23 お尋ね者①
「匿え!」
「えっ!?」
大通りの方から少年が走ってきた。服は汚れているものの、明らかに庶民ではない。
「そこの者!」
険しい顔をした武士たちが話しかけてきた。装備が豪華だから偉い武士なのだろう。先ほどの少年は路地の荷物の後ろに隠れている。
「ひゃい!?」
「これくらいの童を見なかったか? 訳あって探しているのだが……」
「し、知りません! ごめんなさい!」
嘘だと思われたら殺されると思って、必死に首を振って知らないことをアピールした。その甲斐あって、武士たちは別の場所へ向かった。
「礼を言う」
少年がひょっこり顔を出してお礼を言ってくれた。なんでだろう? そういえば武士は腰のあたりに手を置いていた。……あれ?
「探していたのって……」
少年は目を潤ませて「見捨てるつもりか」と聞いた。直視しにくい。やめて、そんな目で私を見ないで……!
「わっ……離せ! このっ」
「夜霧。久しぶり」
「Asahi!? あー、えっと一ヶ月弱は会ってなかったよね」
少年を俵のように抱えているAsahiがいた。目を背けているうちに少年を捕獲したらしい。
「夜霧は旧幕府派なんだね?」
「きゅ、旧幕府……?」
「そこからか。とりあえず移動しよう」
連れてこられたのはとある民家。勝手に入って良いのかと思ったが、どうやらここは彼が所属する軍が所有しているらしい。便利だから複数の拠点を持っていると言っていた。
「この子は今日から開催されるイベントのNPC。特設ページを見たら分かりやすいよ」
彼に言われて特設ページを見る。倒幕イベントと称されたそれは若き将軍を守り反逆者を倒す旧幕府側と、新たな秩序を求めて将軍を殺そうとする新幕府側に分かれて将軍を手に入れるイベントらしい。
新幕府側は将軍を捕まえてトップに引き渡せば勝利、旧幕府側は将軍を期間いっぱいまで守り切るか、新幕府側の主要NPCを全て倒せば勝利らしい。
「つまりこの子は……」
「将軍だね」
今まで会う機会はなかったけど、この子が将軍か。小さいけれど言われてみれば威厳がある……ような気がする。
「これ、もし私たちが新幕府派になれば……」
「既に捕まえているからイベントが即終了するね」
「へえ……」
「何をする気だ!? やめろ……! この鬼!」
私たちが引き渡すことを仄めかせば将軍は暴れる。精一杯強がっていて可愛いな。
「報酬って豪華なんだっけ?」
「ああ。特に捕まえた本人はたくさん貰えたはずだよ」
「ほ、褒美なら出す! 追加でだ! だからお前たちは私を守れ!」
二人で仕様を確認していると将軍が慌てて報酬を追加した。
「約束は守ってくださいね?」
壊れたおもちゃのように頷く彼を横目に旧幕府派での参加を決めた。




