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異世界転移したら飼っていた犬が最強になりました~最強と言われるシルバーフェンリルと俺がギフトで異世界暮らしを始めたら~【Web版】  作者: 龍央


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2008/2012

事態の収束の準備をしました



「……すごく納得したようですねフィリップさん」

「ははは……ちょっと過去に色々と」


 飲み過ぎたうえで馬車に乗せられた事があったのだろうか? まぁ、フィリップさんの場合自業自得な事もあり得るから、なんとも言えないが。


「フェンリル達が魔法を使えないのなら、無事なフェンリルが魔法で制圧しているのにも納得できるな」

「そうですね。じゃなければ、同じフェンリルですし……」


 魔法の打ち合い、とかになったら俺達も巻き込まれそうだし、個体差はあるけどそもそももっと拮抗するはずだ。

 不幸中の幸いと言ったところか。


「フェヤリネッテ、結局魔力が乱れているって事は前と同じように、回復を待つしかないのか?」

「サニターティムの丸薬を、もっと使うくらいしかないのよう。あとは、フェンリル達が我慢して待つくらいなのよう」

「結局、対処方法は一緒なのか。とにかく、暴れているフェンリル達をおとなしくさせないといけないけど……でも、サニターティムの丸薬はフェンリル達は既に食べてもらっていたんだけど」

「丸薬以上の効果を受けたからってだけなのよう。だからそれに対抗するには、同じく効果を上乗せするのよう」

「成る程……」


 効かないなら、もっと効果を得られるように量を増やすって単純な事なのか。

 薬の量を増やすと考えたら色々心配になるが、今のところサニターティムの丸薬に副作用はなさそうだ。

 いきなり大量に、ではなく少しずつ様子を見ながら与えていく方向でいいだろうか。

 フェヤリネッテに見てもらいつつなら、治療らしい事もできそうだ。


「凍らせておとなしくさせているのは、いい傾向なのよう。タクミの捕まえ方より、苦しさは感じにくくなるのよう」

「そうなのか……」


 氷漬け、と考えると酷い事をしているように感じるが、理にかなっているのかもしれない。

 フェンリル達がそれを理解してやっているのかはわからないが。


「そうと決まれば、暴れているフェンリルを抑えるのは任せるとして……」


 交渉に臨む前に念のため備えとしてサニターティムの丸薬を食べさせているから、備蓄分は少なくなっているから、新しく作らないといけない。


「フェヤリネッテ、サニターティムの丸薬の効能だけど、差異が出るのは効果時間が大きいんだよな?」

「そうなのよう。効能の強さ自体は、誰が作っても大きく変わらないのよう。少しはあるけど、誤差なのよう」

「タクミ様、何を……?」

「苦しんでいるフェンリル達をなんとかするためにも、大量のサニターティム、それから作られる丸薬が必要ですからね。幸い、今は待機組のフェンリル達のおかげで、暴れているフェンリル達はいずれ抑えられるでしょう。なので、今のうちに対処、治療できるようにしておこうかなと」


 そう言って、しゃがみこんで地面に手を突く。


「タクミ殿、先程からマクレチスを使って、相当な力を使ったのではないか?」

「魔力もそうですが、そちらも心配です」

「まぁ、全然平気とまでは言いませんけど、なんとか余力はありますから。それに、辛いのはフェンリル達で、できるだけ早くカナンビスから解放させてあげたいんです」


 心配そうに声をかけて来るエルケリッヒさんとニコラさん。

 フィリップさんも含めて、俺を止めたそうにしているけど、サニターティムを作れるのは俺だけ。

 回復までどれだけの量が必要なのかわからないし、備蓄も少ないので、俺がやるしかない。


「……仕方ありません。ニコラ!」

「はっ!」

「ふむ、協力しよう。――フェンリルに注視! 決してタクミ殿に近づけるな!」

「ありがとうございます」


 フィリップさんはニコラさんに、エルケリッヒさんは兵士さん達に声をかけ、簡単な目隠しをしてくれる。

 俺が『雑草栽培』を使うのをあまり見られないようにするためだろう。

 自分から広めているわけではないけど、兵士さん達の多くはある程度知っているし、察している人もいるけど、一応ってところかな。

 まぁ、既にフェンリルを抑えるためのマクレチスを作るため、ガッツリ使っているから今更感はあるけど……近衛護衛さん達はほぼ知っている事だし。


「それじゃあ……!」


 何はともあれ、地面に触れさせた手とイメージに集中し、サニターティムを作る。

 すぐに、俺の周囲を囲むように大量のサニターティムが完成。


「フェヤリネッテ、丸薬作りをお願いできるかな?」

「任せるのよう!」


 作ったサニターティムを、フィリップさん達にも手伝ってもらい、せっせと摘み取り、丸薬作りをフェヤリネッテにお願いする。

 量が多いので完全に任せるわけじゃないけど、人間が作るよりも効果の高い物ができるので、フェヤリネッテがメインだ。

 体の小ささに比例して小さい手で作るのは大変だろうけど、頑張って欲しい。

 本当はデリアさんやリーザのような獣人やフェンリル達に頼む方のが一番だけど、今はそうできないからな。


「まだまだ足りそうにないな。次を……」

 

 さらに、少しだけ位置を変えてサニターティムを追加で作る。

 フェンリルの数が多く、大量に必要なようだからな。


「よし、とりあえずはこれくらいかな? じゃあ次は――」

「タクミ殿、サニターティムはもう良いのではないか?」


 さらに『雑草栽培』を使おうとする俺に、心配そうな声音のエルケリッヒさん。

 過剰使用が危険なのを知っているからだろう。


「いえ、そっちじゃなくて今度はロエを。どれだけ必要かはわかりませんけど、怪我をしている人も多くいますから」


 暴れるフェンリル達の制圧は着々と進んでいるけど、これまでにも結構な人が怪我をしているっぽい。

 俺がマクレチスを維持している時、守ってくれた人もちょっとした怪我をしているように見えたし。

 ……ユートさんの魔法に巻き込まれた人とか、結構な勢いで飛ばされていたからそっちもかな。


「全部終わったら……できるなら今すぐでもいいんですけど、怪我は早く治すに越した事はありませんからね」

「それはそうだが、タクミ殿。ロエに関してはそこまで必要ではないだろう。怪我の程度次第では使用するが、そもそも、兵士達のためのロエは以前からタクミ殿のおかげで確保できておるからな」

「そう、ですか? そういえば、前にも作ってましたっけ」


 エッケンハルトさんに頼まれてだったけど、兵士さん達のためにロエを用意した事があった。

 継続して供給はしていたから、今ここにいる兵士さん達の治療にはもう必要数は揃っているのかもしれない。


「それにクラウフェルトで作っている傷薬もあるからな。確実な効果で、軽傷であればそれで十分だ」

「な、成る程……ふぅ!」

「あまり無理をするな、タクミ殿。私もそうだが、レオ様やクレアが心配するぞ? 助けてもらっているのはこちらだが、無茶は良くないからな」

「はい。すみません、気を付けます」


 エルケリッヒさんの言葉に、大きく息を吐く。

 フェンリル達のため、怪我をした兵士さん達のためと考えて、少し焦ってしまっていたのかもしれない。

 冷静に状況を見て考える……ように努めているだけで、実際に冷静に考えていられなかったのかもな。


 色々と、というか主にユートさんの魔法が飛び交い、フェンリルが暴れて、兵士さんまでも比喩ではなく飛び交っていたのを見るのはさすがに初めてだったから。

 ……何度も経験するような事じゃないとは思うが。


「大丈夫ですか、タクミ様?」

「えぇ、なんとか。結構ギリギリに近いですけど。エルケリッヒさんに止めてもらって良かったです。冷静になって考えると、ちょっと危なかったかも」

「タクミ殿は、周囲の状況を見る事は出来ているのだが、自分の事には少々疎いな。クレアが心配する気持ちもよくわかるぞ?」

「ははは、まぁ性分と言いますか……」


 しゃがみ込んでいた俺に手を差し伸べて立たせてくれるニコラさんに答え、溜め息混じりのエルケリッヒさんに苦笑する。

 自己犠牲の精神、って程の事は考えていないけど、確かに自分の事に関してはないがしろにしがちなのは思い当たる節がある。

 まぁ性分や性格ではあるけど、皆に心配をかけないためにも気を付けないとな。


「とりあえずは、落ち着いてきましたかね」

「うむ。兵士達も、そろそろ必要なくなりそうだ」


 俺がサニターティムを作っている間にも、待機組のフェンリル達が活躍し、暴れるフェンリル達の数は着実に少なくなっている。

 もうすでに兵士さん達への被害も出そうになく、あとは待つだけと言ったところだ。


「あと、森に行ったユートさんとレオは……」

「レオ様がいて下されば、心配する事はないだろうが――いや、やりすぎないかの方が心配か。レオ様ではなく、ユート様がだが」

「さっきまでの様子を見ていても、そうですね……ははは」


 必要だからやっていたんだと思うけど、フェンリルと一緒に兵士さんまで巻き込んで吹き飛ばすような魔法を、文字通りぶっ放していたユートさん。

 トレンツァさんに対して、かなり憤っていた様子もあったから、やりすぎないかの心配はしてしまう。

 レオもいるし、ユートさんの方が危険な目に遭うとかの心配はしていないんだけども。


「トレンツァだったか。あの者が連れて行ったフェンリル達はなんとか無事……無事だろう。だが、トレンツァ自身がどうなるか。この事態を引き起こした者として、色々聞き出したいのだが……」

「事情というか、色々聞きたいのは俺もそう思いますけど。どうでしょう……?」

「うぅむ――レオ様が抑えて下さる事を、願うしかあるまいな」


 そう言って、ユートさんが使った魔法の跡を見てから、遠くというかレオ達が向かった森の方を見るエルケリッヒさん。

 命を奪いたくないってのはまぁあるけど、状況次第で仕方ないと思う事もできるようになっている。

 けど、これからのためにも捕まえて話を聞いておいた方がいいだろうが、それができる状態かどうか……。

 ユートさん、いざというと徹底的にやりそうだ。


 レオも、危険な魔物を相手にする時は結構容赦ない……ユートさんを抑えてくれるかはわからないし、結構怒っている感じだったからなぁ。

 だからといって、今から俺が駆け付けようとしても、例えフェンリルに乗って行っても間に合いそうにないから、戻って来るのを待つしかないんだが。


「「はぁ……」」


 結果がどうなるか、色んな心配でエルケリッヒさんと同時に溜め息を吐く。

 心配の方向性は多少違うかもしれないが。

 そんな風に油断していた俺達に、大きな声が届いた。


「ガァゥ! ガァガァゥ!!」

「っ!?」


 大きく吠えるフェンリルの声が聞こえ、弾かれたようにそちらを向く。


「いかん!」

「あっちは……!」


 二体のフェンリルが、おそらく示し合わせたわけではないだろうが、兵士さん達を飛び越え、抑える側のフェンリルの追従を躱し、包囲を抜け出した!


「くそっ!!」

「タクミ様!?」

「タクミ殿!?」


 咄嗟の判断だった。

 魔力や『雑草栽培』をかなり使ってしまった影響で、全身を包む気怠さを無視し、二体のフェンリルを追いかけるため、全力でダッシュ。

 フィリップさんやエルケリッヒさんの驚く声が聞こえるが、それを背後に置いてきぼりにさせ、強く地面を踏みしめて駆ける。


「って、追いつけないか……そりゃ、俺が走るよりずっと早いもんな……!」


 全力で走っても、フェンリルとの距離は開くばかり。

 とはいえこのまま何もせず、走るフェンリルを放っておくわけにはいかない。

 向かっているのは南方向、ランジ村のある方だったから。

 屋敷は村の北東に位置し、フェンリル達が暴れていたのは薬草畑の付近。


 村との距離は多少あるから安心していたけど、もし村でフェンリルが暴れたら……!

 鎧を着込んだ兵士さん達を軽々と弾き飛ばすのだから、村の人達はひとたまりもない。

 念のため、村の人達には家から出ないようにしてもらっているけど、その家も破壊してしまう可能性が高い。


 屋敷の外壁などはかなり頑丈に作られていて、壊れていない――ヒビくらい入っていたかもしれないが、村にある家々は木造で石造りの壁程丈夫じゃない。

 最悪の場合、倒壊する可能性すらある。


「直接ぶつからなくても、倒壊する家に巻き込まれたらただじゃすまないはず……せっかく、フェンリルと村の人達が仲良くやっているのに、そんな事になったら!」


 ランジ村の人達は、俺やレオとの関わりでフェンリルの事を快く迎え入れてくれたけど、もし何か大きな被害が出るような事があれば……。

 家だけなら、建て直す事はできるかもしれないが村の人に被害を出してしまったら取り返しがつかないだろう。

 それこそ、今後のランジ村でのフェンリル達を見る目が、変わってしまうかもしれない。

 楽しそうに村の人達と遊ぶフェンリル、という光景が見られなくなる可能性だってある。


 植え付けられるかもしれない恐怖は、簡単に拭えないものだ。

 遠巻きに、忌避の目で見られて、寂しそうにするフェンリル達なんて見たくないし、村の人に我慢をさせるのは望まない。

 せっかく、物語からの発展で演劇という形でフェンリルに親しみを持ってもえるよう、広める準備もできたというのに。

 考えすぎかもしれないが、場合によっては駅馬にも影響が出てしまうかもしれない。


「はぁっ! ふぅっ! くそっ!」


 荒い息を吐きながら、もつれかける足に激を入れ、諦めかける気持ちを奮い立たせてフェンリルを追いかける。

 だが、どれだけ考えても、どれだけ走っても、フェンリルとの距離は離れるばかり。

 これで、まだフェンリルは全力で走っているわけじゃないはずなのに……。


「絶対に、村に被害を出しちゃ……」

「グルァゥ!」

「っ!?」


 走り続ける俺の横に、一体のフェンリルが走ってきて吠えた。

 驚いてそのフェンリルを見ると、目には理性の力がある。

 どうやら、カナンビスの強化薬の影響があるフェンリルではないようだ。


「グルァ、グルルァ!」

「乗れ、って言っているのか?」

「グルゥァ!」


 俺に並走するフェンリル……フェンリルにとっては早歩きくらいの速度かもしれないが。

 そのフェンリルが何かを伝えるように鳴く。

 レオやリーザとかがいないから、俺には何を言っているのかわからず、ただの鳴き声にしか聞こえないが、その意思を伝えるような目からは背中に乗れと言っているようだった。


 俺の問いかけに頷くのを見て、一緒に追いかけてくれるのだと判断。

 全力で走る速度を落とし、それに合わせて姿勢を低くしてくれたフェンリルの背中に飛び乗った。


「ありがとう。村で暴れさせないよう、急いで追いかけてくれ!」

「グルァゥ!!」


 俺の言葉に、ひと吠えしたフェンリルが、背中に乗る俺の背骨に響くくらいの加速で、村の方向へと駆けだす。


「つっ……くっ……!」


 必死でフェンリルの背中にしがみつく。

 急いで追いかけているからだろうし、乗り心地などもレオとは違うが、今は追いつくまで耐えるだけだ。

 とはいえこれでも、俺を乗せているからフェンリルにとっては全力ではないんだろうが――。



読んで下さった方、皆様に感謝を。


別作品も連載投稿しております。

作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。


面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はページ下部から評価の方をお願いします。

また、ブックマークも是非お願い致します。

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神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移


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