8 作戦会議③
和歌子の接近に気がついたシュウは彼の横腹に蹴りを入れる。受け身を取れず吹き飛ばされた彼がこちらに向かってきたため頭を下げて避ける。
「えっ――!?」
状況を飲み込めないままのYuraを下敷きにして和歌子が着地する。シュウはその様子を見て顔を引きつらせつつ拳を下す。
「Yuraの敵討ちはできなかったけど……大体分かったから良いや。ありがと」
「良くない!」
「えっ、俺のせい?」
和歌子は投げやりなシュウの態度に苛ついたのか、まだ扇を構えて、シュウを睨みつけている。
「そろそろ降りてくれないか?」
和歌子がYuraを踏みしめて攻撃動作を取ると、Yuraは怒ったような困ったような声で言った。
「それぞれ言いたいことはあるんだが……。どうしてこうなった?」
まるで、悪戯をした子供を叱るようにYuraが私たちに聞く。
「シュウが殴りかかったのが始まりじゃないか?」
ケインが告げ口をすると、シュウは首を振って否定する。
「否定はしない……。でも広がったのは巴のせいだから」
彼は申し訳なさそうに言っているが、責任転嫁する辺り、反省の色は薄い。
「……止められなければ、私がシュウを殺して平和的解決だった」
彼女は私の方を見ながらそう言った。ここで私に順番が来るか。まあ、彼女を捕まえているからその恨みもあるのかもしれない。
「止めなければ死者が増えてたし……。元凶を探すなら、最初にYuraを殺した和歌子じゃない?」
和歌子にパスを渡すと鼻で笑われた。
「傍観者も悪いと言って巻き込みたい所ではありますが、やはり油断して死んだYuraのせいでしょう」
「んな訳ねえだろ! 手を出した奴らが全員悪いってことでこの話は終わり!」
彼はそう話を締めくくって、元の話題に戻す。
「隠密行動、権限譲渡、千里眼、一騎討ちを取ったら残り千二百だが……」
「一騎討ちもスキルだったんだ……」
「ああ、選んだ対象ごと別マップに隔離されてどちらかが死ぬまで解放されないスキルだ。ちなみに十分以上いると引き分けと判断されて両方死ぬ」
本来勝てない相手でも十分逃げれば相打ちができるし、ある程度離れていても使えるそうだから撤退させないためにも使えそうだ。別マップに行くこと自体も面白そう。
「希望がなければ無難にNPC強化系で良いと思いますが」
「えーやだ。つまんない。派手なスキル取ろうぜ?」
「……」
和歌子は振り上げかけた腕を静かに下した。二回目の乱闘を起こさないように自重したらしい。




