18 赤江隊③
倒しても倒しても減る気配のない敵にじわじわと追い詰められていく。一騎討ちを使って離脱したプレイヤーがいても、そろそろ戻ってくる頃合いなのに、味方は一向に増えない。さっき、視界の端で倒された₣が復活してこないことも考慮すると、復活できないってこと?
「そうか、拠点内に敵がいるから……」
ここにいることが分かっているのは私と巴、シュウ、Yura、和歌子だ。Yuraと和歌子は攻めにくいだろうから私たちが敵を船から追い出さないと……。
「お姉様!」
焦ってしまって矢が当たりそうになる。巴のおかげでかすり傷程度に済んだが、身体から力が抜けて立てなくなる。
「致命傷以外でHPがなくなるとこうなるんだ……」
「お姉様!?」
「ごめん……。後は、お願い……」
「そんな、お姉様! しっかりしてください」
「ほら、立ち上がって……。敵は待ってくれないから」
巴と寸劇をしている間は、近くに敵プレイヤーがいたのか、敵の攻撃はなかった。見世物ではないと思ったけれど、ちょっと大げさに言っているし見世物かもしれないと思い直す。
最後まで戦いたかったなと思いながら私は死んだ。
「お疲れー」
「……ここは?」
「死者の待機スペース? ここからは拠点と仲間の様子を見れるぜ」
質問すると₣が答えてくれた。ここにりゅーさんが居ないため隊ごとに待機スペースがあるらしい。
他にはケインがいて、たいさは一騎討ち中、つっきーは復活防止のため、敵の船にこっそり乗り込んでいるらしい。
「銀夜隊の副軍長がNPCによって撃破されました」
その二人の映像を見ていると、アナウンスが流れた。
「悪い、負けた」
「おいおいNPC相手だぞ?」
「数は正義だと言っておこう」
Yuraを責めている₣もNPCに倒されていたような気がするけど、軽口みたいなものかな。
「銀夜隊の軍長代理がプレイヤーシマネによって撃破されました。赤江隊の勝利です」
そのアナウンスと共に私たちは元いた場所に転移した。
「本日はお疲れ様でした。すみません、力不足でした」
「いや俺が」
「私が」
「いやいや俺が」
Yuraと巴、₣が順に言うが、それに続く人はいない。
「黙り込むなよ!? リアルな感じで悲しくなるから!」
「でも譲るのも違う気がして……」
巴を首を縦に振る。₣は何か言おうとして止める。彼は頭を掻きながら言った。
「んじゃあ、反省会をするかー。まずは俺から。水際対策失敗したのが良くなかったよな」
「そうそう、あの量は無理だって」
「一騎討ちで人が減ったことがその原因かも。私個人としてはHP管理が課題かな。一騎討ちでHP減りすぎて、かすり傷で死んじゃった」
「一騎討ちといえば、普通に負けました。ごめんなさい!」
「はいはーい、一番槍なのに攻め込んでない上に倒した数も少ないでーす」
「私は……ほぼ空気」
「強敵だった。加勢できず申し訳ない」
「副軍長を先に見つけられれば……」
「……それらは全て作戦ミスに起因します」
₣、Yura、私、ケイン、シュウ、巴、たいさ、つっきー、和歌子の順で反省点を言い合う。次は二日後の夜だから、今出た反省点を活かせるように頑張ろう。




