24 お尋ね者②
参加を決めると、Asahiの頭上に赤色のマーカーがついた。これが旧幕府派のプレイヤーの証らしい。新幕府派は青色のマーカー、無所属は灰色のマーカーがつくのだそうだ。ひとまず、裏切られていないようで良かった。
「それじゃあ移動しようか。これを味方に押しつけないとログアウトもしにくいし」
仮にも国のトップをこれ呼びするAsahiに苦笑いを返した。
所属を決めると、割合が見れるのだが現時点では赤が一割、青が二割、無所属が七割程度だった。今のところ、数の上では不利だけど、これからどうなるのか。無所属を仲間につけられるかどうかが鍵だろう。
将軍に布を被せてAsahiが運び、私が周囲を警戒する。将軍は顔を隠さなければならないことは理解しているらしく、黙って運ばれていた。
目的地は鎌倉の町の外れにある、とある武士の屋敷。その武士は旧幕府側であることが確定しているらしく、その点では安心らしい。
「おいおい、旧幕府派が何を運んでいるんだ?」
「初日から見つけるなんて大手柄だ! やっちまえ!」
将軍だとは分からずとも、怪しいのは分かるためひっきりなしに襲われる。敵の数は少なくAsahiが強いから何とかなっているけれど、殺されるのも時間の問題のように思える。
「フレンドを呼ぶのは?」
「呼んだら新幕府派になってからやってくる。賭けても良い」
このゲームのプレイヤーへの理解度が高いのは彼だから大人しく従っていよう。
将軍を連れたプレイヤーが例の屋敷に来ることは相手も分かっているのだろう。避けるようにはしているが、近づくにつれ戦闘が激しくなっていく。
「ヨル?」
「あ、シュウ!」
彼の頭の上に浮かんでいるのは青いマーカー。思わず反応してしまったが不味い。彼にもきっと運んでいる途中だとバレてしまった。
彼はにやりと笑い、こちらに近づいてくる。荷物を抱えて走るAsahiの速度に合わせているため撒くことは難しい。相手をするしか――。
「こっち!」
何かを構えているつっきーが道の先にいた。赤いマーカーがある、味方だ。彼を信じて振り向かずに走る。
つっきーが投げた物は私とシュウの間に落ちる。それと同時に辺りに煙の匂いが漂う。
「視界速度悪化と、ダッシュ持続減少……!」
一本道だから、見失わせることはできなかったけれど、距離は取れた。




