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かまくらいふ!  作者: 岩越透香
夜霧と愉快な仲間たち

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12 白葉隊③

 ひたすら駆け続ける。HPはもう半分以下だ。NPCは大して強くないが、数が多いためどうしても被弾が増えてしまった。


「誘い込まれているな……」

ここまで進んだわりに敵をほとんど倒せていないのが痛い。深追いするなと命令されていたのだろう。


 NPCが減ったと思えば、敵拠点の前に来ていた。二階には指示を出していそうなプレイヤーの姿が見える。そして、拠点の外で私を待ち構えるのは五人。モブ男、モブ子、モブ太、モップ、モブ実。……一人だけ違うのが混じってない?


「ようこそ――」

モブ男が何かを言っているが、五人も相手できないから無視して棒高跳びの要領で跳び越える。拠点二階に直接攻撃できれば良かったけど、無理なものは仕方がない。上空からモブ男の首を狙う。


「あっぶねっ!?」

予測しやすかったこともあって攻撃は避けられてしまう。これで単なる五対一。背後には敵拠点があるし、道具は使えずHPは回復できない。絶対絶命だ。


「時間稼ぎ……か」

相手は幸いにも刀使いしかいないから、距離を取りつつ戦えば少しは稼げるか? ……いや、無理だ。それならやるべきことは――。


「に、逃げたぞ!」

「追え! 男なら追いつける!」

「ふははは。背中を見せたが運の尽きだ!」

足音から二人が追いかけてきているらしい。モブ男とモブ太、弓で狙ってきているのはモップさんかな? 追手と敵拠点を使って射線を切る。完璧には防げないが、動いていることもあってかなり狙いにくいはずだ。


「東!」

和歌子からのコールだ。これからどうするかを決めていなかったから、戦況を見れる彼からの言葉はありがたい。今は西よりに進んでいるから、どこかで方向転換しないと……。


「追いついたッス……!」

「ここ!」

モブ太の攻撃を屈んで避けつつ切り返して東へ向かう。刀がかするくらいなら耐えられるから、モブ男の攻撃は甘んじて受ける。


 少し進めば下り坂になっているようだ。私は数歩進んでわざと転び、受け身を取りながら転がることにした。変なことをしていれば射抜くのは難しいから。


「夜霧!?」

そこにはちょうどつっきーがいて、後ろには五十人ほどのNPCがいる。隠密行動で裏を取ろうとしていた所だったのだろう。


「今、敵に追われてて……」

彼は頷くとNPCたちに指示を出す。


 少し経って、上からモブ男が飛び出してきた。つっきーたちを見て目を見開き、彼は呆気なく射抜かれて倒れた。しかしその直前、投げられた刀は私を道連れにした。

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