14 薙刀使い①
初心に帰って祖父の教え通りに薙刀を振るう。変な使い方ばかりしていた自覚があるから、基本の動作を忘れないようにこのタイミングで練習しておこう。第三回戦でも本来以外の使い方をするとは思うけれども。
外ではあるけれど、今はイベントで忙しいのか巴以外に見物人はいない。話でもあるのかと思い振り返ると、彼女は隠れてしまうため真意が分からない。
「真面目だね、ヨル?」
巴と不思議な距離感を保ちつつ続けていると
「私はじっとしているのが苦手なだけ。そういうシュウは?」
「薙刀使い同士話でもあるのかと思っていたけど……距離あるのが気になって」
私たちは巴がいる方を見る。彼女は隠れても無駄だと判断したのか壁から顔を出した。
「いつから……?」
「部屋を出た時に、気配を感じて気になっていたかも」
「そう……」
そう言うと、彼女は悔しそうな顔をした。彼女は逃げようとするが、シュウが手招きすると、こちらに向かってきた。
私と巴は向かい合ったはいいものの、黙り込んでいて静かなまま時間だけが過ぎていた。この状況をもどかしく思ったのか、シュウが巴に話すよう促す。
「あ、えっと……」
彼女は困ったような様子で口籠っていたが、やがて決心したような顔で言った。
「お姉様のファンなんです!」
お姉様……?
「優しく教えてくれるところとか、凛として格好良いところとか、大人っぽいけどからかう選択肢を選ぶと照れるところとか、全部、全部好きなんです!」
今までにない早口で、そのお姉様への想いを伝えてくれる巴。物静かな人だと思っていたのに、こんな一面があったとは。
「だから――ここでもお姉様って呼んでも良いですか!?」
そう言われて、一瞬思考が止まる。その後すぐに、道場通の会話イベントを思い出す。
私ことヨルは薙刀編を選んだ時に突き放すような態度を取るが、ゲームを進めていきプレイヤーを認めると少し態度が軟化する。そして「私はあなたの姉弟子だから、お姉ちゃんって呼んでも良いわ……なんてね」という台詞を言う。これは弟子として認めたこと、冗談を言える関係性になったことを表す台詞なのだが、「お姉ちゃん」と呼ばれたら恥ずかしい訳で。彼女が言っていた通り、照れてしまうのだ。
「嫌です」
距離を取ったように感じる返答に彼女は崩れ落ちる。
「な、なし崩し的に許してくれたじゃないですか!」
確かに妹弟子に姉と慕われたら許してしまいそうだなと思いつつも、恥ずかしさが勝ったため、もう一度きっぱりと断った。




