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異世界転移したら飼っていた犬が最強になりました~最強と言われるシルバーフェンリルと俺がギフトで異世界暮らしを始めたら~【Web版】  作者: 龍央


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1956/2006

防護のための氷の壁が出来上がりました

ブックマーク登録をしてくれた方々、評価を下さった方々、本当にありがとうございます。


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2024年最後の更新です!



「はぁ、わかりました……」


 溜め息を吐いて、頷く。


「ただし、できるだけ怪我はしないようにする事。まぁ、戦うという時点で、多少は仕方ないかもしれないけど、気を付ける。あと、フェリー達のように魔法は禁止。これでいいか、レオ?」

「ワッフワッフ!」


 絶対怪我をしない、というのはさすがに戦う気持ちに水を差してしまうだろうし、事故という事もあるから無理な話。

 俺自身、鍛錬の一環でティルラちゃんと模擬戦をして、お互いに擦り傷くらいはよくある事だしそれはわかっている。

 ……絶対に怪我をしないよう気を付けながらの模擬戦なんて、鍛錬にならないからな。

 いや、レオの場合は鍛錬とは違うが。


「ワウー!」

「「「ガ、ガウゥ……」」」


 レオが嬉しそうに吠えるのに対し、フェンリル達の多くが絶望的な鳴き声を漏らした――。



 ――というわけで、レオ対フェンリル達の模擬戦が決まり、そのための準備を終えた。

 レオがいいというので、フェンリル達がずらっとレオを囲む形で並んでいる。

 フェンリル達は最初及び腰と言うか、完全に尻尾を足に挟んで怯えてやりたくなさそうだったけど、フェリーとレオからの説得という名の吠え声に負けて、一応やる気。

 まぁ、色々な諸注意やレギュレーションを踏まえてそれなら……といった感じではあるけど。


 フェリー対フェンの模擬戦を見物していた人達はそのままで、ただしさらに距離を取っての観戦。

 意外だったのは、興味が強いエッケンハルトさん達はともかくとして、ユートさんが消極的ながらも反対だった事。

 さっきの賭けで負けたから意気消沈しているのかな? と思ったけど、そうではないみたいだ。


「やめた方がいいと思うんだけどなぁ。まぁ、ここは公爵領だし、僕が責任を持つわけじゃないからいいか」


 なんて、最終的には不穏な事を呟きつつ頷いてくれていた。

 その言葉を聞いてちょっと不安な気持ちが沸き上がったけど……レオはもうやる気だし、もう止められなさそうだ。

 あと、ユートさんはともかくとしてフェリーとフェンはちゃっかりというかまぁ、さっき戦ったばかりなので休む意味もあって不参加になっている。

 いや、ちゃっかりという意味ではリルルか。


 リルルも、色々あって不参加となっている……フェンが見ていない所で、ホッと息を吐いていたのを俺は見ていたけど、それだけレオと向かい合いたくないって事なんだろう。

 それからシェリーはまだ子供だから、という理由でこちらも不参加。

 まぁ、まだまだ大人のフェンリルと比べたら体も小さいし、そこは仕方ない。

 シェリーもリルルのように、ホッとしていたようだけど。


 そんなこんなで準備が終わり、レオ対フェンリル……えっと、計十六体か。

 集団戦というか、個対集団の模擬戦が始まる……。


「もう一度言っておくけど、やり過ぎないように! 怪我には注意だ! あと、あくまで模擬戦であってお手本、見本を見せるためだからなー!」

「ワフゥ!」


 やる気、気力十分で悠然と立って周囲を囲むフェンリル達を見ているレオに、大きく叫んで伝えておく。

 客観的に見ると、十六体のフェンリルに囲まれているレオが絶体絶命、という感じの状況なんだけど、どう見てもレオは自信満々で圧倒しているような雰囲気を出している。

 対してフェンリル達は、一応はやる気だけどやっぱりどこか怯えているような雰囲気が漂っていた。

 それだけでも、シルバーフェンリルが絶対的な存在だというのがわかるというものなのかな。


「それじゃあ、フェリーはそっち。フェンとリルルはこっちで少し距離を取ってと……僕も協力するから、分厚いのを頼むよ」

「グルゥ」

「ガウ」

「ガウゥ」


 距離をさらに取って準備が終わったと思っていたら、ユートさんが何やらフェリー達に指示を出した。

 見物をする俺達より少しレオ達に近い位置で、フェリーを先頭に三角形に陣取り、真ん中にはユートさん。

 そしてそれぞれ、力をためるような仕草とユートさんからは呪文の詠唱が聞こえてきた。


「ウォーターエレメンタルフローズン、ショウアスザットアイスウォールオブシック――」


 長い詠唱、なんとなく英語と和製英語が混じったような呪文。

 全てを聞き取って翻訳できるわけじゃないけど、なんとなく「水を凍らせ、とにかく分厚くて硬い、光を通す深い壁を」みたいな意味だと思う。

 魔法を使い慣れて行く事である程度魔力を感じられるようになったからわかるけど、俺達の前……いや、ユートさん達の前にものすごい魔力が渦巻いているような気がする。

 それは、以前レオが解放した魔力のような激しい奔流ではないけど、それに負けないくらいの強大な物のように感じた。


「グルルルルゥ……」

「ガウウ……」

「ガーウゥ……」

「キャゥー」


 ユートさんが呪文の詠唱をするのと同じく、フェリー達も姿勢を低くしてうなり始めた。

 ……リルルの背中に乗っているシェリーは、多分適当にそれっぽく鳴き声を出しているだけみたいだけど。

 ユートさんの魔力、フェン達の魔力が目には見えないけど確かにそこにある存在感を示すように、グルグルと渦巻いている感覚。

 そして――。


「グルゥ!」

「ガウ!」

「ガウゥ!」


 フェリーとそれに続くフェンとリルルの吠える声と共に発動した。


「うぉ!?」

「あれは氷、なのでしょうか? ですが、レオ様達の方もはっきりと見えます」

「綺麗ー!」


 ピキィッ! と空気が固まるようなと言えばいいのだろうか? 少しだけ耳をつんざくような音が響いた瞬間、ほんの少しの時間差で、数枚の氷の壁が出現し大きくなって合わさっていく。

 ピタッと合わさるとその氷は、ほんの少し光を反射しつつも、ほぼ完全な透明と言っていい程、ガラスのような質感を持って俺達とレオ達の間を区切った。


「ふぅ……これで、こっちには大丈夫。本当の本気だとこれも無駄だろうけど、模擬戦という事ならね」

「えーっと?」


 なんだかやり遂げたように、流れていない汗を拭う仕草のユートさん。

 どういう事なのかという説明を求めると、こちらに衝撃などで被害が及ばないように氷の壁を作ったという事らしい。

 フェリーとフェン、リルルが透明度が高く巨大な氷の壁を魔法で作り、同じくユートさんも作りつつそれぞれの氷の壁を合わせたという事らしい。

 説明を聞いても、どうやるのかとか色々とわからない事が多いけど……。


 実際目の前に、透明度が高く綺麗で分厚い氷の壁ができあがっているんだから、そういう事なんだろうとしか考えられないか。

 ちなみにだけど、フェリー達フェンリル三体プラスユートさんが作った壁はかなり強固らしい。

 以前ランジ村へ引っ越しする際にユートさんと再会した時、ユートさんが草原が荒野になりかねない強烈な魔法をぶっ放したあれも防げるだろうとの事。

 ……規模が大きくて、ちょっと何を言っているのかわからなかった。


「ま、まぁ、とりあえず防護壁って事でいいかな?」

「うん。フェリーとフェンが戦うのを見ていたでしょ? あの時の衝撃よりももっとすごいのが来る可能性があるから一応ね。ちなみにだけど、実はあの時も僕は協力していないけど、フェンリル達が透明な氷、人の目には見えないくらい透明で薄い、けど硬い物を作って防いでいたんだよ」

「そ、そうなんだ……」


 もう、ちょっと火を出したり水を出したりくらいの魔法で喜んでいる俺とは次元が違い過ぎで、よくわからない。

 ともかく、フェンリル達はそうやって衝撃などから俺達を守ってくれていたと考えればいいか。


「フェンリル達は氷を使った魔法が大得意だからね。まぁ、だからフェンリルって名付けられたのも一部あるけど……それはともかく。そろそろ開始しないと、レオちゃんが焦れて動き出しそうだよ?」

「あ、あぁえっとうん。わかった。いや、よくわからないけど……」


 フェンリルだから氷……というのは、俺にはよくわからなかったけど多分何か種族名に関する理由みたいなものなんだろうと、無理矢理納得しておく。

 レオはこちらの様子を見ながらも、うずうずとしているようで尻尾をフリフリ……パンティングもしているし、待てをされているような状況に近く、いつ動き始めるかと窺っているようでもある。

 ともあれ、このまま待たせっきりなのもいけないので、わからない事は今は置いておいて、ひと先ずレオとフェンリル達の模擬戦を開始してもらう事にした。


 ちなみにだが、ユートさんのやった事や説明した事がわからなかったのは俺だけではないようで、周囲の人達……エッケンハルトさんやクレアも含めて、ハテナマークを頭上に浮かべているような感じだった。

 ……俺だけ理解できないわけではないようで、少し安心。



「……それじゃ、フェリー」

「グルゥ。――グルゥゥァァ!!」


 とにもかくにも、頭を切り替えて開始の合図はフェリーから。

 俺に言われて、空へ向かって大きく吠えた。

 その方向は、透明度の高い氷の壁を越えて、レオやフェンリルのもとへ――。


「ワッフ!」

「ガウ!?」


 フェリーによる開始の咆哮が周囲位に響いた瞬間、高く高く空へとジャンプしたレオ。

 周囲を囲まれているから、とりあえず空に飛んでとかそういう事だろうか? と思ったけど違うみたいだ。


「ガフゥ!」


 驚きの鳴き声を上げるフェンリル達を他所に、レオの体が小さく見えるくらいの高度に達したと思った瞬間、宙を蹴って地面へ!

 勢いを付けてフェンリル達への突撃か? と一瞬思ったが、向かう先は一瞬前までレオがいた地面。


「ガフガフワフ!」


 そのまま、ズドンッ! という大きな音と共に地面へ激突するレオ。

 凄まじい勢いだったのはもちろんの事、レオは大丈夫なのかと心配になる俺に、楽しそうなレオの声が届いた……。


「おぉ……」

「これは凄まじいです……ね」


 こちらにまで響く地面の振動と、氷の壁を越えて届く風。

 隣で呟くクレアの言葉は、氷の壁かレオのどちらに対して言っているのかわからなかったが、カン、カン、とおそらく飛んできた石などだろう、氷の壁に当たって弾かれる音も聞こえた。

 というかあれ、本当に氷でできているのかな? ちょっとガラスっぽい音の響き方だけど……。

 いや、透明度はともかく、触れる程近くでなくても感じられる冷気で少し周辺の気温が下がっているし、氷霧ひょうむだったかな?


 冷たい湯気のようなものが立ち上っている。

 寒いという程でもなく、氷の壁も透明度が高くて境目がわかりづらいけど、氷霧のおかげで大体二メートルくらいの高さだというのがわかる。

 まぁだからこそ、それを越えて発生した衝撃からくる風がこちらに届いているんだろうけど。


「というかレオ、出て来ないな。何しているんだろう?」

「レオ様の事ですから、何か考えがあるのでしょうけど……傍から見ていると自分から地面に激突したとしか見えませんね」

「……レオだからなぁ。何も考えずに動いて、自滅したってパターンもないとは言えない気がする」


 地面に激突した衝撃で巻き上げられた砂塵などが晴れても、こちらからは大きな穴が空いているように見えるだけでレオの姿が見えない。

 穴に入り込んでいるんだろうとは思うけど……囲んでいるフェンリル達は、驚いてはいたけど衝撃自体は特に問題なかったらしく、多少足を踏ん張っているくらいだ。

 ……驚かせる、と言うのなら一応成功しているっぽいけど。

 なんとも言えない空気が流れて誰も言葉を発さないまま、しばらくすると……。


「っ!?」

「あ、あれって……」

「ガフッ!?」


 ズドン! という音と共に、空へ打ち上げられるフェンリルが一体。

 自分でジャンプしたとかではなく、何の前振りもなく突然空へ体が放り出された。


「ガウ!?」

「グル!?」

「キューン!!」

「クゥーン!!」


 その後も、レオがいたはずの穴を囲んでいたフェンリル達が、次々と空へと舞っている。

 巨体が数メートルも舞っている様子は、よくわからないながらもとんでもないものとは思えるんだけど、フェンリル達が発する驚きの声などでちょっとだけかわいそうに感じたり。

 ただ一応、空に飛ばされたフェンリル達は空中で回転しつつ態勢を整えてちゃんと着地しているので、無事なのは間違いないようだ。

 その後もしばらく……というか、囲んでいたはずのフェンリルがどんどんと空へと打ち上げられる。


「……レオ様がやっている……としか考えられませんけど、どうやっているんでしょうか?」

「えーっと、フェンリル達の足下を見ていたらチラッと見えたんだけど、どうやら地面からレオが弾き飛ばしているみたいだね」

「え!? あ……確かに一瞬ですけど、レオ様らしき足? でしょうか、それが見えました」

「鼻先の時もあるけどね」


 よくわからないながらも、フェンリルの足下からレオが体の一部を一瞬だけ出して、フェンリルを弾き飛ばしているみたいだというのが、何度も繰り返される中でわかった。

 チラッと顔を出し、こちらを見ていたりもしたけどあれはおそらくアピールのつもりなのかなと思う。

 というかこれって……。


「モグラたたきかな? いや、地面に潜っているレオの方が、外のフェンリル達を叩いているけど。逆もぐらたたき?」

「モグ……?」

「あーえっと……」


 首を傾げるクレアや近くの人達に、モグラたたきについて簡単に話す。

 こちらの世界でモグラかそれに近しい生物がいるかはわからないけど、モグラたたきという遊びはないはずだから、疑問に思うのも当然か。


「レオ、実は遊びたいだけだったのか?」


 時折、フェンリル達の驚く声に混じって、楽しそうなレオの鳴き声が聞こえる。

 やってみたら楽しかったんだろうか。


「ガウゥ! ガウ、ガウ!」


 フェリーとは別の、まとめ役か何かだろうか。

 フェンリルの一体が大きく吠えて、ばらばらになっていく味方をまとめた。

 不意打ちで空に打ち上げられてはいたけど、繰り返されるうちに慣れたのか、レオの作った穴を囲むのをやめ、一か所に密集する。

 そのうえで、地面から来るのがわかっているので顔を下げて警戒。


「ガフ!」


 ボコッと穴が空いた地面から飛び出す……おそらくレオの前足を、警戒していたフェンリルが避けた。

 続いて、前足が引っ込んだ次の瞬間に別の場所の穴が空いた先でも、フェンリルは回避。

 何度も同じようにしていたから、完全にフェンリル達には見切られたようだ。


 ……不規則に地面から飛び出す攻撃を見切れるって、すごいな。

 まぁ、直前に地面に穴が空くから、反応さえできればわかりやすいのかもしれないが……。


「というか、地面が穴だらけだしもしレオが土の中を移動しているんだったらこれって……」


 魔法は禁止、というルールをレオが守っているのなら……レオは約束とかそういうのを破るのを嫌うから、本当に魔法は使っていないだろうけど。

 昔、おやつをあげる約束を俺が忘れていたらしばらく拗ねていたからなぁ。

 いやそれはともかく、魔法ですらないならどうやって土の中を移動しているのかわからないけど、あれだけ穴だらけにして、土の中を動き回っているとしたら……。


申し訳ございません、来週の更新はお休みさせていただき、来年の更新は1月11日から再開させていただきます。


読んで下さった方、皆様に感謝を。


2024年もありがとうございました!皆様良いお年を!


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