15 薙刀使い②
「ヨルがいる時とそうじゃない時で態度が違うと思っていたけどファンだったんだ……。驚いたね、お姉ちゃん?」
「やめて。ゾワッとした」
少し大げさにリアクションするとシュウは泣き真似を始めた。
「泣き真似しても無駄だから」
「ちぇー」
彼はわざとらしく舌を出して残念がった。巴はシュウを睨んでいる。割と根に持つタイプなのかもしれない。
お姉様の衝撃からシュウとの会話に逃げていたが、そう呼んでいたということは巴はあのゲームのプレイヤーで、私がヨルだと知っているいうことだ。
つまり――私がヨルとは違う駄目人間だとバレている……! 脳筋で、ゲームとはいえ薙刀の扱いが雑になってきている私は、彼女のお姉様になり得ない人物だったのではないだろうか。
「巴、ごめんなさい。ヨルのイメージを壊してしまって」
「お姉様、良いんです。確かに脳筋だったのは解釈違いでしたが、これはこれでアリなので」
……これ、お姉様呼びを続けようとしてないか?
「人工知能による人格模写技術は年々上がってはいますけど、完璧じゃないです。キャラを多少なりとも作っていたお姉様だと特に真似がしにくい。だから、むしろそのままだと感じています。始めて会った日なんて感動でほぼ話せなかったんですから?」
気にしていないようなら、私がこれ以上言うこともないか。私だって楽しいゲーム中に他のことを意識したくない。
「他に人がいる時は絶対に『お姉様』って呼ばないで。――言い換えもなし。夜霧って呼んで」
「……はっ、二人きりなら許してくれるんですね、お姉様!」
「今、二人きりじゃないけど……」
少し不思議な縁だったけれど、巴と仲良くなれて良かった。
「お姉様、一つ頼みがあります」
「何?」
「勝負してください、今度は武器を使って」
宿屋で大暴れしていた時に、私を前に喜んでいたのは私と戦いたかったからか。無力化が目的とはいえその相手をするのに武器を使っていなかったのは少し申し訳ないな。
「もちろん、でも――」
このゲームの薙刀使いは少ないから、その使い手と戦えるのは私としても嬉しいところだ。とはいえ、今は時間がないな。時刻を確認すると、赤江隊との模擬戦の開始まで一分を切っていた。
「戦争の後にゆっくりと、ね」
「赤江隊と銀夜隊の模擬戦争を開始いたします」
開始のアナウンスが流れ、私たちは瞬時に移動した。場所は船の上――そう、敵が得意とする海上だった。




