある目標物か、誰かに向かってしまうんだろう。

 それは、フェンリルを苛む苦しみから解放してくれと、全身で叫んでいるようでもあった。


「グルァ!」

「ガァ!」

「ぐっ! つぅっ……!」 


 俺を乗せたフェンリルが、突進してきたフェンリルを受け止め、もつれ合う。

 フェンリルの背中から投げ出された俺は、背中から地面に落ちて息を詰まらせた。

 さすがに、レオとは違って簡単に受け止めるなんて事はできないから、仕方ないか。

 バタバタと、もつれ合うフェンリル二体のうち、俺を乗せてくれていた方から申し訳なさそうな鳴き声と視線がこちらに向けられるが、おかげで間に合ったから気にしないで欲しい。


「ガァゥ、ガァガァゥ!」

「あっちは任せるとして、俺はこっちを止めないと……!」


 もつれ合っているから、氷漬けにして抑え込むのは難しいようなので、あちらは任せる事にする。

 俺が乱入しても、下手したら潰されるだけだからな。

 それに、まだ抑えないといけないフェンリルはもう一体いる。

 そちらは、氷の壁にぶつかる場所が悪かったのか、少しフラフラしている様子だが、また再び走り出そうとしているようでもあった。


「さっきはギリギリって言ったし、無茶をしないようエルケリッヒさんからも言われたけど……この場でやれるのは俺だけだから、仕方ない……よな!」


 再び氷の壁にフェンリルが突進したら壊れそうだし、他の方に走られても困る。

 俺に向かって来られても受け止める術すらない。

 無計画で追いかけてきたから当然だが。


 なんにせよ、残ったフェンリルを止められるのは俺しかいない。

 魔力の消費、『雑草栽培』の使用で、色々と限界が近い事を自覚しつつも、唯一暴れるフェンリルを拘束し、とめられる手段をもう一度使わせてもらった――。



―――――――――


「リーザちゃん達は右のフェンリルをお願い! ティルラとラーレは上から、危なそうな所を見て! リルル、私達は左よ!」

「わかったー!」

「キャウ!」

「ガゥ!」

「わかりました!」

「キィ!」

「ガァゥ!」


 タクミさんとレオ様を見送り、皆に指示を飛ばしながら暴れるフェンリル達の対処。

 タクミさんのように上手くできているかわからないけれど、フェンとリルルがいてくるのが心強いわ。


「ガァ……ガァゥ!」

「グラァ!?」


 散開した後、一体のフェンリルにリルルと向かう。

 リルルの放つ魔法に、全身の半分以上を氷にからめとられて動きを止められるフェンリル。

 驚く声を出したけど、次の瞬間には氷を割って再び動き出す。

 一時的には動きを止められても、完全にはいかなかったみたいね。


「グルァ!」

「っ!」

「クレア! ぬぅん!」

「グラァ!?」

「お父様!」


 私とリルルに狙いを定めた、というより、単純に動いた先にいたのが私達、と言った風だったけれど、とにかくこちらに向かってくるフェンリル。

 リルルが避けようとするも、私が乗っているせいか機敏に動けずぶつかりそうになった瞬間、横からお父様と数人の兵士が飛び込んできて、フェンリルが軌道を変えた。

 おかげで正面衝突は避けられたわ。


「気を付けろ! 無理をするんじゃない!」

「あ、ありがとうございます! けど、これくらいタクミさんと比べれば、無理じゃありません!」


 私を心配して言ってくれているのはわかるけど、タクミさんが頑張っているのに、私がただ守られておとなしくしているわけにはいかないという気持ちがある。

 一緒に頑張りたい、というのもあるけれど、それ以上に少しでもタクミさんの助けになりたいから。


「む、まぁタクミ殿はな……レオ様の協力はありがたいが、タクミ殿まで全力で追いかけなくても良かったとは思うが……来るぞ!」

「はい! リルル、今度はもっと強く、氷で固めて動きを止めて!」

「ガァゥ!」


 お父様と話している間にも、別の方向からフェンリルが駆けて来る。

 さっきは氷を割られてしまったけれど、今度はとリルルに声をかければ、頼もしい鳴き声が返って来る。


「ガァァゥゥ!!」

「ガフ!?」


 駆けて来るフェンリルは、強く吠えたリルルが発した魔法で全身を氷に包まれて、完全に動きを停止した。

 大丈夫かしら?


「動きが止まったのはいいけれど、無事なのかしら?」

「ガァ。ガァガァゥ」

「えーっと、大丈夫、なのよね?」

「ガァゥ」


 頷くリルル。

 シェリーやリーザちゃんとは離れているから、リルルが何を伝えたいのかはっきりとはわからないけれど、なんとなく大丈夫と言っている気がするわね。

 それでも心配になって氷に包まれたフェンリルをよく観察してみると、目を動かしたり、氷との隙間で身じろぎをするのが見えるから、確かに大丈夫と思えたわ。

 寒そうだけど……近い状態になっているのを、タクミさんと一緒にフェンリル達がじゃれ合っているのを見ている時に何度か見た事もあるしね。


「クレアお姉ちゃん!」

「キャゥ!」

「リーザちゃん、そっちは大丈夫?」

「うん!」


 フェンと共に戻って来るリーザちゃんとシェリー。

 私、というよりリルルがやったのと同じように、氷で包んでフェンリルの動きを止めて戻ってきたみたいね。


「キャゥー!」

「きゃっ! もうシェリー、突然飛び込んできたらびっくりするでしょ?」

「キャーウー?」


 フェンに乗っているシェリーが、私めがけて飛び込んでくるのを、なんとか受け止める。

 リルルが合わせて動いてくれたから、落ちなくて済んだけど、出会った時より成長しているシェリーが勢いよく飛んで来たからちょっと危なかったわ。

 注意すると、私を見上げて首を傾げるシェリー。

 こういう仕草が可愛くて、強く叱るのは躊躇ってしまうのだけど……シェリーはわかっていてやっている節があるので、心を鬼にしないと――というのは、今やる事じゃないかしら。


「ガゥ……」

「よしよし」


 シェリーが離れたフェンから、気落ちした鳴き声が聞こえて来る。

 リーザちゃんが背中を撫でて慰めているみたいね。


「キィー!」


 ラーレの方も、なんとかやっているみたいね。

 あちらは完全にフェンリルを止める事は出来ていなくても、体当たりされそうになった兵士を助けたり、その前にフェンリルを掴み上げているわ。

 ティルラの言う事をよく聞いているみたい――細かな指示は、その後ろに乗っているヨハンナによるものだと思うけれど。


「クレア、氷の魔法に捕らわれた後のフェンリルは、動きが鈍っているようだ。怪我をしているわけではないようだが……」


 怪我はしていないけど、フェンやリルルの魔法で氷に包まれたフェンリル達。

 しばらくすると、内側から割られてまた暴れ始めるのだけど、明らかにその前よりも走る速度などの動きが鈍い。

 体力を消耗している、というより別の何かが原因のような気がするわね。

 それでも、抑え込もうとする兵士達が十人単位でかかっても、体を震わせるだけで簡単に払われているけれど。


「そうみたいですね。何度か続ければ、止まってくれると思います」


 一度でそうなるなら、二度三度と続ければ、もっと動きが鈍くなり、いずれ止まるか抑え込めるようになるかもしれない。


 もしくは、氷から抜け出せなくなるか……氷に包んだままというのは、続けたくないけど。

 そう考えてお父様と話す私に、リルルが伝える。


「ガァゥ、ガァガァゥ!」

「キャゥー。キャゥキャゥ」

「……そういう事なのね」


 シェリーを通してリルルが言うには、同じ質の魔力で包まれておかしくなった魔力――暴れているフェンリルの体内魔力が、少しだけ落ち着くって事みたい。

 どうしてフェンリルが暴れているのかとか、詳しい事は聞いていないからわからないけれど、どうやら魔力が乱れて苦しみながらフェンリル達が暴れているらしいわ。

 魔力が乱れると言えば、カナンビスの薬だけれど……タクミさんが備えとしてサニタ―ティムを作って使用させているはずだから、それとは違うのかしら?

 もしかしたら別の何かかもしれないけど、とにかくレオ様やタクミさん、お父様もだけれど、できるだけフェンリルを傷つけずに止めようとしているのは見ればわかる。


 フェンやリルルもそうしたいみたいだし、私もいくら暴れているとしてもフェンリル達が傷つくのは嫌。

 そもそも、フェリーとフェンの模擬戦を見れば、暴れているフェンリル達も全力でというわけでもないみたい。

 リルルが言うには、苦しんで暴れているという事みたいだから、本意じゃないようだし。

 私から見ても、いえ私の目を通して見る限りでは苦しいという以外にも、助けて欲しいと感じているように見えるし、苦しみから逃れようとして暴れてしまい、誰かにぶつかってしまった時は申し訳なさそうな気持ちも垣間見えるのだけれど。


「リルル、さっきのような魔法を何度かやってもらう事になるけれど、出来るかしら?」

「ガァゥ!」

「キャゥ」


 私が声をかけると、リルルだけでなくシェリーも意気込みを感じさせる鳴き声を上げた。

 シェリーはやらなくていいのだけど、やる気があるのはいい事よね。

 今までリルル達のような魔法を、一度だって使った事がないからできるかどうかすらわからないけれど。


「何か、考えがありそうだな?」

「はい。できるかどうかわかりませんが……フェンリル達はただ暴れたいから暴れているわけではないはずです」

「うむ。理由は私にもわからんが、急にこうなった。まぁトレンツァが何かしたのだろうし、そういう素振りと話をしていた。タクミ殿とユート閣下は理解して、フェンリル達をできる限り傷つけずに止めようとしているようだったな。ユート閣下は、色々とあれだったが」

「やはりそうですか」


 多くのフェンリルと関わって、今のように暴れるような事はなかった。

 それに、フェンリル達がそうしたくて暴れているようには見えなかったし、苦しんでいるというリルルの話と私が見て感じているのも同じ。

 タクミさんもそうしようとしていたようだし、それなら少しずつ動きを鈍らせて、抑え込むのがいいと思うわ。


「ここは、クレアのお手並み拝見と行こうか。幸い、兵達への被害も軽微だ。多少の怪我はしているだろうが、ぶつかって飛ばされる程度だからな。まぁ、当たりどころが悪ければその限りではないが、何、フェンリルからの体当たりというのも、模擬戦で皆慣れている」


 この時のために模擬戦をしていたわけではないと思うけれど、お父様の言う通り、フェンリルの体当たりで弾き飛ばされた兵も、すぐに立ち上がっているから酷い怪我というのは今のところなさそうよね。


「わかりました。お父様、少し離れていて下さい。兵への指示は、状況を見て適宜お願いします」

「うむ、わかった。任せたぞ」

「はい」


 頷くお父様は、急いで私達から離れていく。

 

「まずは、ラーレとティルラにも伝達しないと――」

「ガゥ!」

「フェンがやってくれるの?」

「ガゥガゥ!」


 空を飛んでいるラーレとティルラに、どうやって考えを伝えようか、と思っているとフェンが主張するように鳴いた。

 どうやら、声を届けてくれるみたいね。

 だったらと、フェンにラーレとティルラへの伝達事項を託すわ。

 それと共に、リーザちゃんにもこの後やってもらう事を話す。


「ガァ……ガァゥ!」

「ふわぁ!?」


 私からの指示を受けてすぐ、姿勢を低くし、力を溜めて一気に飛び上がるフェン。

 その背中でリーザちゃんが驚きの声を上げているけど、なんとか落ちたりはしていないわね。

 まさか飛び上がるとは……ラーレに伝えるという意味では、確かに空へ行く方が早いけれど。


「ガァゥ……」


 溜め息を吐くように鳴いたリルルからは、シェリーにいいところを見せようとしてフェンが張り切っているとの事だった。

 娘の前でいい格好をしたいというのは、人間もフェンリルも変わらないのかしら? お父様も、そういうところがある気がするのよね。


「キィ、キィー!」

「伝わったようね。それじゃあ、こちらも動くわよリルル! シェリーも!」

「ガァゥ!」

「キャゥ!」


 ラーレの飛んでいる上空へとジャンプしたフェンが、吠えて伝えるのがここからでもわかる。

 その後すぐ、上空を旋回するラーレから承諾したような合図を見て、こちらも動き出す。


「まずはリルル、囲むように氷の壁を!」

「ガァゥガァ!」

「フェンとリーザちゃんは、氷の壁の外にいるフェンリルを内側に!」

「ガァ!」

「うん、わかった!」


 私の指示のもと、リルルを中心にして近くにいた数体のフェンリルを囲むように分厚い壁が出現。

 以前、ラクトスからここに移動する途中でフェンリル達が協力して作った氷の壁より薄く、低い物だけれど、それでも十分。

 暴れているフェンリルは、全力ではないようで、その氷の壁に激突するも割れず、閉じ込める事に成功しているみたいね。


「あっちだよ、フェン!」

「ガゥ!」


 リーザちゃんは、氷の壁の外にいるフェンリルを見つけては、フェンに頼んで氷で固める。

 しばらくするとその氷も割られてまた動き出すけれど、その少しの間だけ動きを止められれば十分。


「キィ、キィ!」


 ラーレが氷で固められたフェンリルめがけて空から急降下し、足で掴み上げ壁の内側に運ぶ。


「リルル、お願い! 人が通れるくらいの穴を開けて!――皆、氷の壁の中にフェンリルを封じ込めるわ! まずは外へ避難しなさい!」


 リルルへのお願いと共に、フェンリルの近くにいたため、私達と同じように壁の内側にいる兵達に指示を出す。

 外側からは、お父様の号令が聞こえているから、兵達を誘導しているようね。


「ガァゥ! ガァゥゥ!!」


 リルルが吠えると、人くらいの大きさがある細長く尖った氷が目の前に出現。

 さらにもう一度吠え、尖った氷がものすごい勢いで壁へと向かう。


「リルルが開けた穴から外へ!」


 尖った氷が激突した壁には、人が通れるほどの穴、私のお願い通りのものができていた。

 そこに兵達を誘導し、近づくフェンリル達にはリルルが魔法で牽制する――。



読んで下さった方、皆様に感謝を。


別作品も連載投稿しております。

作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。


面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はページ下部から評価の方をお願いします。

また、ブックマークも是非お願い致します。

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■7巻書影■mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


■7巻口絵■ mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


■7巻挿絵■ mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


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神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移


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