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異世界転移したら飼っていた犬が最強になりました~最強と言われるシルバーフェンリルと俺がギフトで異世界暮らしを始めたら~【Web版】  作者: 龍央


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1952/2012

ハンバーグアレンジは皆に喜ばれました



「おぉ、一気に匂いが広がったなぁ。いい香りで、間違いなく美味しいのがわかる。さすがヘレーナさん達。えっと、まずこれはチーズインハンバーグだね。ハンバーグの内側にチーズが入っているんだけど、外側に溶けるチーズをかけるよりも、一緒に焼く事でより美味しさが増した物、かな」

「チーズを中に入れ込んだんですね。んー……確かに、お肉の匂いとソースの香りだけでなく、どことなく熱したチーズのあの独特な匂いも感じます」

「俺のいた所では、これはハンバーグの定番の食べ方でね。人気のメニューだったんだ」


 チーズオンハンバーグではなく、チーズインハンバーグ。

 熱でとろけるチーズを、ハンバーグのタネの内側に仕込む事で、焼いて食べる時に肉汁と一緒に溶けたチーズが合わさるという一品だ。

 高級なレストランにはあまり縁がなかった俺にとっては、ファミレスとかで食べるくらいだったけど、むしろそういった場所でハンバーグを食べるならこれ、というくらいの物だ。

 チーズの甘味と酸味がハンバーグの美味しさをより引き立てる、間違いなく人気と言える物。


 ……フェンリル達は獣よろしく、レオと同じく猫舌だからとろっとろに溶けた状態という、熱々のままで食べられるわけじゃなく、お皿に乗っているチーズインハンバーグは少し温かい程度になっているため、とろとろのチーズとまでは言えないだろうけど。

 それでも、十分に美味しいはずだ。

 ヘレーナさん達も、精魂込めて作ってくれていたからな。


「……ほのかに香るチーズの匂いが、食欲をそそりますね」

「グルゥ、グルル」


 鼻をひくつかせるクレアに同意するように、フェリーも姿を現したチーズインハンバーグに釘づけになりつつ鳴く。

 涎が垂れそうだけど、よく我慢できている方か。


「食べるのは、全員分揃ってからだからもう少しまってくれよー。それから次は……」


 もう一つ、整列するフェンリル達の前に置かれている背の低いテーブル、地面への直置きで食器を汚さないというのもあるけど、体の大きなフェンリル達が低い場所にあると食べづらそうなのを防ぐための物だが……。

 そのテーブルに置いてあるフェリーの前の物、片方はチーズインハンバーグの載ったお皿で、さらにもう一つ、大きな深皿がある。

 まぁフェンリル用なので、人で考えると数人分の大皿になるし、よくこれだけ大きなお皿を全員分用意できたなぁと思うけどそれはともかくとして。

 深皿の方の蓋を開けて、中身をフェリーやクレアに見せる。


「こっちは、ハンバーグを焼い……てはいるけど、煮込んだものだね。煮込みハンバーグ」

「煮込んだハンバーグですか。先程から周辺に漂っている濃厚な匂いは、こちらのようですね」

「グルゥ」


 ホワンと深皿の中に閉じ込められていた匂いと、かすかな湯気が解放されて周囲に広がる。

 蓋をしているとはいえ、匂いなどは漏れていたんだろう、クレアの言う通り今庭に充満している美味しそうな匂いのほとんどは、こちらの煮込みハンバーグの方だ。


「これは、ヘレーナさんが作ったソースに、他にも食材を追加してしばらく煮込んだ物で、肉汁も逃がさず余す事なく味わえる料理、かな」


 チーズは人には評判がいいみたいだけど、フェンリル達は大好きという程ではない……まぁ美味しそうに食べるには食べるけど。

 だから実際はチーズインハンバーグではなく、こちらの煮込みハンバーグが俺の本命。

 肉汁の美味しさも逃さず加わるため、ハンバーグ好きなフェリーは絶対気に入ってくれると思う。

 まぁ、人用よりも少しだけ薄味に作ってあるみたいだけど、塩分その他、人が食べて大丈夫なら問題ないというのが、以前のカレー作りでわかったので、あまり大差はない。


 それどころか、味付けを薄めにしてあるために肉の美味しさが特に強調されていて、味見した時はむしろこちらの方がいいかも? と俺も思うくらいだった。

 調理されている食べ物を好むようになったフェンリルたちは、どちらかというと濃い目の味を好んでいるのもいるけど。

 煮込むためのソースは、デミグラスソースを基本にトマトを追加して、甘味と酸味が加わっている。

 デミトマトソースと言うべきかな? トマトの甘味が強いけど、煮込む事でハンバーグからしみ出した肉汁と絡まって、今まで感じた事のない美味しさがあった。


 まぁ、ハンバーグの素材と言うか、お肉の質が日本で俺がよく食べていた安物ではないから、というのも大きいかな。

 ちなみにソースと一緒に煮込む前に、軽く焼いているんだけど、その時出た肉汁も一緒に煮込んでいるので、うま味はこれでもかという程含まれている。


「これがまた、ご飯やパンに合うんだ。まぁフェリー達は、ハンバーグだけでいいかもしれないけど」

「うぅ、匂いを感じて、実際に見るだけで涎が出てしまいそうです……」

「ははは、俺も味見はしたけど、改めて見るとその気持ちはよくわかるよ。それに、フェンリル達の中には実際に涎が出ているのもいるしね」

「ジュル……グルゥ!」


 口元を抑えるクレアに笑っていると、フェリーが自分はよだれを垂らしてなんかいない! と言うように鳴く。

 が、その直前に唾をのみ込んだのは見逃していないぞ……?

 というやり取りはともかく、そろそろ準備も終わって、フェンリル達の前に大量のチーズインハンバーグと煮込みハンバーグが並んだ。

 ハンバーグ作りは、単純な作業が多いけど量が多いため、リーザとかも手伝っていた。


 一緒に遊んでくれるフェンリル達に喜んでもらおうと、子供達もだったな。

 その子供達は、もうフェンリル達の事よりも食べる事に強く関心を持って行かれているみたいだ。

 そろそろ、我慢させるのも酷か……。


「それじゃ、皆で食べようか」


 頃合いを見計らい、というか準備ができたとライラさんから合図を受け取ったので、全員に聞こえるように言葉を発し、夕食が始まる。

 エッケンハルトさん達、普段通りのテーブルについている人達も待ちきれなかったのか、凄い勢いで食べ始めた。

 俺やクレアは、フェリーやレオ、シェリーと一緒に今日はフェンリル達のすぐ近くに用意してもらって、そこで食べ始める。


「ん! 切った中からとろりと流れ出るチーズ。それと一緒に口の中に入れると、チーズの甘味とソースがよく絡んで、とろけそうな程です!」

「グルゥ、グルル!」


 お行儀よくナイフとフォークでチーズインハンバーグを一口サイズに切って口に運んだクレアは、すぐに目を見開いて俺を見る。

 興奮を隠せない様子で、感想を言い募る。

 フェリーの方は、感想を伝えるとかよりも必死になって食べているようだ。

 レオや他のフェンリル達も同じような感じだな、個体によってはチーズインハンバーグを先に食べていたり、煮込みハンバーグの方に食いついたりと、様々だが。


 リーザは……何やら使い慣れないナイフとフォークで四苦八苦しながら、何とか食べているみたいだ。

 最近、誰が言ったわけではないんだけど、クレアを見習うというか食事する様子を真似ようとしているらしい。

 親代わりとしては、誰よりも上品な食べ方をするクレア――マリエッタさんも同じくだが、そのどちらかを真似るのは悪い事じゃないと思っている。


 いずれ、クレアかマリエッタさんにマナー講座というか、食事の仕方を教えてもらうのもいいかな、俺も同じくだが。

 マリエッタさんは、厳しそうなのでクレアの方がいいかもしれないが。


「キィ!」

「キャウ! キャウ!」

「美味しいですね、ラーレ、シェリー!」


 がつがつと食べる皆を微笑ましく見ながら、ティルラちゃんの方に目を向けると、そちらではラーレやシェリーと一緒に食べる姿が。

 シェリーはわかっていたけど、ラーレの方も今回のハンバーグアレンジはお気に召した様子で、くちばしで勢いよくついばみながら食べている。

 コッカー達も同じくだな……くちばしでもちゃんと咀嚼して味わっている様子なのが、少し面白い。

 俺の知っている鳥の食事風景とはだいぶ違うなぁ。


 また、エッケンハルトさんやエルケリッヒさんなど、少し離れた場所での貴族の方達は……。


「んむ。煮込みハンバーグと言ったか。これは味わい深いな。柔らかく、口の中でほろほろとほどけて行くようでありながら、しっかりとした味が広がる。それでいて、食べ甲斐がある」

「チーズインハンバーグの方も、素晴らしいですぞ父上。チーズとハンバーグが絡まって、独特の歯応えがあります。ソースはこれまでと同じですが、それがチーズと合わさって別の楽しさを口の中で繰り広げるようです」

「どちらも、食べる手が止まりませんね。ついつい食べ過ぎてしまいそうですし、そうなるでしょうけど……これはむしろ食べ過ぎる事こそが礼儀と言える程」

「うんうん、やっぱりハンバーグにもご飯が合うなぁ。特に煮込みハンバーグなんか、ご飯が進んで進んで……」


 等々、エルケリッヒさん、エッケンハルトさん、マリエッタさん、ユートさんがそれぞれ楽しそうに味の評価をしながら、食べ進めていた。

 他の人もそう変わらない様子で、今回のハンバーグアレンジは大成功と言って良さそうだ。

 特にフェンリル達と子供達はおかわりまでして、大きくなったお腹を抱えて満足そうになったくらいだ……食べ過ぎは良くないけど、今日は良しとしようかな。

 自分もハンバーグアレンジの味を楽しみながら、皆の様子を見て内心でガッツポーズし、フェリー達には十分すぎるくらいのご褒美になった事を喜ぶ。


 あと、俺と同じく皆の様子を見て満足そうだったヘレーナさんとも目が合ったけど、サムズアップすると嬉しそうに頷いていた。

 他にも、目玉焼きハンバーグなんてのもあるけど……あっちは卵の数が限られているから、そのうちかなぁ、なんて考えながら。

 まぁ美味しさと言うか、皆に人気になりそうなのは今回のアレンジの方だしな。

 ちなみに夕食後、ティータイムが終わっても動けない人やフェンリルが続出し、美味しくて食べ過ぎるのも問題だなと、ヘレーナさんと一緒に苦笑したりもしたけども――。



「旦那様、薬草畑の方は当初の予定よりも順調で、いつでも開始させられる状態になりました。クラウフェルト商会を開始するまでに予定していた、薬草、薬の量よりも確保が多い程です」


 ハンバーグアレンジを披露した翌日、昼食後の執務室でアルフレットさんにそう報告される。


「そうですか。毎日畑を見ていてわかってはいましたが、まとめて情報として見てみると実感が湧きますね」


 椿やジュウヤク、カレーのための香料栽培など、予定外の物はあったにしても、順調に『雑草栽培』による薬草栽培で数を増やすのは上手く行っていた。

 まぁ、予定外の物の方はさすがにまだ大量に用意できる状態ではないけど、薬草畑――クラウフェルトとしてはいつでも動き出せる状況だ。

 ちなみに、アルフレットさんが「クラウフェルト商会」と言ったのは、今のところは薬草や薬を専門に卸しや販売をする組織として、名称が決まってからはそちらの呼び方が定着した。


 まぁクラウフェルト商会がいつでも動き出せる、とはいってもまだまだ森の調査は続いているので、クレアなど外へと販売網を広げる営業班、と言えばいいのかな? そちらは延期になるだろうし、そもそも薬草作り自体は毎日行っているので、もう動き出しているとも言えるんだけど。

 ただ作ってもらっていた印章、要はハンコまたは印鑑などができて、公文書的な物も作成し終えたため、正式に動き出すのを待つばかりとなっているってわけだな。


「畑の土の方は、問題ない事を確認していますが、従業員さんの方は大丈夫ですか?」

「はい。一度旦那様の能力で薬草を作った場所の土は痩せてしまいますが、別邸の時とは違って使える土の状態を保っています。さらにそこで追加の薬草をとなれば別ですが、それを避けるため他の場所との土を交換させる作業も問題なく。また、土の交換と共にしばらく休ませて土の状態を良くするのも、ペータさんが取り組んでくれております」


 『雑草栽培』によって薬草が作られた場所、その土は急速な植物の成長に力が使われるため、別邸の特に手入れをする事がない場所では、コッカー達用の砂になるくらい、サラサラでとても植物が育たない物になっていた。

 けど、ちゃんと手入れして良い状態になっている土、つまりクラウフェルトの畑だと、多少痩せてしまい続けて栽培するのは駄目だが、一度だけなら問題ないようだ。

 連続で使用しないため、区分けをして休耕地のように休ませる畑を決め、順番に使っていっているんだけど、さらに早く使用できるようにするため、別の場所との土を交換させる作業も行っていた。


 さらに言えば、そこに腐葉土などの肥料を加えているので、近いうちにまた使えるようになる、という算段だ。

 薬草自体は手入れも多くはいらないため、従業員さんの方も問題なく動けているようだ。


「現在は、備蓄のために二段階目を採取し、最終段階の物は生育を待っています。順調すぎると言えるほどに数が増えています」

「そうですね……」


 クラウフェルトでの『雑草栽培』、そして採取量を増やすための畑での栽培をまとめると――。

 まず、俺が『雑草栽培』で増やしたい植物を作るのが第一段階。

 そして、翌日には倍に増えて元の植物が枯れる、これがアルフレットさんが言っている第二段階だ。

 さし当ってミリナちゃんが薬を作る材料にしたり、そのまま使うためにひとまずの確保と備蓄のため、今はこの段階で採取している状況だ。


 その後、使われた土の交換だな。

 ゆくゆくは、第二段階の翌々日まで待っての最終段階でさらに倍……つまり、最初に十の薬草を作ったら最終段階では三十になるわけだが、そこで採取するように考えている。

 最終段階になると、『雑草栽培』の影響がほとんどなくなる代わりに、土から吸い取る栄養も少なくなり、ゆっくりと本来の植物らしい成長をするため、数日から月単位が必要になる。

 ここである程度の手入れが必要になって来るが、質としてはギフトの影響を保っているのか、第二段階や第一段階と変わらず一級品との評価だ。


 最終段階の場合は、土への影響は通常の作物を育てる時と変わらないのも試しているので、そこでは土の交換はペータさん達が必要と感じなければやらない。

 ただし一応休ませる期間を作るといった程度だ。

 そうして段々と数を増やしていき、最後には緊急性があったり何かで数が必要な物は、第一段階や第二段階で採取するが、基本は最終段階の物を使っていく――という流れを予定している。

 元手が『雑草栽培』を使う俺の手間と、農業よりも簡単な畑の管理なので、収益という点では全く心配していないしされていない。


 多分、公爵家が運営している各街でのお店で販売するだけで、この屋敷の維持や使用人さん、従業員さんの給金も賄えると試算されているな。

 とはいえ、駅馬が開始していないためフェンリル達が大量に留まっているため、その食費がちょっと心配ではあるけど……まぁフェンリル達は狩りでお肉を持って帰ってくれるからな。

 悪い事ばかりじゃないし、色々協力してもらっているから食費を削るとかは全然考えていないんだけどな――。



読んで下さった方、皆様に感謝を。


別作品も連載投稿しております。

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