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キミのくれたモノ  作者: 山路空太
46/53

46.目指せ赤点ゼロ

 翌日からはいつも通りの日常へと戻っていく。

 あんなに慌しく文化祭やら中間テストやらで忙しがったというのに、既に次の期末テストに向けての授業は始まる。

 学校側が設定した日程にも関わらず、去年同様この時期の授業はスピードが速い。


 ただ学校に来て授業を受ける。贅沢かもしれないが、毎日同じことの繰り返しは流石に少し飽きてくる。毎週水曜日は図書委員の仕事でお昼休みはずっと図書館にいる。勿論夏澄も一緒だ。

 夏澄は受付にいるのだが毎週のように利用者が増えてくる。みんな『キミくん』の存在など知らないけど、知ったらどんな気持ちだろうな。なんて考えたりもする。


 以前から唯一変わったことと言えば座席だろうか?

 僕の席は相変わらず同じ場所だったが夏澄は対角の窓際一番前。なっちゃんはその一つ後ろの席になった。なっちゃんの筆箱にはあの日買った猫のミャオ君のストラップがついている。どうやらえらく気に入ってくれたようだ。

 夏澄の病気の方も定期検診は行っているけどすこぶる体調は良さそうだった。



 良い意味でも悪い意味でもあまり変化のない日常(たいくつ)はあっという間に1ヶ月近く経つ。するとまた悪夢のテストがやってくる。

 今回は必ず勝つ。


 前回とは違い各々が自宅で勉強していた。

 僕はなっちゃんのお母さんに頼まれてなっちゃんと一緒に勉強をする。

 やはり勉強しようとしないなっちゃんにはかなり手を焼く。そんな時、なっちゃんの方から提案を受ける。

「じゃあさ、もし今回赤点取らなかったら夏休み水族館に連れて行ってよ!」

 急にじゃあと言われてもとは思ったが、それで勉強してくれるなら喜んで行こうではないか。

「わかった。約束するよ。まぁ可能性低いだろうけど一応条件も含めて夏澄たちにも連絡しとくよ」

 そう言って携帯を取り出したのだが、すぐさま携帯を奪われる。


「待って! 私は久しぶりにこうくんと二人で行きたいの! 遊園地だってハブられたんだから……」

 そう言って少し肩を落としている。

 ハブってはないけどなぁ……と心の中でツッコミつつも一応了承する。

「わかった。ただ条件忘れないでよ」

 一応釘を刺しておく。

「もちろん! そうと決まったら早速勉強よ!」

 何やらモチベーションは上がったようだ。

「頑張れーなっちゃん」

 心なき声援を送る。

「よし! こうくん教えて!」

 ズコォー……

 思わず床に頭を擦り付ける。

「やっぱそうなるのね」

 やれやれとは思ったが、どうやら本当にやる気だけはあるらしいし、今までよりも遥かに勉強しやすかった。



「ねぇ、公星。蓮希ちゃん授業中に私に沢山質問してくるんだけど何か知らない?」

それはある日の授業終わりだった。

「あーそれは……」

『みんなには内緒ね!』

 なっちゃんの言葉を思い出す。

「多分遊園地行けなかった原因の補習を嫌がってるんじゃない?」

 我ながら上手く言えたんじゃないだろうか?

「あー、そっか。じゃあ夏祭りでもみんなで行こうよ。今度こそ五人でさ」

 夏祭りか、久し振りに行くのもいいな。

「でも夏澄『キミくん』は?」

「んー今誘ってるんだけどどーなんだろ?」

「そーなんだ。じゃあ行けたら僕ら四人で行くよ。応援してる」

 そう言った僕は今、ちゃんと笑えているだろうか?

 少し不安に思う。

「それはそうと、今回もやる?」

 夏澄はなにやら不敵な笑みを浮かべている。

「やるって何?」

勘づいてはいるがあえて聞き返す。

「テストの点数勝負に決まってるじゃん。私は別に受けてあげても良いよ?」

 上から目線が何とも悔しい。

「是非お願いします。科目は夏澄の好きな英語でお願いします」

「じゃあ決まりね」

 バチバチと火花が散るように互いに睨み合う。


 僕と夏澄の二度目の対決。僕が絶対に勝って雪辱を晴らす。

 なっちゃんはまぁ赤点ないように頑張れ。今までないこと一回もなかったけど……


 そして、それぞれの目標へ向けたテストが幕を開ける。

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