23 船旅③
すれすれで障害物を避け、海賊船を寄せ付けない速さで進むこと十分ほど。ついに船が減速し始めた。始めは高速で動く船に楽しそうにしていたシュウとYuraも、今はぐったりして気分が悪そうだから終わってくれて良かった。
「もっと航路が長ければなあ……」
「りゅー、これ以上速度増やせない?」
これ以上を追求しようとするトリットさんとシマネさんを見て、私は少し怖くなった。
「見えたぞ、目的地が! 総員、上陸用意!」
シマネさんのロールプレイを眺めていたら、りゅーさんに肩を叩かれ、弓を持つように言われた。どうやら、着くまでが船旅らしい。
近すぎ、遠すぎ、ぴったりの距離だけど当たらず、今度は遠すぎる。動く船の上で敵を狙い撃ちするのはかなり難しい。船旅は毎回この戦闘があるのか、慣れている三人は難なく当てる。りゅーさんなんて難なく当てるどころか一度に複数人に攻撃している。
シュウはイメージ通り、私と同じで弓が苦手そうだ。Yuraは三人ほどじゃないが普通に命中している。
ある程度陸に近づいたところで射ることをやめ、薙刀を手元に出す。
「りゅーさん、あいつらを倒せば良いんですね?」
了承を得てから走り出す。助走をつけ、手すりで踏み込み陸に向かって跳ぶ。薙刀を伸ばして敵を上から串刺しにし、縮めながら着地し、薙刀振って刺さった敵を抜く。元寇イベントの敵の気持ちになりながら後に続いて降りてきたシュウと共に敵を倒していく。船から四人が降りる頃には敵は居なくなっていた。
「お疲れ様でした。これから先はもうほとんど敵はいません。とりあえず皆さんがワープできるようにしましょうか。案内します」
三人から五人程度の敵と遭遇しつつもプレイヤー用の拠点、つまりワープ地点に辿り着いた。そこは小さな町のようになっていて、店を出すNPCまでいた。プレイヤーは不便だからか、元に大して用事がないからか居なかった。
解散の雰囲気になったとき、りゅーさんが口を開いた。
「次はもう少し速度を上げる調整をするので、よろしければ是非」
彼の誘いに私たち三人は全く同じ言葉を返した。
「「「嫌です!」」」
その後は元に用事がなかったため、逃げるように鎌倉へとワープして帰った。
2章完。3章は少し間が空いて1ヶ月後を予定しています。




