21 山城①
鎌倉の中心地から外れた場所に小さい城がある。小さな柵と堀で囲まれたその城は私たちが購入したものだ。山の中腹にあり、切通を監視できる位置だ。
「拠点として設定、と」
場所が場所だけに復活地点としての利便性はないに等しいけれど、やはり自分たちだけの城は気分が上がる。
この辺鄙な場所を拠点にしたいと言い出した私とシュウは、他のメンバーのお金を出すという申し出を断り、二人で頑張った。地価は安いとはいってもそれなりに大きい建物だから、資金を集めるのは大変だった。
「は、入っても良いかな……」
「夜霧が入らないなら――一番乗りだ!」
勢いよく城内に入るシュウを追いかける。中に家具などはなく、広々としている。
「私は三番乗りですね、お姉様! 少ないですが、こちらをどうぞ!」
いつの間にか現れた巴からかなりの額を受け取ってしまった。慌てて返そうとすると、「ここ、高いんですよね?」と受け取ってくれない。
「私の好意……受け取ってくれないんですね。お姉様……」
「分かった、受け取る! 受け取るから!」
巴はお金を押し付けたあと、機嫌が良さそうにしていた。せっかくだから、シュウと一緒に巴にこの場所を案内することにした。
入り口は二階にあり、入ると中央に木製のらせん階段が見える。山側以外は攻撃のために縦長の穴が空いていて、山側には襖がある。漢字の凸みたいな構造をしている。
「巴、あの中に入ってみて」
「はい。ただの部屋ですね?」
四人くらい寝れるサイズの部屋で、ここにははじめから箪笥が置かれている。
「って、思うだろ?」
「箪笥を開けてみて」
彼女は笑顔で勧める私たちに疑問を持っていそうだったが、素直に開けてくれた。
「穴が……いや、これは……階段? あ、隠し通路!?」
「そう! 一番のお気に入りポイントだ」
「ここから一階に行けるんだよ」
スペースの関係で階段の幅は狭く段差も大きい上に、暗くて足元が見えないという危険な階段を降りた先には大きな部屋がある。
「どこも土足かあ。山城だからですかね」
「ここに段差を付けて土足禁止にするつもり」
二度目の元寇イベントで手に入れた家具を早速使う。元寇イベントはお金にも交換できるから資金集めの役にも立って助かった。新しいフレンドたちとも結構遊べたし。
ゲームだから汚いということはないけれど、土足の場所はなんとなく寛げない。山城の中でみんなで集まれるのはこの部屋だけだから、充実させたい。他にも交換した家具を仮置きする。この家具の所有権は軍に移しておこう。




