孤児院で話を聞きました
「ありがとうございました」
「「「「「ありがとうございました!」」」」」
ラモギの栽培を終えて、孤児院の皆に配った。
収穫したラモギはもちろん、すぐに俺が乾燥させて使えるようにした。
それを受け取ったアンナさん達は、すぐに風邪で横になってる子供達に飲ませた。
数十分後くらいには、ほとんどが元気になったようだ。
さすがにまだ数人は横になったままだけどな。
「いえいえ、皆さんの役に立てて良かったですよ」
アンナさんを始め、元気になった子供達が集まって一斉にお礼を言われた。
病で苦しんでる表情では無く、今はもう元気いっぱいの笑顔だ。
子供達が苦しんでる姿は、あまり見たくないからな。
「それにしても、こんな短時間で皆の分の薬を用意出来るなんて」
「タクミさんは優秀な薬師だからね」
俺がすぐに、大量のラモギを薬にして用意した事に驚いてるアンナさんだが、クレアさんは優秀な薬師という事で説明している。
……それで説明した事になるんだろうか?
「あと、病に罹って無かった皆さんも、こちらを」
「皆に飲ませた物と同じ物ですね……ですが何故?」
「予防というか、念のためですよ。もしかしたら症状が出ていないだけで、皆さんも疫病に罹っているかもしれませんからね」
予防という言葉がこの世界にあるかどうかわからない……医療はまだまだ発展して無さそうだからな。
同じく潜伏期間というのもだ。
詳しく説明するのも面倒だし、念のためという事で納得してもらおう。
「クレアさんやセバスチャンさんも。あと、外にいるティルラちゃんやヨハンナさん達も飲んでいて下さい」
「わかりました」
「すぐに渡して来ましょう」
クレアさん達にもラモギの薬を渡す。
セバスチャンさんは、薬を受け取ってすぐ水と一緒にティルラちゃん達の所へ行った。
ティルラちゃんは以前に罹ってるから、大丈夫だと思うがこれも念のためだな。
このために、多めに栽培していた。
孤児院に蔓延してるなら、この地域に広がってるかもしれない病気だ、屋敷に帰ったら使用人さん達の分も作ろうと思う。
「しかし、病気が見立て通りで良かったです」
「そうですね。けど、ラモギならこの街でも安く売ってるはずです……アンナ、どうなってるの?」
「それが……疫病が流行り出して、街の店にある薬草がほとんど買い占められているのです。一部の人が原因不明の病を治すために、色んな薬を試しているのだと聞きました」
お金を持ってる人が、病に罹った人を治すために色んな薬や薬草を試しているんだろう。
おかげで、孤児院が買う薬草や薬が無かったという訳か。
「街を回って色々な店に聞いてみましたが、2週間程前から薬草は入る先から買い占められていたようです。困っていた時に、新しく出来た店にて、安くラモギを買えるとの事だったのでそこで……」
「成る程、そこが貴族と関わりがあると言って悪質な薬を売っている店ね」
「戻りました」
アンナさんから話を聞いているところで、セバスチャンさんが戻って来た。
クレアさんは今聞いた話を、セバスチャンさんに伝える。
「そういう事でしたか……道理でティルラ様の時もラモギが買えなかったわけですな」
ティルラちゃんが病に罹った時も、ラモギの入手が遅れた。
それは街で薬が買い占められていたからなんだな。
おかげで、クレアさんが屋敷を飛び出したわけか。
「その悪質な店と疫病……何か怪しいわね……」
「そうですな……これはさらに調べる必要がありそうです」
クレアさんとセバスチャンさんが、二人で相談しているが何かあるんだろうか?
「どうかしたんですか?」
「タクミさん。悪質な店が出て来た時期と疫病が広まった時期が重なり過ぎているんです」
「聞いた話を総合すると、悪質な店が出て来た時期が2週間以上前。疫病が広がり始めたのも2週間くらい前との事。そして、広がった時期からすぐに各店での薬草を買い占める……」
「全てその店が仕組んだ事、と?」
「いえ、全てが全てという訳ではありませんが……少なくとも、薬草の買い占めは悪質な店の仕業だと推測致します」
ふむ……つまり、疫病の広まりを察知した悪質な業者が店を開く。
その店はラクトスにある薬草を取り扱う店から、商品を買い占めて、自分達の店に客がくるように仕向けた……という事かな。
「……もしかすると、買い占めた薬を薄めて売っているのかもしれませんね」
「その可能性も有り得ますね。……クレアお嬢様、私は少々席を外します」
「ええ。頼んだわ」
クレアさんに断って、セバスチャンさんが部屋から出て行く。
「セバスチャンさんはどうしたんですか?」
「今回の問題の調査に向かいました。ニコラ一人に任せるのは荷が重そうですからね。屋敷から人を呼んで調査と、お父様への報告の使いを出すのだと思います」
「成る程」
徹底して調査と報告から対処の必要があると思ったから、セバスチャンさんが動いたんだな。
しかし、ここに残った俺達はどうすれば良いのか。
「セバスチャンが戻るまで、ここで過ごしてもいいかしら、アンナ?」
「どうぞ、お好きなだけ滞在して下さい。子供達も喜びます」
どうやらしばらくここにいる事になるようだ。
アンナさんに許可を取って、子供達を庭に集めてもらう。
もちろん、元気に動ける子供達だけだ、まだ辛そうな子がいるから、その子達にはゆっくり休んでもらう。
「よーし、レオ。皆と遊んで良いぞー」
「ワフ」
孤児院の外からレオを連れて来た俺は、庭にいる子供達とティルラちゃんと遊ばせる。
庭は屋敷の裏庭程では無いが、十分な広さがあるからレオでも入れる。
一応、軽く走るくらいなら出来そうだしな。
「すごい大きいー」
「わーモフモフですー」
「格好良いなー」
「キャッキャッ」
「久しぶりに皆と遊べます!」
「キャゥー」
レオの登場に、好奇心旺盛な子供達ははしゃいで喜ぶ。
以前もここに来た事のあるティルラちゃんは、同世代の子供達と遊べる事に喜んでいるようだ。
シェリーもレオの背中の上で楽しそうに声を上げている。
「元気になって良かったですね」
「ええ、タクミさんのおかげです。子供達の楽しそうな姿を見れるのは喜ばしいですね」
「クレアお嬢様、タクミ様、本当にありがとうございました」
庭の端、建物と繋がってる場所にテーブルを置いて、俺とクレアさん、アンナさんは一緒に座って子供達とレオが遊ぶ姿を眺める。
アンナさんから改めてお礼を言われるが、この光景を見られただけで十分だ。
俺達はしばらく、微笑みながら庭で遊ぶ子供達の笑顔を眺めていた。
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