17 赤江隊②
足場がない場所で攻撃を撃ち落とすのは現実的じゃない。なら避けるのが最適解か。
「蹴るよ!」
「任せろ!」
シュウは私の短い言葉で意図を理解して、私の方に足を向けた。彼の足裏を思いっきり蹴ると、シュウの頭があった場所を矢が通り過ぎる。
「うっ……『一騎討ちを申し込む』!」
避けきれず足に矢が刺さってしまったが、問題はない。上空からりゅーさんに一騎討ちを申し込み、その場から離れる。彼は赤江隊の軍長。だから、軍長同士の対決だ。私は権限譲渡しているから死んでも復活できるけど。
刺さった矢を抜きながら横に転がる。私の居た場所に矢が刺さる。
一騎討ちの時は挑んだときの距離のまま何もない空間で戦うことになる。つまり彼とは三十メートルほど離れた状態から始まっていて、不利な状況だ。りゅーさんは私が避けている隙に距離を取って二射目を放つ。私はもう一度同じように避け、すぐに立ち上がって追いかける。傷を手当していないせいで走りにくいけれど、追いつくしかない。
速度重視で追いかけ殺すのに支障がない傷は避けずに受ける。相手は攻撃のために減速する必要があったから、徐々に距離が近づいていく。
私の間合いに入ると、彼は弓を消し短刀に持ち替えた。そして一気に距離を縮めてきた。
HPはまだ余裕がある。左手を犠牲に短刀を止め、縮めた薙刀をりゅーさんの胸に突き刺す。手を自ら突き刺しに行くとは思っていなかったのか彼の目は見開かれていた。薙刀を引き抜くと彼の身体は力なく倒れる。
「赤江隊の軍長がプレイヤー夜霧によって撃破されました」
勝利を示すアナウンスが流れると共に一騎討ちのための空間は崩れていく。直後、感じたのは達成感ではなく浮遊感。そうだ、勝った側は元々居た場所に戻って――。
「お、落ちる!?」
突然のことに対処しきれず背中側から思いっきり甲板に叩きつけられる。HPの残り方から考えると、着地術が無かったら死んでいた。
「伏せて!」
巴の声に従うと頭の上を矢が通り過ぎた。私に攻撃した相手は船の上に居た。つまり、かなり攻め込まれている。味方のNPCはかなり倒されてしまっているようで、包囲されていて、数も不利だった。
「お姉様、お手柄です!」
「呼び名は変えてね? ともかく、赤江隊を私たちの船から追い出そう!」
死角を補い合いつつ、時にはNPCと協力して船の上まで来てしまった敵を倒し続けた。




