22 山城②
次は三階部分に向かう。三階は四角形になっていて、山側に扉があり、そこから外に出ることができる。三階部分を囲うように木の柵が付いていて、ここからやってきた敵を射抜けるようになっている。敵からも丸見えとなっているけれども。手が出る値段で大きい拠点を作れる立地――つまり人通りが少ない場所だから敵を射抜くことも返り討ちに合うこともないだろうけど。
「このテラス? 少し不自然じゃないですか? ここからも出られるなら、侵入されやすいように思いますが……」
扉を見て巴が言った。シュウが「その通り!」と待ちかねていたかのように言った。
「向こうに増築すればどうなると思う?」
「ここからもう一つに移動?」
「ああ、連絡通路になるんだ。そうやって巨大な城を作るんだ……! ザ・ロマン!」
シュウは興奮しながら言った。資金が足りずこの程度の大きさになってしまったが私たちの理想は巨大な城だ。そう、鎌倉の幕府のものに引けをとらないくらいの。増築を繰り返して難攻不落の城を作るのが夢だ。
だが、残念なことに巴はそれにロマンは感じないらしい。共有できなくて少し悲しい。
「ロマンは特に感じませんが、増築できるのはいいですね、お姉様。あ、敵発見」
彼女は弓を取り出して、鎌倉から出ていこうとする人を射抜き、満足そうにしていた。
「利便性もある。良いですね、お姉様!」
彼女は戦利品を回収するために飛び降りる。ここって利便性あったんだ……。
「利便性がある、だと……!?」
「ロマンと実用性の両立……!」
「トラップ作れるかな、トラップ!」
巴の言葉を聞いて、私たちの拠点への熱量がさらに上がった。防御性能を上げるか、攻撃性能を上げるか。お金、貯めなきゃなあ……!
「銀夜隊のみんなにも意見聞いてみようかな」
「そうだな! 俺たちよりこのゲーム歴長い人が多いし!」
「こういうのって結構楽しいね!」
「いいねえ。夜霧もゲーマーらしくなってきたな!」
私たちが話している間に巴は回収を終えたらしく、こちらを眺めていた。呆れたような、冷めたような目つきで見上げているような気がする。
「お姉様、帰りますねー」
混ざってくれるのかと思いきや、巴は一言かけて町へ戻った。




