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14 姉妹でお出掛け

「ローズは、一体いつから気付いていたの?」


 今一番人気のカフェに、今日はローズと遊びに来ていた。ローズが私の恋心を知っていた事も、レイノルズ様がローズを……サリバン辺境伯家を助けるために芝居を打っていたのも。


 それを知った上で、ローズは私に『あげる』と言っていたのは明白だ。私を王都に引っ張り出したのはローズの悪評だけれど、レイノルズ様に私の部屋を訪ねさせたのはローズに間違いない。


 手紙を書いた時期とドレスの汚れに気付いたのは偶然かもしれないけれど、手紙が届いて私たちが王都に来る日程を計算してやったのだとしたら……私も舌を巻く策士ぶりだ。


「お姉様覚えていないの? お姉様がはじめてのパーティーから帰ってきた時、私が好奇心で『素敵な方はいた?』って聞いたら、まだぽーっとした顔で『レイノルズ・モリガン様』って呟いたのよ。その後の夜会の後は何にも言わなかったじゃない。お姉様ってとっても分かりやすいんだからね?」


 仕事柄、人の名前と顔を覚えるのは得意な方だけれど、私もまだまだ修行が足りないみたいだわ。領主代行を任されてそれなりに腹芸は覚えたつもりだったけれど、今後はもっと頑張らないと。


 ……いえ、ローズは昔から他人の事をよく見ていた。きっと社交界をうまく渡っていくお母様に似ているのはローズで、私はきっと、お父様に似たのだろう。


 あの姉妹喧嘩のあと、ローズにはドレスの汚れについてちゃんと話して、ローズからも話を聞いた。ローズは顔を真っ赤にして恥ずかしいやら申し訳ないやらといった様子だった。


 しかし、初めてのパーティーで声を掛けてきた男とは、以来どのパーティーでも会って居ないらしい。辺境伯家の令嬢が招かれるのは少なくとも伯爵以上の家のパーティー。その男が婚約を決めていたとしても、殆どのパーティーに出席しているローズが顔を見ていないというのは、社交性に欠けている。


「……その方の話はあまりしたくないの。今はまだ、私の噂は収まっても皆心の中では私を馬鹿にしてる。本当はね、一人で出掛けるのも怖いの。お姉様と出掛けるのなんてお姉様の社交界デビューの時以来だし楽しいけれど……、私と一緒に居たらお姉様まで……」


「ローズ」


 私はローズの話を遮った。分かっている、彼女に対する噂が止まり、それなりに良い評判もちらほら耳にするようになった。でも、ローズはまだその呪縛から解放されない。


 レイノルズ様が言っていた。ローズを……サリバン家をはめた男がいる。その人を見つけるまでは、ローズとの交際を続ける、と。


 レイノルズ様は騎士だし、侯爵家の方だから下手な男はローズに近寄れもしない。


 お父様も手を打つと言っていた。私はそこまで頭が回らなかったけれど、確かにローズを手籠にし、やり方を教え、その後も男が途切れないような流れを作った誰かがいる。


 明確な悪意だ。ローズ自身の評判も、サリバン家の評判も同時に落とすことができる。


 私はケーキの美味しさに話を逸らしながら、ローズを使ってサリバン家を敵に回した……サリバン家が邪魔なのは誰か……を、考えていた。


 もっと情報が必要だった。

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