18 観光②
シュウがいきなり丘から飛び降りて驚いたが、ダメージを受けていなさそうなところを見ると問題なさそうだ。彼は私に手を振るとどこかへ走って行ってしまった。着いてきてということなんだろうけど、その通りにする必要もない。
ワープで六波羅探題に向かい、退職手続きを行った後、先回りする。馬を借りて行くのだろうと思い待っていると彼が走ってきた。
「移動スキルも使ってたのに……!」
「近くまでワープできるから」
悔しがる彼を横目に馬を眺める。私の所持金だけでも二頭借りられるけれど、どの子にしようかな。悩んでいると、シュウはドヤ顔で立っていた。
「……どうしたの?」
「俺の馬を見ろ!」
彼の隣にはとても大きな馬がいた。
「二人乗りしても速度減衰がなく、体力も普通の馬よりあるよ。その代わり、少し最高速度は遅いけど」
アーサーと名付けられたこの馬は特殊な馬だそうだ。巨大馬の噂を聞いた後に草原へ行くとたまに見つけることができるらしい。
「なんでアーサーなの?」
「アーサーより俺が上だってこと!」
ここで言うアーサーは多分道場通で西洋剣術のNPC及びその中の人のことだと思う。彼ら二人はよく競い合っていたっけ。
「まずは一人の方が楽しめると思うよ。……将軍がいるところで待っているから」
鎌倉の町が見えてきたところで馬から降り、シュウを見送る。一人と言ったのは鎌倉に顔見知りが多い私と一緒では襲われなさそうだから。待ち合わせ場所を指定したのは道を探して不安そうにしている方が初心者らしく、狙われやすい。
「頑張って、シュウ」
「が、頑張るね……?」
シュウは馬をゆっくり走らせて鎌倉へと向かう。私はというと急いで鎌倉に向かい、弓使いを片っ端から戦闘不能にしていく。弓まで加わってしまったら鎌倉初心者には難しくなってしまうかもしれない。
「す、凄いねヨル! 京都とは大違いだ! ってあれ、疲れてる?」
「私も戦っていたから。シュウもお疲れ様。ワープポイントはここと鎌倉の入り口があるからね」
集合前に返り討ちにあって、ここでリスポーンしたとは言えなかった。
「時間は大丈夫?」
彼が頷いたのを確認して、町を案内し始めた。




