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とりあえずミーゼに相談する

 ギルドにゴブリンの角2本を提出してカヤノは無事に銅ランクへと上がった。直ぐに結果がわかるなんて簡単でいいなと俺は思ったのだが、後からミーゼに聞いたところミーゼの時は2日後に一斉に発表があったらしい。おそらくドレークの冒険者が少なすぎるせいで試験を受けるのがカヤノしかおらず、そして特に問題になるようなことが無かったのでその場で合格と言われたんだろうと思われる。

 とは言えすぐに銅ランクのギルド証がもらえる訳も無く明日の昼以降にギルドへ来たときに今の木のギルド証と交換すると言うことになった。


 手続きは滞りなく終わったのだが、そんな中で俺はずっともやもやとしていた。もちろんあの泉のそばに会ったカヤノと俺にしか見えなかった門についてだ。

 ハッサンが特別に見えなかったって可能性は低いだろう。いくらなんでもあの光景は異常だったから噂になっているはずだ。しかしミーゼからはそんな話は聞かなかったし、ハッサンも知らないようだった。問題は何で俺とカヤノだけに見えていたのかってことだ。そして俺自身にもよくわからねえんだが何というか呼ばれているような、あそこに行かなくてはいけないような気がずっとしているんだよな。喉の奥に小骨が引っかかっているような違和感がずっとあって気持ちわりいんだよな。

 とりあえずはミーゼに相談してみるかということでまだ夕食には早い時間であったが依頼を受けるようなことはせず俺とカヤノは宿へと戻った。





「門ねえ~。そんな話は聞いたことがないわ。私も泉には1回しか行ったことがないから確実とは言えないけどなかったと思うわよ。」

「そうですか。」

(確かにあったんだがな。)


 ミーゼの回答は俺の予想通りだった。と言うかもし知ってれば教えてくれていただろうしな。ミーゼの言葉にカヤノはちょっと落ち込んだ様子だ。まあ俺以外に誰も見えないっていうのはなんか嘘を言っているように感じているんだろう。そんなこと気にしなくてもいいんだがな。そんなカヤノの様子を見てミーゼが微笑んだ。


「そんな顔しないの。もしかしたら私が見落とした可能性だってあるんだから。明日一緒に行ってみればいいでしょ。」

「いいんですか!?」

「もちろん。」


 カヤノの顔がぱあっと明るくなる。楽しそうに話す二人に水を差すようだがちょっと言わねばならんな。


(カヤノ、明日の午前はダメだぞ。もう依頼の約束が入っているだろ。)

「あっ、そうでした。」

「えっ、カヤノ君、もう指名依頼が入っているの?私だって入ったことないのに。」

「えっと指名依頼っていうか4日前に受けたときに次も頼むって言われちゃったんです。」


 そう、カヤノが言った通り明日の午前中は畑を耕す依頼が入っているのだ。依頼主はこの街の農家の中でも大地主の家で一番大変な畑を耕す作業を手伝わせるために冒険者ギルドへと依頼を出したらしいのだが、まあ俺にかかれば畑を耕すなど朝飯前。むしろ自分の手をひねる程度の簡単さなのだ。という訳でちゃっちゃと耕したところ気に入られて次も頼むと言われたのだ。


 ちなみにミーゼが言った指名依頼というのはその名のとおりその冒険者を指名して依頼を出すことだ。冒険者としての実績や実力を買われた者にのみかかる特別な依頼方法でその分だけ依頼金額も高くなるらしい。しかもこれは強制ではなく冒険者の側に受けるか受けないかの選択権があるのだ。

 殆どの場合はみんな受けるってのが常識らしいけどな。基本的に指名依頼をしてくる奴は以前にもその冒険者に依頼を受けてもらった依頼者ばかりだし、冒険者の方からしても報酬もそしてお得意様を作るという観点からも受けないって選択肢はあまりないって訳だ。

 今回の場合は別にカヤノに指名が入っているわけじゃなくお願いとして聞いただけなので特に報酬が変わったりはしねえけどな。


「じゃあ午後から行きましょうか。私もたまにはゆっくりするわ。」

「ありがとうございます。」

(悪いな、助かる。)

「なんかリクに素直に感謝されるとむずむずするわね。」


 余計な一言を言ったミーゼに小石を飛ばして頭に当て、怒ったミーゼに追い掛け回されながら夜は更けていった。ちなみに宿のオヤジに怒られるまで俺とミーゼの追いかけっこは続いた。そしてもちろんオヤジに怒られたのはミーゼだけだ。俺は隠れたからな。まあその分後でぐちぐちと文句を言われたんだが・・・ミーゼは自業自得だよな。やれやれだぜ。





 翌日午前中の依頼をさっくりと終わらせ、また次も受けて欲しいと言われてカヤノはその場を去った。ついでに受けた依頼も滞りなく終わり適当に屋台で数種類の食べ物を買って宿へと帰る。

 俺たちの部屋へともどるとミーゼがだらーんとスライムのようにベッドにとろけていた。本当にゆっくりしてやがるな。

 カヤノの買ってきた食べ物を一緒に食べ、少し食後の休憩を挟んでから街の外へ出てあの泉のある森へと向かった。ギルドの試験よりも早い時間に出発したので往復するだけなら何の問題もない。まあ何もないとは思えないんだがな。


 森についたカヤノとミーゼはそのまま躊躇なく入っていく。2人とも森歩きは慣れているし、一緒に行動する期間もあったため自然といつも通りカヤノが先導してミーゼが後をついていくスタイルになった。こういう何も言わなくても自然に意思疎通ができる関係っていいよな。

 一度入ったことのある森であるし、大体の方向は掴んでいるためカヤノは迷いなく森を進んでいく。本来ならこんな何も特徴のない森を歩くと方向感覚が狂って迷うこともあるのだが、さすがアルラウネと言うべきかカヤノはそんなことはないらしい。俺も方向感覚には自信がある方だが二度目の森でこんなに自信を持って歩けるかというと怪しいところだからな。


 途中でウサギの魔物であるフォレストラビットを狩りつつも歩を進めそして問題の泉へと到着した。昨日見た時と同じように泉の周りには色とりどりの花が咲き乱れ、本当にここだけ春になったかのような風景だった。そして門も当然そこにあった。


「ありますね。」

(ああ。)

「・・・私には見えないわね。」

「でも本当に・・・」

「ああ、違うの。カヤノ君が嘘をついているって言っているわけじゃないの。リクだけが言っているなら私をからかおうとしているんじゃないかと疑うだろうけどカヤノ君はそんなことしないだろうしね。」

(おお、言うじゃねえか。ちょっとOHANASHIしようぜ。)

「あんたの普段の行動を省みてからその言葉を言いなさいよ。」


 俺とミーゼのやりとりにカヤノが苦笑いをしている。ちっ、小一時間問い詰めたいところだったがまあ今は許してやろう。まあちょっと最近はミーゼの反応が面白いからボケたりからかったりすることが多かったしな。自分の予想通りのリアクションを取ってくれる存在って貴重だろ。

 しかしマジでミーゼにも見えないのか。これはちょっと調べてみる必要がありそうだ。何よりこの場所に戻ってきてはっきりした。俺はあの場所に行かなくてはいけない。完全な第六感だが間違っていないはずだ。


(とりあえずあそこへ行ってみるぞ。ミーゼは見えなだろうからカヤノと手をつないでおいてくれ。)

「はい。」

「わかったわ。」


 カヤノとミーゼが手をつないだのを確認し俺たちは門の場所へと歩いていく。なんとなく花畑を突っ切るのは気が引けたので一番被害が少ない門の近くまで迂回してから真っ直ぐに進む。そして門の前へと着いた。

 遠目で見た時も思ったが何というか綺麗な門だ。なぜならその門は透き通った水晶のようなもので作られており、一見すると氷の彫刻のように見える。そしてよく見るとその表面には細かな紋様が精緻に描かれておりこれが並大抵の者が作ったわけではないと主張しているようだった。


(じゃあ行くぞ。)


 俺は扉を右手の義手で押した。その扉はあっさりのなんの抵抗もなく開いていった。そして一歩踏み出した俺たちは光に包まれたのだった。

ほわあああ~。謎の光に包まれ宇宙船へと連れ込まれてしまったカヤノを待っていたのはだいだい色の宇宙人たちだった。地面が無いため戦力にならないリクはいかにしてこの危機を乗り越えるのか!?


次回:カヤノ ミート ジ オ〇ンジマン


お楽しみに。

あくまで予告です。実際の内容とは異なる場合があります。

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海の日記念の新作です。次のリンクから読もうのページに行くことが出来ます。

「退職記念のメガヨットは異世界の海を今日もたゆたう」
https://book1.adouzi.eu.org/n4258ew/

少しでも気になった方は読んでみてください。主人公が真面目です。

おまけの短編投稿しました。

「僕の母さんは地面なんだけど誰も信じてくれない」
https://book1.adouzi.eu.org/n9793ey/

気が向いたら見てみてください。嘘次回作がリクエストにより実現した作品です。
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