27 決着
「Asahi! 奪還ってどういうこと!?」
フレンドの居場所は分かるため、Asahiの下へ向かう。彼は敵を走りながら斬り刻んでいた。
「新幕府側にもニ種類いて、将軍殺したい派と操りたい派なんだけど、操りたい派に取られちゃったみたいで」
「今までとは逆で、追いかけるんだね! OK!」
道中襲ってくる敵は極力無視して走る。将軍の近くにはつっきーたち数人がこっそりついているため、つっきーの位置をもとに追いかける。
何人かの味方を抜き去り、将軍の姿が目に映った辺りで、行く手を阻まれてしまう。
「ここはお姉様でも通しません!」
「通してもらうよ」
巴の攻撃は受け流したが、私の足止めという目的は果たされてしまった。早く追いつかないといけないのに……!
「よそ見は厳禁です!」
「くっ……」
目の前の敵に集中しろ、私……! 焦っては駄目だと学んだはずだ。
「ごめん。もうよそ見はしない」
「さあ、殺りましょうか!」
彼女はやはり楽しそうにこちらに向かってきた。落ち着いて攻撃を見極めて受け流し、石突で首を突く。
急所に攻撃が当たると動けなくなる仕様を利用して、その隙に急いで将軍のもとに向かう。
「情けをかけたつもりですか!」
これは情けでもなんでもなく、彼女を死に戻りさせないための作戦だ。殺してしまえば何の憂いもなく拠点に戻してまた私を倒しに来てしまう。だが、ここに放置しておけば、他のプレイヤーの邪魔をするだろうから、私を追いかけることは難しい。私たちと同じように、目的地が復活地点の可能性もあるからね。
「あ……」
追いついた時にはもう終わってしまっていた。項垂れる新幕府側のNPC、誰かを囲んでいるプレイヤーたちがそこにいた。
話を聞いてみると、殺したい派に属するプレイヤーが矢で将軍を殺してしまったらしい。敵も味方も横槍を入れられたような状態で怒っているようだ。私も呆気ない終わりには不満があるが、負けてしまったのも事実だ。文句は言えない。
こうしてイベントは新幕府側の勝利に終わると思われたが――次の将軍を決めるための小競り合いが行われた。プレイヤーたちは自分たちに都合が良かったり名前が面白かったり可愛かったりする候補者たちを推し、戦いは今まで以上に激しいものとなった。将軍を巡るあの戦いは前座だったのか……。
そうして将軍が変わっても鎌倉の様子が変わることはなく、今まで通り殺伐とした日常が続いていくのだった。
3章&本編完。リアクションや評価、ブックマーク、誤字報告等ありがとうございました。よろしければ、下の☆☆☆☆☆から評価をお願いします。




