26 お尋ね者④
味方も敵も入り乱れての将軍攻防戦はひとまず私たちの勝利に終わった。ずっと集中していて疲れた私たちは屋敷の広間でぐったりしていた。
「疲れた……」
NPCに将軍を受け渡したつっきーがぼやきながら戻ってきた。
「お疲れ様、つっきー。ずっと運んでくれてありがとう」
「そっちも。助かった」
「僕にはー?」
「Asahi! ずっと後ろを守ってくれたんだよね? 助かったよ!」
他にも協力してくれた旧幕府側のプレイヤーと労い合う。忘れないうちに、拾っておいた彼らの遺品は返しておく。私自身が倒されなくて良かった。
「皆の者。そのままで良い、聞いてくれ」
例のNPCが広間にやってきた。私は一応姿勢を正したけれど、他は言葉通りそのままの体勢で聞いている。自由人たちめ。
「まずは送り届けてくださったことを感謝する。だが……奴らはこれからも襲ってくるだろう」
奴らというのは新幕府側のことだろう。まだイベントは終わらないらしい。
「そこで皆にも護衛を頼みたい。期限は……一週間、一週間耐えることができれば敵は瓦解する。奴らの目的はバラバラだ。長い時間持つまいよ」
期限が一週間の防衛戦が始まった。始まった、といってもプレイヤーはそんなに暇じゃないためいつでも襲撃がある訳ではない。NPCと同時に攻め入るタイミングと、こっそり入り込んで暗殺しようとする人に気をつければ良いらしい。思っていた以上に役割がなく、暇だった。
一斉攻撃の日がやってきた。数で優る敵に、じりじりと追い詰められつつも食い下がる。復活場所が近いという利点はあるけれど、焼け石に水だ。遠いと言っても、敵の復活も早い。
私は敵に持ち物を渡さないように、軍のイベントの時のようにはせず生存重視で立ち回る。
体感では数時間――終わりが見えなかった戦いだが、急に敵の勢いが減った。敵のNPCが引いていくのだ。
「退けた……の?」
「くそっ、時間切れか?」
私たちは疑問に思いつつも、手を止めることはせず、戦いを続けていた。
「もしもし? 僕だよ僕。奪還手伝って!」
Asahiからの短い連絡だ。珍しく急いでいる。奪還……もしかして、将軍が敵の手に渡ったから、敵が引いているってこと!?
目の前の敵を倒してからでは遅いだろう。駿足を使ってその場をすぐに離れた。




