17 観光①
「ここが伏見稲荷神社。特定の順番でくぐると特殊な場所に行けるらしいよ」
「特殊な場所?」
「妖術が使えるようになるらしい」
このゲームは武士のゲームなのに妖術があるの??
「ここが清水寺。飛び降りて生還したらスキルが貰えるよ」
「スキル……?」
「あれ、知らない? 三つまでセット出来るんだけど」
知らない要素が出てきたんだけど!? スキルって京都限定の要素なの……? さっきの妖術もスキルの一つ……?
困惑している私がスキルが手に入ることを疑っているように見えたのか、彼は説明してくれた。
「スキル名は『清水の舞台から飛び降りる』で、攻撃力が一度だけ倍になる代わりに十秒間防御力が半減するバフスキルだよ」
ベストオブヨシツネで活躍しそうなスキルだ。高いダメージの人はこのようなスキル持ちなのかもしれない。
「今飛び込む?」
「待たせるのも悪いから今はいいや……」
「そう。じゃあ次行こうか」
今度はどんなものが来るのだろうかと待ち構えていたら、連れてこられたのは京都の町を一望できる場所だった。
「ここ、良い眺めでしょ? 京都の町がよく見える」
「うん」
「だから、さっきの情報もここで見て知ったんだ。とっておきの場所」
先程と比べると随分普通の観光地のように思える。なんとなく安心していると、最後に爆弾が落とされた。
「あと、たまにニンジャが来る」
「は?」
……忍者って鎌倉時代にいたのか? もしかして京都って初心者用の町という皮を被った魔窟なのか……?
「みぞれ煮――プレイヤーなんだけど、情報割らないから何度も倒して、六波羅探題にも連行してみたんだ。でもニンジャについてはニンジャがいるということしか分かんなくて……」
「その人は見たことあるよ。目の前から急に消えたのは忍術だったのかな?」
「へ〜! どこで見たの?」
「ち、地下牢で……」
会った時の話をすると、その前後も含めて根掘り葉掘り聞かれてしまった。上司をぶん殴ったプレイヤーがいると話したところで、彼は思い出したかのように「今日は予定あるんだった!」と言った。
「その話はまた今度聞かせてほしい! 早く鎌倉に行こう!」
彼はそう言うと丘から飛び降りた。




