フェンリル調査小隊が発足しそうでした
「多分、どこかで誰かが発案した事はあるんだと思うよ。ただそれを作れるか、広められる地位にいるかとか、色々あるからねぇ」
俺の独り言が聞こえたんだろう。
少し遠い目をしながらユートさんがそう言った。
「発案できても作れなかったり、多くの人に広められなかったり?」
「うん。今はこの国、特にこの公爵領など国内でも平和な地域は増えたけど、以前はそうでもなかったしね。戦争とかもあったわけで……娯楽どころではなかった、という状況も大きいかな。そして、平和で平穏な日々が訪れても、娯楽が広まるかはまた別の話だよ。考えて、作ろうとした人も多分いるだろうけどね。ほら、文化と一緒だよ。広めようとしても、諸々の事情で広まらなかったり、一度は広まってもすたれてしまったりとね。それこそ、まだこの国のある場所が魔境と呼ばれていた頃は、娯楽どころじゃなかったし……」
一応、少し声は小さめで、俺以外に聞こえないように話すユートさん。
まぁエッケンハルトさん達は何やら議論が白熱しているようで、多少大きな声でも聞こえてなさそうだけど。
ともかく、今は穏やかな毎日が過ごせているこの場所でも、色々と大変な事があったんだなぁ。
戦争とか経験した事がなくてよくわからないけど、娯楽なんて考えられないんだろうなくらいは、なんとなくわかる。
殺伐としている状況だからこそ、というのもあるけど……そういった物を作れなかったとかもありそうだ……。
「おぉそうだ、タクミ殿。カッフェールの街に送る者が決まったのだが……」
「わかりました、それじゃ早速フェリーに話をして……」
ある程度決まったのか、リバーシ作りなどの相談を終えたエッケンハルトさんから、思い出したように伝えられる。
そういえば、調査をするためにフェンリルを借りたいという話だったな。
すぐにでも出発できるよう、今準備をしているところらしいのでフェリーに話しておかないと……。
「えーと、何人になりますか?」
「調査隊にいる三人だな。そのうち一人は、タクミ殿もあった事のある者だぞ?」
「そうなんですか?」
「うむ。ラクトスに送っていた密偵の一人だな」
「あぁ、成る程」
密偵の一人が何故調査隊に、と思ったけどスラムの情報収集の報告のため、ついでと調査隊に紛れてこちらに来たって事らしい。
ちなみに、プレルスさんのように調査隊をまとめる隊長さん達には、知らされていないみたいだ。
まぁ密偵という事からして、味方であっても全て知られていたら動きにくいとかそういうのなんだろう。
「じゃあ三人ですから、フェンリル三体ですかね?」
「そうだな。物資……まぁ大半が食糧だろうが、それらの準備はこちらに任せてくれ。フェンリル達の要望に応えられる者も選別している」
「凝った物は必要ないですけど、フェンリル達も結構グルメになりましたからね」
元々なのか、俺のせいなのかはわからないが……本来は森に棲んで生肉などをよく食べていた、とフェリーに聞いた。
けどこちらに来て、というか俺達と関わるようになって調理された物を食べる事が多く、というかそればかりでもう今は生肉なんて食べたくないと言うフェンリルも多いとか。
それを言っていたフェリーも、ハンバーグが大好物になっているし同様のフェンリルはかなり多いからなぁ。
だからだろう、エッケンハルトさんの方でも調査に送る三人のうち一人は、それなりに料理ができる人を選んだようだ。
ラクトスとランジ村を往復する輸送隊とは違い、一日二日で済む調査じゃないだろうからな……多分フェンリルでも移動に片道二、三日はかかるだろうし。
その間に食べる物は重要か。
街に到着すれば、それなりの物を買って食べる事はできるだろうけど。
「道中、だけじゃなくカッフェールの街にフェンリルが行くのは、どうなっていますか?」
「こちらから先んじて報せを送る事を考えたが、どうせフェンリルが追い越すだろうからな。それならばと調査の者達に私の親書を持たせる。ある程度、民達は驚いて恐れる者もいるだろうが……少なくとも衛兵を含む公爵家に関する者達は、受け入れさせるつもりだ」
「わかりました。それを含めてフェリーに相談してきます」
「すまんが、頼んだ」
というわけで、フェリーに話を聞くため俺は再び庭へ。
ティルラちゃんはカードゲームに夢中になっているようだったので、邪魔するのも悪いしそのままにしておいた。
むしろ、リーザを遊びに参加させるのもいいかもなぁ……個別ではなく、チームとして一緒になって遊ぶ事もできそうだし、それならレオも参加できるだろうから。
なんて考えながら、屋敷の廊下を移動した。
「おーい、フェリー! ちょっと相談したい事があるから来てくれるかー? レオかリーザも!」
庭に出て、リーザを乗せたレオを先頭に、フェリーやフェン、リルルとさらに他のフェンリル達が扇型に陣形を組むように走っているの中、フェリーへと声をかける。
なんだか、どこかへ突撃するような形だったけど、おそらくあまり意味はなくただ単に元気が有り余って、走っていただけだろう。
まぁそれも遊びの範疇か……リーザはレオの背中に乗って手を振りつつ、なんだかフェンリル達を指揮しているようでもあるけど。
「グルゥ?」
「ワフ?」
「パパ、どうしたのー?」
「……レオとリーザのどちらかはまだ遊んでても良かったんだけど、まぁいいか」
すぐにフェリーと一緒にリーザを乗せたレオもこちらに来た。
他のフェンリル達は、少し残念そうにしながらもまだ庭を駆けまわるのを続けるようだ……走り足りないんだろうな。
レオとリーザがいてくれれば、フェリーの通訳になってくれるしこれで話ができるな。
「フェリー、ちょっと遠くの方を調査する必要があって、フェンリルの中から数体を借りたいんだけど……」
とりあえず、顔を近づけて来るレオを撫でながら、フェリーに事情を説明。
調査他のため、距離としてラクトスよりもさらに離れた場所へ、調査隊の人を乗せて行く事などを話す。
人数もそうだけど、ちゃんと道中の食事などもいい物が出るなど、フェンリル側としても悪くない条件である事も同時に伝えた――。
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