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かまくらいふ!  作者: 岩越透香
そうだ、京都へ行こう

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幕間 紫戦争③

「どうして……」

蒼チームの本陣ではSuabruとるるが刀を構え、向かい合っていた。困惑しているSuabruと冷静なるるは対照的だった。


「目の前には護衛もない大将――狙うしかない」

「そういう意味じゃないって」

「ニチームでだめなら三つ巴。解決策」

「ああ、もう!」

Suabruはるるの攻撃を必死に躱すが、攻撃に転じることができない。攻撃しないと分かったるるはスキルの重ねがけで強引な突破を図る。


 一撃限りの威力四倍。それを食らったSuabruは急所を外していたためかろうじて生きていたが、どんな一撃でも死んでしまうような残り体力だった。


 大将へのとどめの前にMonaが駆けつける。彼女はるるよりも早く攻撃を繰り出し、スキルの効果で防御が下がっているるるを殺す。


「大丈夫!?」

「うん、ありがとう……」

彼は座って休みながら作戦を考える。


「砦防衛は一人しかいないから精鋭を取り返しに行くのも良いんじゃない?」

「それもありだ。でも、紫陽隊は敵から見ても敵なんだ。潰し合いを期待しても良いかもしれない」

作戦が纏まらずにいると本陣の建物が勢いよく壊れる音がした。


「敵襲!?」

「そうだ!」

それに答えたのはランランルー。彼はにやりと笑って言った。


「さっさと勝負を決めに来たぜ」

「……の前に隣の女性は誰よ」

「ああ、僕? 僕は紫陽隊の副大将だよ。三陣営の副大将同士で戦おうと思ってね。紅の副大将は僕が既に殺っちゃったけど」

その言葉を聞いて蒼チーム二人の目の色が変わる。どうにかしてランランルーを殺せば、蒼チームの勝ちになると知ったからだ。彼らの不安要素は実力不足と紫陽隊の女性の存在だったが、Suabruは顔を青くしつつ、右手で左手の袖を強めに握った。


「お願い、Mona……」

「ええ。……それに乗ってあげるわ」

「戦うってよ、Asahi。良かったな」

「うん、二人で蒼チームを潰すことにならなくて良かった。やっぱり、倒すならある程度戦いがいがないとね」

蒼チームの大将を蚊帳の外に、三人の戦いが始まった。


「Asahiさん、女性二人で男性を狙わない?」

三人が睨み合い、隙を伺う最中Monaは雑談のように切り出す。


「ふふふ。異性狙っちゃう?」

「ちなみに、これの中身男だ」

「……野太い女の子に慣れすぎたのかしら。悪い傾向ね」

冗談は終わりだと言わんばかりに三人は同時に動き出す。一番早かったのはMonaを狙ったAsahiだが、攻撃を当てずにすぐ振り返りランランルーの攻撃を弾き、そのまま離脱しMonaの攻撃を避ける。


 二人に狙われ防戦一方のAsahiは建物を壊しながら攻撃を避けていく。狭い空間であれば捕捉しやすいが広いとそれは難しい。


「こっちを狙うなら考えがあるよ」

別の建物の屋根の上に移動していた彼は弓に持ち替え三本同時に二度放つ。普通なら一本すら真っ直ぐに飛ばないが、矢は二人を追いかけるように飛ぶ。


 彼は弓を持ち替え、近づく隙を与えない速度で矢を飛ばす。


「その程度じゃいつまで経っても当たらないわ!」

Monaが先ほどと同じように矢を落とそうと刀を振るうと、矢は直前で刀を避けるように急落下した。 そのまま矢は足を貫き彼女から機動力と踏ん張りを奪う。ランランルーは彼女が足を射られたと気が付き、すぐに攻撃に向かう。射線はMonaでカットし、一対一になれば彼が負けることはない。


「来るよな、お前は!」

彼はAsahiの攻撃を避け、顔に蹴りを食らわせる。Asahiは受け身を取ってすぐに起き上がるが既に足を回復させていたMonaによって致命傷を負う。


(誰か)を嵌めるために協力できるなら……もう、こちらの世界に染まってるよ」

彼はふっと笑うと刀を自らの首にかける。


「じゃあ決着のノイズは消えておくよ」

彼は迷いなく首を斬り落とす。二人は体が崩れ去るのを確認すると、刀を構えた。



 決着はひどく呆気なかった。


「えーただいま決着がつきました。副大将及び大将の死亡により――勝者は蒼刃隊!」

蒼刃隊は喜びを分かち合うために、紅連隊は殺された二人をボコボコにするために本陣に戻る。


「これで良かったのかな……」

蒼刃隊本陣において、唯一浮かない顔をしていたのは大将のSuabruだ。Monaがランランルーを抑えているうちに、彼は左腕に隠し持っていたクロスボウで殺したのだった。クロスボウはこの戦いのために作っていて、矢には即死にはならないものの毒が塗られていた。矢が当たった後はひたすら逃げ回り、撤退を防ぎ、彼らは勝利を得た。


「遊びとはいえ戦争よ。なら勝てば官軍だわ」

「やらなきゃ負けていたとはいえ、二人の戦いに第三者が横やりを入れたのは良くないような気がして」

「良いじゃない。横やりなら最初から居たんだし」

Monaは励ましたいのか正当化したいのか、それとも本心なのかそう口にする。


「とりあえず今は勝利を喜んでおきましょう!」

「……うん、そうだね! 久しぶりにすっきりFSができそう!」

彼は祝いだ、と口に出そうとして止める。辺りを見渡してみて、無残な本陣を認識してしまったのだ。


「……負けたみたいな酷い本陣だ。まずは修復しないと。嫌だなあ」

彼は口ではそう言いながらも笑っていた。



 紫戦争の後、今までのような小競り合いが無くなり、鎌倉の地に小さな平穏が訪れた。それは誰彼構わず戦いをふっかけ、殺し合うという物騒で平等な世だ。


 元紅連隊のプレイヤーの多くは別ゲーに移ったが、一ヶ月後のアップデートで戻ってくることになる。


 軍システムの追加と戦争イベントの開催。3カ月に一度開催されるようになったそのイベントは演習イベント。軍に分かれて模擬戦をするといった内容だ。ある者は雪辱を果たすために、ある者は楽しむために軍を結成するのだった。

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