21 船旅①
「朝鮮に行きたい方募集してます!」
スキルを覚えた後、京都を歩いていると大通りで二人組が何やら呼びかけていた。
「朝鮮ですか?」
「おや、興味が?」
「はい。海外もこのゲームにはあるんだなと思いまして」
話しかけると、彼らは私に朝鮮について説明してくれた。朝鮮は元に行くために中継地にできる場所らしく、船旅は過酷なため共に行くメンバーを募集しているらしい。
「俺は半年ぐらい前に始めて、一度くらいは行きたいなと思って」
「私は船旅が好きなもので。初心者への協力も兼ねて参加しているんです」
船旅好きだと言うりゅーさんは私に船の魅力を熱く語ってくれた。私がその熱意に負けて頷くと、彼は満面の笑みを浮かべた。
「ありがとうございます!」
「りゅーさん……強制するのは……」
「大丈夫です、Yuraさん。元々新しいマップには興味があります」
「なら良かった。夜霧って呼んで良いか? 俺も呼び捨てにしてくれ」
「三人いれば行けると思います。夜霧さん、呼びたいフレンドがいれば呼んでください」
今ログインしているフレンドはシュウだけだったため彼にフレンドコールをしてみる。
「行く! 楽しそうなことしてるね!」
その通話の数秒後、私は肩を叩かれる。振り向くとシュウがいた。
「早くない?」
「うん、すっごく急いだ。あ、シュウです。よろしくお願いします」
こうして、私たちは四人で朝鮮へ向かうことになった。船はりゅーさんが個人で持っているものを使うらしい。
「じゃあまずは福岡ーー元寇イベントの場所に行きましょう」
「あー。せんせー!」
りゅーさんはまっすぐ手を挙げるシュウを指差し「何でしょう、シュウくん」と先生のように言った。
「元寇の場所に行ったことありません!」
「……なるほど?」
その宣言を聞いた彼は何故か嬉しそうにしながらフレンドコールを始めた。
「今から海渡るんですけど、あーそうそう。呼んでくれる? 了解、ありがとうございます。……すみません、急にフレンドコールしてしまって。では北へ向かいましょう」
「北?」
「はい。海を渡る二つ目のルートに向かいます。難しくなりますので同志を呼びました」
船旅に慣れたプレイヤーが嬉しそうにしているのを見て、私はとても不安になった。




