フレッド・セレンディル先生の魔術講座2
はい、皆さんこんにちは。以前にも臨時講師をしたフレッド・セレンディルです。
今日は再び皆さんに対して講義の時間を持つ事になりました。よろしくおねがいしますね。
あれから数か月経ってますし、皆さんも『学園』で学んで随分知識が増えているかと思います。
前回は魔法の説明でほとんど時間を使ってしまったので、冒険者や宮廷魔術師視点でのお話があまり出来ませんでした。
ですので今回は出来うる限り皆さんの質問に答える形で進めて行きたいと思います。
普段の講義と同じような内容だと面白くないでしょうし、ね。
では、はじめていきましょう。
『冒険者って言えば戦士が多いけど、魔術師とどっちが強いの?』
うーん、何を強いと言うかによって違います。ハサミとナイフどっちが良く切れますか。
と言うのと同じで、ケースによって違うんですが、その答えだと面白くないので色々なケースを想定して比較のお話をしましょう。
ただし最初に認識しておいて欲しいのは、役割が違うので基本的に優劣は無いと言う事です。
ちなみに強いって言葉に僕が真っ先に思い浮かぶのは極まった神官戦士ですね。これは本気でやばいですよ。
えーと、まず、何も準備してない状態で、駆け出し同士が用意ドンで戦い始めたら距離にもよりますけど魔術師が負けます。
戦士がダッシュで寄ってくる間に一回攻撃魔法を一回撃ち込んでも殺せませんから。
スリープが効いたらこかせますが、転んだ衝撃で起きるのでやっぱり結構厳しいですね。
準備ありにしても、駆け出し同士だと魔術師側も準備出来る事が少ないから、負けると思います。
基本的に矢避けの呪いが使える位にならないとクロスボウでずどんされたら死にますね。僕等は脆いですから。
中級クラスになると用意ドンで戦っても一撃で殺せたり、足を潰せたりする威力の魔法が使えるのでワンチャンスあります。
準備もOKになるなら、矢避けやサーバント系の準備をすれば大分勝率は上がるんじゃないでしょうか?
上位、高位になってくると、戦士も多様化してくるから何とも言えないんですよね。
気?とか、何とか流法とか、良くわかんない事をしてくるのであんまり用意ドンでは戦わない方が良いです。
でもしっかり準備してたら確殺できますよ。
さっきから準備を連呼してますが、魔術師の強さって結局はどれだけの種類の魔術を的確に使えるかと、どれだけ準備が出来るか。これのみです。
究極に準備した例を出すなら、魔術を極めて不死者になってダンジョンを支配してダンジョンマスターになったって伝説の大魔術師ですね。
ダンジョン一個まるまる準備した魔術師なら、それこそ軍隊にも勝てますよ。あくまで伝説、ですけども。
『極まった神官戦士ってそんなにヤバイの?』
ああ、さっき例に出した奴ですね。怖いですよ。アレ。
以前に神聖魔法の説明したのを覚えてますか?
多分神の権能に接続してって説明したと思うんですが、要するに高位になればなるほど神の力を我がモノとして使うんです。
片手上げて何か言うだけでアンデッドが崩れ落ちて、ディバイン何とかって言うと魔法に対する抵抗力ガン上げしたり、即死する傷以外なら平然と治して戦い続けたりします。
ウォーハンマー振り回して魔物を片っ端から倒したりもしてましたね。攻撃魔法も持ってますよ。
大地の女神様の聖戦士でそんな方が居るのを知ってます。
真っ当に生きてたら神官戦士と敵対する事なんてそうそう無いですから心配しないでください。多くの神官さんは良い人ですから。
本当に極一部の邪神を崇めてる凶悪な神官戦士とかに会ったら、うーん。
即死させるか、精神力が尽きるまで物量で攻めるかですね。相手より数段腕の良い戦士なら即死させれますし、熟練の魔術師なら準備さえあれば圧殺出来ます。
『魔獣や魔物って強い?』
下位、中位、高位、その他ランク分けを超えたのとかいますけど、中位以降は基本的に人間よりスペックが高いですね。
攻撃力が高くて、防御力が高くて、生命力が高くて、機動力が高くて、頭も決して悪くなくて、と言うのを強いと呼ぶなら強いです。
でも人類は今の所魔獣や魔物に勝利して版図を広げているので、人間の方が強いと思いますよ。
と言うか、強くなろうとしてる人間は多いですが、強くなろうとする魔物とかってあまり居ないです。
だからキマイラならキマイラの範疇内の強さだなってわかりますし、シーサーペントとかでもサイズで強さの予測つきますから。
あ、人型の魔物は別ですよ。あの辺の亜人と魔物の区別って、差別発言ではないですが難しいんです。
つまり人型生命は人と同じく強くなろうとすると言うのは、冒険者になるなら覚えておいてください。
あともう一つだけ覚えておいて欲しいのは、スライムが怖いと言う事。
まずアイツ等は気配が薄いので、発見が酷くしにくいです。呼吸してないんじゃないかな……。
そして発見が遅れると取り込まれます。取り込まれたら引き剥がす方法は凍らしたり燃やすしかないです。
掴むとか出来ませんからね。水に入りながら水を掴む事ってできますか?
どんなに親しい仲間でも、美人の女の人でも、火を押し付けて焼いて下さい。じゃないと溶かされながら窒息して、凄惨な死に方します。
生きてるなら治療の方法って幾らでもありますからね。
『冒険者になりたいんだけど、アドバイスをください』
憧れと現実は違います。それでも冒険が好きだって気持ちが、冒険者には一番必要だと僕は個人的に思ってます。
でも具体的なアドバイスもしておくと、冒険者は役割分担が大事です。信頼出来る仲間を見つけて下さい。
本当に此れ大事でして、一人じゃ碌に野営も出来ませんから。頼もしい前衛、生命線の癒し手、世間に慣れた盗賊、なんかはほんと欠かせないと思います。
ただし役割分担が大事って事を踏まえた上で、他の役割に関しての知識も持って下さい。
勿論知識があるから役割分担出来てなくても大丈夫とか、他の分野に口を出せって事じゃないです。
知って居たら、例えば臨時で組む事になったメンバーが安心出来るのかどうか、その行動に不審な点が無いかとかが判りますよね。
専門外は専門外、でも知らないのも駄目です。
なる為のアドバイスじゃなくてなってからのアドバイスばっかりになっちゃいましたね。一番大事なのはきちんと生き残る事ですから。
あとなるだけならそんなに難しくないです。魔術師っていうのは貴重なので、なりたいってギルドで言えば逃がさない様にすぐさまきっちり仕込んでくれますよ。
『私は宮廷魔術師になりたいな。どうやってなるの?』
あ、なりたいです?
是非なって下さい大歓迎です。僕も後輩とか凄い欲しいんですよね。
っと、えーと、なり方ですよね。
2通りの方法があって、一つは研究成果を国に提出してそれが認められる事。勿論研究能力だけじゃなくて一通り呪文が扱える事も確認されますよ。
もう一つは何らかの手柄を立てて、国からスカウトされる事ですね。
手柄を立てるのって運次第なので、前者に関してアドバイスするんですが、僕は後者で宮廷魔術師になりました。
なのでこのアドバイスは僕の先輩の言葉をお借りします。
宮廷魔術師になれるだけの成果を出すには、その研究に必死になれる事は大前提として、でもそればっかりやってちゃダメなんだそうです。
それしかしてないと、行き詰った時に打開する視点が持てないし、自分で自分を追いつめてしまいます。
お洒落をしたり、美味しい物を食べたり、知らなかった知識を仕入れてみたり、そして気分を変えて研究を楽しむのが大事だとその先輩は言ってました。
実際その先輩はとても美人ですよ。宮廷魔術師になれたらご紹介しますね。
さてじゃあ、今日もこの位で終わりにします。
また呼ばれる事があったら、他の話もしますね。質問がある人は一人ずつどうぞ。長引きそうなら場所を変えましょう。
では、お疲れ様でした。
本日のお仕事自己評価65点。ぜんかいよりせつめいになれたきがします。




