10 白葉隊①
二日目最初の相手は白葉隊。今日はたいさを含めた全員が参加できるから、銀夜隊の実質的な初戦ということになる。
昨日の相手と違い、今回は敵にプレイヤーが多い。そのため、消耗を避けるためにNPCたちを利用するようだ。私たちはイレギュラー対応と敵殲滅後に突撃しやすくするため、より前方の拠点に移動する。
「NPCの厄介さを見せてあげましょう」
彼は扇を開きながらそう宣言した。
「白葉隊と銀夜隊の模擬戦争を開始いたします」
開始のアナウンスが流れる。権限を渡すと彼は外に出て指揮を取る。
同時に、私も目標地点に向かって走り出す。私たちが選んだ丘陵マップでは、拠点は最初にいた場所を含めて三つあり、同じ拠点に向かうのはケインと巴だ。もう一つはシュウとたいさと₣が向かっていて、つっきーは隠密行動を使って別行動をしている。Yuraは和歌子の補佐と護衛をするそうだ。
拠点の二階から戦場の様子を見守る。こちらは武士を基本としつつも騎馬兵、弓兵を取り入れたスタンダードな形だ。対して敵は武士、つまり歩兵のみだ。事前情報通り、NPCの指揮に力入れていないらしい。
弓で射るだけで倒せると思っていると、敵のNPCが唐突に屈んだ。よく見ると、何かを拾ったらしかった。
「石を拾った?」
「これは……特殊戦術?」
特殊戦術とはNPCの行動パターンを増やすものだ。それらしいものは……あった。
「投石。弓よりは射程が短いけど威力は同程度。一部マップで運用できないデメリットはあっても必要ポイントはたった百ポイントだから取ったのかも」
「へー。でも苦し紛れって感じだな」
「……でも、これをわざわざ取るってことは」
敵もNPCを運用するつもりがあるということだ。簡単にはいかなさそうだ。
相手側の人数が少なかったということもあり、最初の戦闘では勝利を収めた。和歌子からのコールによると、敵は守りを固めているらしい。
次は、複数拠点を同時に攻撃することで戦力を分散させて別働隊が軍長を殺すという作戦だ。敵陣地側で戦っていたNPCの半分と合流し、敵拠点を目指す。
私たち側の地形は、丘に遮られて互いに拠点が目視できなくなっている。まずは弓で敵拠点を集中砲火し、敵を消耗させてから突入する作戦だ。
「弓兵、構え――」
「待て!」
Yuraからのコールだ。
「そんなことをしている場合じゃない。――囲まれているぞ」
丘の向こうには敵がずらりと並んでいた。ほとんどがNPCだが、プレイヤーも混ざっている。
「これは……」
ケインが弱気になるのも無理はない。こちらの二倍ほどの敵が向こうにはいるのだから。




