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とりあえず魔物か襲来する

 もうもうと土煙を上げながら近づいて来る集団を俺はじりじりと焦りを感じながら待っていた。さっきまで2人の兵士が俺の近くにいたんだがすでに引き返してしまってここには誰もいない。

 どうも魔物をここで迎え撃つ気は無いらしい。まあこんな家が密集した場所じゃあ戦いにくいだろうし、防壁があるんだから普通それを使うよな。建物は壊れても直せるが人は死んだら生き返らないからな。

 生き返らないよな?教会でお布施をすると魂が戻ってくるとかないよな。成長すればするほど高くなる感じで。・・・いや無いはずだ。あるなら冒険者が魔物にやられて殺されたって話を聞いたことがあるんだから生き返らせてもらったって詰も聞くはずだ。ないない。


 魔物の襲撃と言う事自体が初めての事だから俺自身どれほど恐ろしいことなのかいまいちわかっていない。街の住人達の様子から結構大事だと言う事は判断できるんだが。

 まあいいや。カヤノの事は心配だが俺に出来ることは無い。まだ12時ぐらいだし帰ってくるまでには時間がある。その間には何とかなるだろ。気分を切り替えるか。


 とりあえず何が来るんだろうな?やっぱ定番と言えばゴブリンかオーク、ちょっと奇をてらってウルフ系で大穴はスライムだな。

 うむ、スライム。いいな。俺が想像するのはドラ○エのあいつだ。あいつがぽよんぽよんと跳びながら集団で襲い掛かってくるのだ。襲われる側から見たら恐ろしいのかもしれないがなんとなく和む。

 もしあんなのだったらちょっと一匹捕獲しておこう。(テイム)できるかもしれんしな。もちろんローションみたいな奴はノーセンキューだ。


 ちょっとオラ、わくわくしてきたぞ。


 なんだろう、マジでちょっと楽しくなってきた。まあ俺が地面だから危険が無さそうって言うのもあるんだけどな。と言うか俺どんなことになったら死ぬんだろうな。寿命ってあるのか?さすがに永遠にここで生きる運命とかだったらきついな。

 あ~、やめやめ。将来の事を今考えてもしかたねえ。それより今は俺のスラリンのことだ。


 とりあえず一匹のやつを穴に落として蓋をすればいいか。いくらスライムでも密封された空間からは逃げられんだろ。しかしそうすると空気がな。いやそもそもスライムって呼吸するのか?地下に閉じ込めたらストレスで死んじゃったりとか!?いかんスラリンを殺すわけにはいかんぞ!!

 よし作戦変更、一匹と言わずすべて捕まえる勢いでいこう。なに、あんな土煙が上がるくらいいるんだ。一匹ぐらい俺と相性のいい奴もいるはずだ。


 スーラリン、スーラリン。


 アイドルのコンサート会場の勢いでスラリンを待っていると、だんだんと魔物の群れが近づいてきて俺の目にもどんな魔物かわかるようになった。

 色は緑だ。いいね~。草とかを食べるからそんな色になるのか?

 数としては100以上だな。捕まえ放題だ。

 剣とかを皮の鎧を装備してるな。どうやって手に入れたんだ?やっぱり生まれた時から持ってるのか?

 醜悪な姿だ。二本の足で手に剣を持ち、振り上げながらこちらに・・・


 スラリンじゃねえよ、どう見てもゴブリンだよ!!

 くそぉ。名前はちょっと似てるかもしれないけどお前じゃないんだよ。返せよ、俺のスラリン返せよ!!


 見たところ迫ってくる集団はどうもゴブリンの様だ。いや、もしかしたら緑色の人間がいるのかもしれねえけどあの冒険者も魔物って言ってたから多分ゴブリンだろ。

 意外に身長は高く160センチほどだ。俺のイメージだと100センチくらいの小人のイメージだったんだが違うみたいだな。確かにあれだけ大きい魔物が集団で襲ってきたら脅威だよな。

 体の色は全身緑だ。まあそれはいい。しかしその表情が思いっきり醜いのだ。しかもなぜか皆涎を垂らしてやがるし。あれ、ぜったい俺の上に落ちてくるよな。うわぁ、臭そうで嫌だ。匂いがわからないことを良かったと思う日が来るなんて思わなかったぜ。


 萎えるわ~、めっちゃ萎えるわ~。

 ゴブリンなんてどうでもいいんだよ。おっ、定番だなってちょっと思うくらいの存在なんだよ、お前ら。もっとさ~、あるだろ。こう、何ていうかさぁ。


 ゴブリン以外の魔物がいないことがわかり俺のテンションはだだ下がりだ。たとえスラリンじゃなくても可愛い魔物ならペットにしようと思っていたんだが、さすがにゴブリンはな。レベルが高すぎるぜ。

 あともう数分したらゴブリンが街へ到達しそうだ。街に近くなってからゴブリンたちは好き勝手にばらばらになっていったから俺の所に来そうなのは30くらいの集団だ。一番近い広めの道だから結構多いな。


 それにしてもどうすっかな。カヤノが帰ってくる前に解決したいんだよな。街の兵士頼みにしてもいいんだが、あっちがどういうつもりなのかわからんし、長期戦なんて想定していたんならちょっとまずい。いや、それは無いか。この街、結構外から人が来るから早めに解決しようとするだろ。なんせゴブリンだし。

 そうだとしても数を減らした方がいいよな。よし、今日はネズミ駆除ならぬゴブリン駆除といきますか。





 街の入り口に入り、ゴブリンたちがゆっくりと歩いてくる。どうも周囲を警戒しているようだ。

 おやっ、意外と頭がいいんだな。俺はてっきりそのまま突撃してくるかと思ったんだが。じゃあ作戦変更だな。警戒されて逃げられても駄目だし。


 俺は最終ラインを残して道に作った落とし穴を埋める。今俺が作れる穴は最大縦横2メートルだ。その落とし穴を通りに沿って何個も設置しておいて突撃してきた集団が上を通った瞬間に落としてやるつもりだったのだ。しかし警戒する頭があるんなら落とし穴を避けて他の道を行きかねない。そっちに行ってしまったら俺は追えないからな。それはまずい。


 警戒しているって言っても軍のように体系立てているわけでも無し、各々ばらばらに歩いている感じだ。まあしょせんはゴブリンだな。

 くっくっく。一匹一匹狩ってやるぜ。まずはお前だ!!


 俺は一番後ろであまり警戒もせずに皆の後をついて行っているゴブリンに狙いを定める。いるよな、こういう奴。手を抜きつつも要領よく成果だけをいただこうとするんだ。あくびをしたりして完全に油断しまくっている。

 はっはっは。死ね!!


 通りから一匹のゴブリンの姿が消える。もちろん俺が落とし穴に落としたのだ。直ぐに蓋をして声が漏れないようにしたらネズミと同様に圧殺だ。ギャーギャー騒いでいるがもうこいつに構っている時間は無い。とりあえず死んどけ。

 何せ俺が動けるのは直径でも40メートルなのだ。ただの一匹に手間をかける時間なんてない。どんどん処理しないと。


 後ろから順々にゴブリンが消えていく。ちょうど都合よく二匹が並んでいたりした時は一緒の穴に落としたりした。やっぱり馬鹿なのか、ゴブリンたちは肉屋のオヤジの店で見つけたウサギや鳥を引き裂いて食うことに夢中になっていたりしたので結構簡単だった。

 というか喧嘩すんなよ。味方だろ。食いもんくらいのことで剣で仲間を切るなよ。お前らは動物か!?あっ、魔物だったわ。まあどっちにしろ俺にとっては好都合だけど。

 俺の通りに来た32匹の集団は簡単に片付いた。まだ土の中で死んでない奴もいるけどそのうち死ぬだろ。ちなみに数は落とし穴に落としながら数えたんだ。なんか当初に気合を入れて倒そうと思っていたのが馬鹿みたいに罠にかかっていったな。


 さすがゴブリン先輩。おれたちにできないことを平然とやってのけるッ。そこにシビれる!あこがれるゥ!


 いや、憧れないけどな。嫌だわ、あんな何も考えていないような生き物。


 俺に出来ることはこれで終わってしまった。こんだけ倒したんだし大丈夫だろ。

 と言う事で俺は周囲をパトロールしつつ、肉屋の血の匂いにつられたのか、たまにやってくるゴブリンたちを駆除していた。しかしそれもだんだんと少なくなってくる。


 暇だな。


 ゴブリンの襲撃から既に3時間は経過した。状況がどうなっているのかわからないが俺だけでも46匹倒しているし、悪くはないだろ。はぁ、早く兵士でも見回りに来ないかな。カヤノが帰ってきちまうぜ。


 そんなこと考えなければ良かった。いや、考えなかったとしても結果は変わらないか。

 俺の視線の先に袋に薬草をつめたカヤノが街の外から帰って来るのが見えていた。

むかーしむかし、あるところに1人の少女がおりました。少女は森へ薬草摘みに出かけました。すると何と言う事でしょう。森に流れる川から大きな桃がどんぶらこ~、どんぶらこ~と流れてきたのです。


次回:ボロずきんちゃん


お楽しみに。

あくまで予告です。実際の内容とは異なる場合があります。

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海の日記念の新作です。次のリンクから読もうのページに行くことが出来ます。

「退職記念のメガヨットは異世界の海を今日もたゆたう」
https://book1.adouzi.eu.org/n4258ew/

少しでも気になった方は読んでみてください。主人公が真面目です。

おまけの短編投稿しました。

「僕の母さんは地面なんだけど誰も信じてくれない」
https://book1.adouzi.eu.org/n9793ey/

気が向いたら見てみてください。嘘次回作がリクエストにより実現した作品です。
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