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異世界転移したら飼っていた犬が最強になりました~最強と言われるシルバーフェンリルと俺がギフトで異世界暮らしを始めたら~【Web版】  作者: 龍央


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2006/2006

庭の事はクレア達に任せました

ブックマーク登録をしてくれた方々、評価を下さった方々、本当にありがとうございます。


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「ティルラ! ラーレ!」

「キィー!」

「姉様! リーザちゃん!」

「ティルラお姉ちゃん、ラーレ!」


 さらに、クレアが空に向かって呼びかけると、ラーレが急降下して別のフェンリルを足で掴んで持ち上げる

 そのまま、また別のフェンリルに向かって投げた。

 大きな体を持つフェンリルをそんな風に扱うって、ラーレも結構力持ちなんだな……。

 ともあれ、やり方はかなり荒っぽいけど、この様子ならレオを残さなくても大丈夫そうだ。


「ごめん! クレア、リーザ、シェリー、ティルラちゃん! ここは任せる! フェンリル達は無理矢理従わされているだけだから、加減はできなくてもやりすぎないように! あと、クレア達も気を付けて! フェン、リルル、ラーレ、頼んだ!――レオ、行くぞ!」

「任せて下さい!」

「うん、わかった!」

「キャウー!」

「はい、タクミさん!」

「ガウ!」

「ガァゥ!」

「キィ!」

「ワウ!」


 大きく叫んでレオに飛び乗り、後ろから聞こえる皆の返事を聞きながら、もう壁の外へ走って行ってしまったユートさんを追いかける。

 って、レオが通るには壁の外の出入り口は少し狭い気がするけど……いや、通れなくはないけど走って通ろうとすると、下手したら俺が上枠にぶつかりそうだ。


「ワッフ……ワウー!」

「って、やっぱそうだよなぁ!」


 助走をつけて、扉に向かう……のではなく、大きくジャンプするレオ。

 そのまま、アトラクションもかくやという勢いと角度で、壁を飛び越えた。

 叫び声をあげながらも、落ちないように必死でレオにしがみつく。


「ワッフ」


 スタッ、という音がしたわけではないが、静かに着地するレオ。

 一瞬、という言葉が合う程の間で、壁の外に出られた……ちょっとこれは、心臓に悪いしもう一度は経験したくないな。


「ユートさんと、トレンツァさん、それからフェンリル達は……!」


 ともあれ、痛い程に脈動している心臓を落ち着かせるよりも先にやる事がある。


「タクミ殿!」

「エルケリッヒさん!? どうしてここに?!」


 ユートさん達がどうなったのか、レオの背中から状況を把握しようとする俺に声をかけて来たエルケリッヒさん。

 マリエッタさんと一緒に、屋敷の中で待っていてもらっていたはずなんだけど。


「何やら嫌な予感がしたのでな。もしもに備えて、タクミ殿達が庭に向かってから、こちらに兵達を集めていたのだ」


 嫌な予感、特別勘が鋭いというより経験則から、以前に何かそう感じると言っていた事がある。

 それが今回の事なのかはともかく、勘に従って動いてくれていたらしい。

 元々、念のため逃げられないよう、屋敷の周囲はトレンツァさん達が俺達と接触した段階で、大勢の兵士さん達に囲んでもらっていたんだけど、さらにエルケリッヒさんの指示で惜しみなく千を越える兵士さん達が投入されているようだ。

 もちろん、突入役ではないフェンリル達も待機していたんだが。


「エルケリッヒさん、ユートさん達は!」

「向こうだ。少々まずい事になっている」

「まずい事……あっちもか!?」

「ワフ……」


 レオの背中、俺が立つよりも高い視点の先、エルケリッヒさんが示した方では、兵士さん達が輪を作って取り囲み、その中央で色んなものが飛び交っていた。

 フェンリルが土と共に打ち上げられたと思ったら、兵士さんと思しき人が数人、周囲を巻き込んで弾き飛ばされている。


「何が起こっているかわからん部分もあるが、どうやらフェンリル達が前面に出て包囲したのが裏目に出たらしい。それと、ユート閣下が派手にやっているようでな。正直、私もだが兵士達も手が付けられん。ただ、フェンリルに乗っている者を逃がしてはならない、と閣下に言われ、とりあえず囲んではいるのだが……」

「な、成る程」

「ワフゥ」


 トレンツァさんを追いかけていたユートさんが、逃がさないために魔法をぶっ放している、とかだろう。

 ただ、そのユートさんの魔法に時折兵士さんが巻き込まれているように見えるのは気のせいか?

 あ、突然空に向かって突き出た土の柱に、兵士さんが数人飛ばされた。

 大丈夫なんだろうか? 後でロエを全力で作らないといけなないかも。


「ユート閣下もそうだが、フェンリル達も暴れて止められない状況だ。中では何が起こっていたのだ?」

「してやられた、というのが正直な感想です。カナンビスの薬を使われて――」


 とりあえずあれを止めないととは思うが、その前に簡単にエルケリッヒさんに事情説明。

 外で待機していたフェンリル達も暴れているようで、ひとまず包囲は維持していても兵士さん達は混乱しているようだし、巻き込まれてもいるからな。

 放っておくと危険だけど、まずはエルケリッヒさんに理解をしてもらって、まとめてもらった方がいいと判断。

 説明している間に、巻き起こった風に吹き飛ばされた兵士さん、すみません……混乱していても、飛ばされるのはフェンリルとの模擬戦で慣れているのか、別の兵士さんが受け止めていたので無事だろうけど、怪我をしていたら後で治療しますので。


「強制隷従だと? そんな物が……」

「ユートさんは知っていたみたいです。まぁ複数のフェンリル達にまで効果が及ぶとか、そもそもそれをトレンツァさんが持っている、という事はわからなかったみたいですけど」


 エルケリッヒさんも、強制隷従具というか強制的に従魔にする魔法具の事は知らなかったらしい。

 ユートさんは破棄や破壊したと言っていたから、隠しておきたいというか表に出したくない物だったのかもな。


「ある程度の事情はわかった。トレンツァという者だったか、フェンリルに跨り、あの包囲の中心にいる。我々では手が出せないが、レオ様であれば」

「はい。捕まえます。逃がすのはフェンリルを連れていかれるという事でもありますし、ユートさんも止めないといけないですから」

「ワッフ」


 ユートさん、相当怒っていたからなぁ……止まってくれるかはわからないけど、魔法だけでなく人やフェンリルが飛び交っているあの場に割って入れるのは、レオくらいしかいないだろう。


「こういう時のためにワシらがいるのじゃが、よろしく頼む。――レオ様も、不甲斐なくて申し訳ありませんが、お願い申し上げます」

「はい」

「ワッフ!」


 深々と頭を下げるエルケリッヒさんに、レオと一緒に頷く。


「それじゃ、行くぞレオ!」

「ワフ!」


 今も色々と飛び交っている包囲の中心に向けて、レオが駆け出した。

 後ろから、エルケリッヒさんの号令が聞こえてくる。


「巻き込まれぬよう包囲を広げろ! 暴れるフェンリルを抑えるため、盾を持て!」


 その叫びに後押しされるように、駆けるレオがジャンプ!

 兵士さん達の頭上を飛び越える。


「ワッフ、ワフー!」

「すごいな。これが、空中でさらに飛んでたあれか……」


 トン、トン……と、レオが空中で何度か飛ぶ。

 まるで地面に着地して再び飛ぶようではあるけど、それ以上にかなり身軽なようにも感じる。

 上に飛ぶのではなく、包囲の中央に向かって突き進む感じだ。


 なんらかの魔法なのだろうか? レオやフェンリル達がそうしているのは何度か見たけど、実際背中に乗って体験するのは初めてで少し楽しい。

 いや、状況が状況だから楽しんでいる場合じゃないけど。


「ユートさん、派手にやってるなぁ」


 視点が高くなったおかげで包囲の中心部の状況が見えるようになった。

 そこでは、真ん中でフェンリルに乗ったトレンツァさんと、二体のフェンリルが守るようにいて、それに対してユートさんが対峙、魔法をあちこちに放っているようだ。

 それ以外にも、複数のフェンリル達が庭と同じく苦しそうにしながら暴れており、魔法以外にも兵士さんの方へ向かってもいる。

 一応ユートさんは、自分に向かってくるフェンリルに対して魔法を放ち、体当たりを防いでいるようだけど……その魔法が広がると近くにいた兵士さんを巻き込んでいるな。


 さっき、魔法でフェンリルを止めるのは周囲を巻き込むから、とレオに任せていたけど、こうなるからだったのか……。

 フェンリルの巨体と勢いに止めるには、これくらいの威力を出さなければいけないのだろう。

 トレンツァさんの方にも魔法が向かったりしているけど、それは無理矢理従わされているフェンリル達が守っているようだ。


「ユートさん!」

「ワフ!」


 状況を把握しているうちに、レオがユートさんの近くに着地。


「タクミ君、遅いよ! またあれを使われた!」

「状況はなんとなく見てわかります!」

「うん! すぐにあいつを捕まえたいけど、フェンリル達が邪魔でね。でも、やり過ぎたらかわいそうだから加減するしかなくて困ってたんだよ。幸い、強制隷従具が壊れているからただ暴れているだけなんだけど。向こうに三体いるせいで、守られているんだ」


 あれで加減していたのか……フェンリルや兵士さん達、派手に飛ばされていたんだけど。

 でも確かに、ユートさんが使っている魔法は致命的なのはなかった気がする。

 それこそ、炎をまき散らしたりとか、以前ラクトス付近であった時のようなのとかは使っていないか。


「ちっ、厄介な! 私はここで捕まるわけにはいかないのよ! 世界のための研究、私の研究が失われるわけにはいかないの!」

「お前の役に立たない研究は、どうでもいい! ソイルアース!」


 短縮魔法だろう、短くユートさんが叫んだ瞬間、地面が円柱状に盛り上がり、トレンツァさんへと伸びていく。


「ガァゥ!」

「ちぃ!」


 だがそれは、無理矢理従わせされているフェンリルの一体に、横から嚙み砕かれた。


「私の研究は、世界を変え、救うのよ! 凡愚共にはわからないでしょうね! あわよくばシルバーフェンリルもと思ったけど、最低でもフェンリルを連れて帰って研究の糧にするわ! ふふ、このフェンリル達を連れ帰ってシルバーフェンリルにすれば、数で勝るこちら手は出せないでしょう!」


 なぜ、追い詰められた人ってこうして考えている事を叫ぶんだろう……まぁ目的とかがわかりやすくていいんだけど。

 ともかく、フェンリルを連れて帰るなんてそんな事はさせない!

 強制的に従わせる強制隷従具もそうだけど、連れていかれたフェンリルがどんな目に遭うか……少なくとも、ここでユートさんの魔法やレオに弾き飛ばされるよりよっぽどひどい目に遭う気がするしな。


「お前のろくでもない研究は、世界を救うなんて事ができるわけがない! ウォールオブアース!――タクミ君、レオちゃん!」


 ユートさんが叫び、魔法を発動し、こちらに飛び込んでくるフェンリルを土の壁で押しとどめた。


「レオ、頼む!」

「ワフ!」


 レオから飛び降り、フェンリル達を任せる。


「ちっ! 捕まるわけにはいかないのよ! 行きなさい!!」

「ガ、ガァゥ!」

「待て!!」


 風のような速度で飛び掛かるレオに対し、フェンリルが一体立ちふさがる。

 そのフェンリルは軽々と弾き飛ばされたけど、少しの猶予が生まれた瞬間、もう一体のフェンリルとトレンツァさんが乗っているフェンリルがジャンプ!

 暴れているフェンリルを足場にして高々と飛び上がり、包囲する兵士さん向こう側へと向かった。


「逃がすか! 仕方ない……フレイムソウル!」


 複数の炎の玉、拳サイズの物が浮かび上がり、飛び上がったフェンリル――トレンツァさんへと追いすがる。

 が、それは空中でさらに飛び上がり、兵士さん達の頭上を飛び越えたトレンツァさんとフェンリルには届かず途中で立ち消えた。


「くそ! 絶対に逃がさない!」

「ユートさん!」


 俺の声が聞こえていないのか、熱くなっているのか、とんでもない速度でユートさんも兵士さん達を飛び越えて、トレンツァさんを追いかけていく。


「ガウ! ワウウ!」

「レオ!」


 レオにも追いかけてもらおうと思ったけど、暴れているフェンリルが数体レオにぶつかり、思うように追いかけられずにいるようだ。


「くっそ……! レオ、ここは俺が抑えるから、レオはユートさん達を追ってくれ! っっ!!」


 再びレオにぶつかりそうになったフェンリルに向かい、マクレチスを伸ばし、脚を絡めとる。

 ブチッ、ブチッ! という音と共にマクレチスの蔦が引き契られるが、それで力を失う植物、魔物じゃない。

 続けて魔力を流し込み、さらに『雑草栽培』で別のマクレチスを作って、フェンリルをがんじがらめにしていく。


 簀巻きのようにしてようやく、フェンリルの一体が動きを止める、というか動けなくなった。

 苦しそうに唸り声を上げてはいるけど。

 ここまでして、ようやくか……。



「ワ、ワフ……?」

「俺の事はいいから! こっちはなんとかなる! 行ってくれ!」


 心配そうにこちらを振り返るレオに、そう叫ぶ。

 兵士さん達もいるし、おそらく無事なフェンリル達も包囲の外か厩舎にいるはずだ。

 それらと協力すれば、多分なんとなかると思う。


「ワ、ワウ!」


 躊躇しながらも、頷いてユートさん達をレオが追いかけていく。

 追いつけさえすればユートさんだけでなんとかなるかもしれないけど、レオがいればさらに安心だし、必ず追いつけるはずだ。


「包囲を広げろ! 距離を取って、向かってきたフェンリルを抑え込め!」


 ユートさん達がいなくなり、強力な魔法が飛び交う事もなくなったからか、兵士さん達も動き始める。

 隊長格の人だろう、兵士案の一人が声を張り上げて号令を出し、盾を構えた人が前に出てきた。


「タクミ様、下がってください!」

「すみません、それはできそうにないです! 離れると、この蔦――マクレチスがなくなってしまうので!」


 マクレチスから手を離すと、魔力が途切れて枯れてしまうからな。

 フェンリルを簀巻きのようにして抑えている今は、ここから動けない。


「了解しました! タクミ様の盾になってお守りしろ! 決して、暴れるフェンリルを近づけさせるな!」

「「「はっ!!」」」


 俺の言葉を受けて、方針転換した兵士さん達のうち盾を持った兵士さんが俺を囲み、外へ向けて盾を構える。

 突撃して来たフェンリルの盾になろうという事だろう。

 無茶な事はしてほしくないとは思うけど、もし俺に別のフェンリルが飛び込んできたら、無防備な状態で弾き飛ばされるし、マクレチスから離れてしまう事になるから、ありがたい。


「グルァゥ!」

「防御陣形、押し留めろ!」


 そんな俺に、無軌道に暴れるフェンリルのうち一体が飛び込んでくる。

 鋭く叫んだ兵士さんの号令を受け、盾を構えた数人がフェンリルの体当たりを受け、さらに飛ばされないよう動いた兵士さん達が盾を持つ兵士さんの背中から支える。

 大きな激突音と、勢いと重さに押された兵士さん達だけど、なんとか押し留められたようだ。


 以前、フェンリルとの模擬戦を見た時は盾を構えていても簡単に弾き飛ばされていたけど、その経験が生きたのかも。

 エルケリッヒさんが言っていた、兵士さん運用法の一つなのかもしれない。


「ありがとうございます! すみませんが、そのまま少し抑えてて下さい!」

「了解しました! 皆、そのまま耐えろ!」

「「「はっ!」」」


 お礼を言いつつ、フェンリルを捕まえているマクレチスから右手を話す。

 左手で魔力を流しつつ、空いた右手は地面へ――。



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■7巻書影■mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


■7巻口絵■ mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


■7巻挿絵■ mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


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神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移


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