11 白葉隊②
「落ち着いて。この数がここにいるならもう一つの拠点は楽に制圧できる」
地形を活かして投石を防ぎつつ不安そうにしている二人に話しかける。
「拠点一つよりプレイヤー三人の撃破で得る勝利点が多いんだから損だぞ!?」
「なら、こっちも倒せば良いんじゃないかな。軍長か副軍長を倒せば収支はプラスだよ」
撃破すると軍長は千、副軍長は八百、その他は五百の勝利点がある。私は和歌子に権限譲渡をしているため、倒しても五百にしかならない。
倒せば良いとは言っても、どうやって攻めに転じよう。投石はタイミングをずらしているから無くなるタイミングはない。NPCが減るまで待っていたら私たちを殺すために近づいてくれるだろうけど、それだとただでさえ大きい人数差が開いてしまう。
そんなことを考えていると、巴は何か思いついたのか質問してきた。
「一人なら向こうまで行ける?」
「行けるよ。行くだけになっちゃうけど」
「それなら、一人で突っ込む夜霧を囮にして投石が止んだ隙に突撃っていうのは?」
彼女はちらりとこちらを見る。この場のリーダーは一応私だからだろう。
「良いと思う。何もしないよりマシだし。ケインはどう?」
「良いぜ。で、俺らは武士たちの突撃の指示出しすりゃ良いのか」
「そう」
「じゃあ夜霧は行けそうなタイミングで行っちゃってくれ」
「分かった!」
言葉と同時に障害物から出る。敵が一斉にこちらを向いた。
投石は大して精度が良くないが、そのせいで予測が難しく、逆に回避難度を上げている。軌道を読むのは無理だと分かったため回避は諦める。代わりに頭上や進行方向などに落ちてくる石を弾く。
「……っぐ!」
腰に直撃した。痛い、けど止まってはいけない。幸いにもこれはゲームであるため痛みはすぐに引いてくれた。そして、近づいたことで、敵は石を投げるのをやめ、刀に持ち替えた。
敵のAIは強化されていないらしく、初撃は見事入り、目の前のNPCは首から血を噴き出して倒れた。
遠距離攻撃は止めさせた。後は後続に任せれば良い。なら、私のやるべきことは――。
「できる限り進んで敵の注意を引きつける!」
一人で進んだら囲まれることなんて承知の上。意識をこちらにも割ければ良いし、プレイヤーまで辿り着ければ万々歳。それに何より進む、それだけなのが良い。
一人突撃するという愚行に狼狽えるNPCたちを横目に、血を浴びながら走り続けた。




