16 赤江隊①
「まずは守りを固めて相手が近づいてきたら『一騎討ち』で足止めを! その隙に攻め込みます!」
簡潔に作戦共有がなされる。相手のプレイヤー数は五人だから、その差を活かす算段らしい。
矢から身を守るために武士たちをできる限り船の中に避難させる。全員は無理だから、盾を持っている人はそれで頑張って耐えてもらう。プレイヤーは千里眼を使う和歌子とYura以外は全員外だ。
迫りくる矢を斬り落としながら、私も相手の出方を観察する。敵の小舟はゆっくりこちらに向かってきており、最も大きいプレイヤーが乗っている船は――凄いスピードで向かってきている。
「安心しろ! 正面衝突はしない!」
Yuraが顔を出して叫ぶ。正面衝突したら装甲を強化していようと大ダメージだからだろう。なら、敵の進路はこちらの船を掠るか通り過ぎて後ろを取るかの二択か。
後は一騎討ちで船を動かすプレイヤーを止めることができれば、船が制御を失う――と思ったのだが、速すぎて対象を設定できない。一度しか使えないというプレッシャーもあって、使うのに躊躇してしまった。
強い衝撃で船が大きく揺れる。船を構成していた木片が宙を舞う。かなり強い衝撃だが、これくらいなら問題はない。
「なんとか耐えたな……」
「今のうちに周りの敵を倒してください! 敵はかなり離れました!」
和歌子の指示に従って、小舟にいる敵を倒しているのだが、どうしても敵の様子が気になる。りゅーさんたちがあれだけで終わるとは思えなかったのだ。
「シュウ、敵の船は?」
「あれだ! ……なんであの向きなんだ?」
シュウが指し示す方向を見ると、確かに船はこちらと直交するような向きになっていた。そしてそれは横転したのではなかった。確実に動いて、向きを変えている。
「あれ、方向転換中だよね?」
「俺もそう思う」
船もドリフトみたいな曲がり方ができるんだなあと現実逃避してしまった。
「みんな、戻ってくる!」
「え……? うわ、船がこっちに戻ってくる!?」
「できるわけねえっていい加減にしろ!?」
先ほどより遠い所から敵は向かってくる。だから先ほどより速く質量の塊が私たちの船にぶつかった。
今度は私たちも宙に浮く。船はかなり壊れてしまっていて、船内にいた武士たちも少なくないダメージを受けていることだろう。だが、問題はそこではなく、浮いてしまったことだ。空中は、逃げ場がない。




