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異世界転移したら飼っていた犬が最強になりました~最強と言われるシルバーフェンリルと俺がギフトで異世界暮らしを始めたら~【Web版】  作者: 龍央


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143/2006

二コラさんが屋敷に帰ってきました



「ただいま帰りました」

「ニコラさん」


 鍛錬のため、裏庭に戻ろうと玄関ホールを通っていた時に、ちょうど玄関が開いてニコラさんが帰って来た。

 その後、セバスチャンさんを呼んで、客間へ移動してエッケンハルトさんに報せた事の報告。

 俺も同席して聞く事になった。


「ニコラ、旦那様は何と?」

「エッケンハルト様は……」


 ニコラさんは、ちょうどこの屋敷と本邸の真ん中あたりで、エッケンハルトさんに会えたらしい。

 思ったよりもエッケンハルトさんが、帰りを急がずゆっくり進んでたおかげと言っていた。

 俺が渡した薬草も役に立ったみたいで、お礼を言われた。

 助けになってくれたなら良かった。


「成る程……わかりました。疲れたでしょう、今日は休みなさい」

「はっ」


 話し終えたニコラさんは、客間を出て行く。

 強行軍だっただろうから、相当疲れてるだろうな。


「さて、私はこの事をクレアお嬢様に伝えて来ます」

「はい」


 クレアさんに話した内容を伝えるため、セバスチャンさんも客間を出て行く。

 残ったのは、俺とレオ、ライラさんだけだ。

 ミリナちゃんとゲルダさんは、裏庭でティルラちゃんとシェリーを見てくれている。


「様子見……か」


 今聞いた話を頭の中で整理する。

 エッケンハルトさんに報告したニコラさんは、ラクトスの街を出る前に調べてくれて、粗悪な薬を売る店の事を把握していた。

 多分街から出る前に、どこかでセバスチャンさんと打ち合わせしたんだろう。

 伯爵家が関わっている事、街の薬草や薬を買い占めてる事、疫病の広がりと商売を始めたタイミングが近い事まで知っていた。

 それらを全てエッケンハルトさんに伝え、帰って来たのは様子見という指示だった。


「エッケンハルトさんでも、さすがにすぐどうこうは出来ないか……」


 公爵家の領内にある店だから、取り潰す事は簡単に出来るが、貴族同士の繋がりがあるためその後が面倒になる。

 だから、決定的な証拠を掴むまでは様子を見るという事だ。

 まぁ、もちろんセバスチャンさんは証拠を掴むよう色々調べているようだけどな。

 それに、エッケンハルトさんの方でも、伯爵家に探りを入れるとの事だ。

 すぐに事態が動く事は無いだろうが、早いとこ住民を苦しめている店を何とかしたいものだ。


「ま、俺が考えてても仕方ないか」


 ライラさんが用意してくれたお茶を一気に飲み干して、俺は気持ちを切り替えるために裏庭へ向かった。


「何でミリナちゃんも一緒に走ってるんだ?」

「はぁ……はぁ……体力には自信があったので……」


 裏庭につくと、ティルラちゃんと一緒にシェリーとミリナちゃんがランニングをしていた。

 シェリーはいつもの事だからわかるが、ミリナちゃんが一緒に走る必要は無いだろうに。

 走り終わって、息を整えながらミリナちゃんは楽しそうな笑顔。

 疲れてそうだが、楽しそうだから良いか。


「まぁ、良いか。とりあえず、昼食までここで鍛錬するけど、良いかい?」

「はい。昼食後は勉強ですね!」


 昼食後の勉強の前に、まずは鍛錬だ。

 体を動かせば、少しは嫌な気分も晴れるだろう。

 粗悪な店に対する有効な手立てが今の所無い事に、俺はいつの間にか嫌悪感を抱いていたようだ。

 その後は、ライラさんが呼びに来るまで鍛錬に集中した。

 勉強に時間を取られるために、鍛錬の時間が減ってしまう分も集中して打ち込んだせいで、ミリナちゃんが心配していたけど、俺には薬草があるから大丈夫だ。

 ……勉強の時、眠気に襲われないよう気を付けよう。


「頑張って勉強します!」


 昼食後、昨日と同じように客間で勉強を始める。

 準備を終えて、ミリナちゃんの気合が入った声を聞きながら、本を開く。

 昨日、遅くまで本を読んでいただけあって、勉強も捗った。

 おかげで、ミリナちゃんの質問にもスムーズに答える事が出来た。

 ……睡眠時間を削った甲斐があったな。


「タクミ様、夕食のお時間です」

「わかりました。ミリナちゃん、今日はここまでにしておこう」

「はい」


 夕食の準備が整ったと、伝えに来てくれたゲルダさんに頷いて、ミリナちゃんとの勉強を終える。

 思ったよりも、本の進みが速いのは、予習をしていたおかげか、それとも本がわかりやすいからなのか。

 知識がちゃんと頭に入ってる事を確認しながら、夕食のため食堂へと向かった。

 ミリナちゃんは、今日から使用人の扱いと同様になるため、別々だ。

 使用人さん達には別で、食事をする場所があるらしいからな。


「タクミさん、セバスチャンから話は聞きました」

「はい」


 夕食時、クレアさんもセバスチャンさんから、エッケンハルトさんからの事を聞いたようだ。

 悔しそうな表情は、俺と同じように例の店に対して、何もできない事を口惜しく思っているからだろうか。

 エッケンハルトさんが伯爵の方を突いて何か動きがあるか、それとも、セバスチャンさんが証拠を掴むまで、何も出来ないからな……。


「ワフー」

「キャゥキャゥ」


 俺とクレアさんが暗い雰囲気を出しているからか、レオとシェリーが空気を変えようとしてくれた。

 そうだな……ここで暗くなってても何も変わらないよな。

 レオとシェリーに元気付けられたおかげで、夕食は和やかに食べる事が出来た。


「きゃははは、レオ様。それはくすぐったいですよー」

「ワフワフ」

「キャゥー」


 レオやシェリーとティルラちゃんが遊ぶのを、久しぶりに眺めながら食後のティータイム。

 もしかすると、ティルラちゃんも暗い雰囲気を感じ取って、明るくしようとしてくれているのかもしれないな。


「タクミさん、すみませんでした」

「いえ、謝るのは俺もですよ。レオやシェリー、ティルラちゃんに助けられました」


 暗くなってしまった事を謝るクレアさんに、レオ達を見ながら苦笑を返す。

 子供たちは、大人の雰囲気に敏感だからな……これからは気を付けよう。

 ……レオは子供じゃないかもしれないが。

 その後はクレアさんと朗らかに笑い合いながら、レオ達を見て過ごす。

 ティルラちゃんがレオやシェリーと遊んでる姿は、やっぱり和むね。


「では、おやすみなさい」

「おやすみなさい、クレアさん」


 ティータイムの後は、クレアさんに挨拶をして、俺とティルラちゃんは一緒に裏庭へ。

 今日も素振りをして、その日を終わる。

 一応、最後まで読んでなかった薬の本を読み切って、予習を終えてから寝た。

 明日は、セバスチャンさんに新しい本が無いか聞いてみよう。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


別作品も連載投稿しております。

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面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はブックマークを是非お願い致します。


作品を続ける上で重要なモチベーションアップになりますので、どうかよろしくお願い致します。

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